けっこう笑えるイギリス人/講談社

¥1,575
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amazonでレビューした。

下記のとおり
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他の方の辛口レビューを見た後に、それでも購入しました。

レビューであったように、前半は確かに現地へ赴けばきっと見られる光景が描かれており「わぉ!」と思いますが、実際後半は少し疑問符が取り除けないものでした。

著者の出身地は存じ上げませんが、日本でも「お国」が違えば、その人が組み立てる「日本像」は大なり小なり変わってきます。
だから著者が英国ミドルクラスに属し、そこで普段の生活(普通に電車とかにも乗り)をしつつ、一方で「貴族の集まり」(一般人では無理な世界)に足を踏み入れ、そこで日本を引き合いに出すと無理が生じると思います(特に、著者が片田舎経験者でなく、ある程度都会であればあるほど、乖離があります)。

だからこのレビュータイトルは「エッセイは難しい」と思うなのです。

30年の海外生活経験は誰でも経験できるものではないので、「これはこれ」として読めば十分にエッセイとしては楽しいと思います。
(それでも、日本女性や男性に喝を入れるのはどうかと思いますが、故郷を離れると余計に愛着も出てくるので、一種の歯がゆさもでるのでは…)


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実は少しオブラートに包んだレビューにしたのですが、他の方のレビューにうなずけることしかり…。
海外エッセイの落とし穴は「文化比較論」になることだと思う。とりわけそのリスクはやはり「暮らす人」ほど高くなる。住んでいるところへの「愛着」が沸く。離れた故郷にたまに帰ると、自分が育った「昔の祖国」はなく、孤独になり、それが「かわいさ余って憎さ(批評)…」として表現されるのかもしれない。

こちらの著者がどう言う気持ちで書いたのかはわからないが、海外で暮らす者の1人としては、住んでいる場所のいいところが見つけられないと、海外生活は苦しいと思う。今住んでいる場所を肯定することは、生きぬくためには必要。特に自分に子供ができた場合などは、その子供のためにでもやはり日本人として海外の住んでいる場所に溶け込み、いいところと言う前提で育てあげなければと言う、親心が出てくると思う。それに海外生活で日本のやり方を全面に押して生活することは不可能だ。譲っていい性質、譲れない性質、変えなければいけない性質…暮らしの中でそれを確認しながら、『和洋折衷』で暮らしていくことが理想だろう。


さて前に国際結婚して、イギリスで子供を産み、スイスで育てている平川さんの『春香だより』をレビューしたが、彼女の作品はまさに「比較論」になっていないところ。
ただ、残念なのは、平川さんがまだ自費出版のステージで、片や過去には記者である方と言う(こともあるのか?「元記者」を謳うところを見ればそれもマーケティングのひとつ?)ことで、“目に触れる”本になっているこちらの作品が一般に売れると言う今の状況だ。表紙もかわいくて、薄さも手に取るに重たくない。『けっこう笑える…』は読みやすい分量にしたから「言葉足らず」になっているのかもしれないが、イギリスを「民主主義」と言ってしまうのは、少し「?」。例えばBBCだって、国営放送。国の放送なんてものはやはり(もちろん日本を含めて)信用できない。観るけれど、日本でされない放送をBBCがやって「これぞ民主主義」と思うほど、私はガードを下すことはできない。
英国にも、日本にも、きっとどこの国にもいいところと悪いところはある。だからこそ、比較論はアカデミックな人に任せて、距離を置くのがいいと思う。

「子育て」に関してあまり触れてない本だが、きっとこちらの著者が「子育て」を書けば、きっとこの本とは全く違う作風になるかとも思う(期待したい)。

話がそれるが、エッセイで印象に残っているのは村上春樹氏。比較論の匂いがそこここにするのに、読後はちょうどよい「残り香」があるだけで、実際それが「比較」であったのかもわからない。笑ってしまったのが、『やがて哀しき外国語』の中で個人的な視点をちょっと述べると、必ずカタカナで「ドント・テイク・イット・パーソナル」(だったかな?)と書いてある。
それで読者はうっかり笑って帳消しにできしまうほどの「比較」にならない「比較」が見える。
ただその“明記しない比較”ほど読者に考えさせるものはない。

国際結婚や海外の話に興味がある人に伝えたい。
本は「厚さ」ではない「表紙」じゃない、「有名かどうか」じゃない。
目次を読んだり、できれば少し立ち読みして「鼻をきかせて」選んでほしい。

*上記は11月某日に再度書き直しました。