
イギリスのテレビ番組はドキュメンタリーが非常に話題性があるものが多い。
以前はBBCの歴史もののドキュメンタリを見ていたこともあったが、最近はChannel4(名の通り、4チャンネルである)ばかりを見ている。
この秋から始まっていたシリーズ『Educating Yorkshire』(直訳:“ヨークシャーを教育する”)は気になっていたもののひとつ。というのも、イングランドでも北に暮らしたことがある人はわかるだろうが、サッチャー政権で大きく変化した炭鉱産業や、工業の斜陽化で、南イングランドと比べると、どうしても荒んだエリアの規模が違うと思う。
だからこそ…そのエリアに集まる子供たちは、家の苦労や環境に対する悲観またはあきらめが見てとれる雰囲気があるのだが、〝Thornhill Community Academy″(西ヨークシャー)のジョニー・ミッチェル校長と、彼の率いる教師たちは、生徒の将来のために日々奮闘するのである。
しかし、奮闘と言っても、やはりイギリスだからか、金八先生とアプローチが若干違う。この学校はSecondary school(日本だと中学生くらい。11歳から16歳までが所属)。難しい年齢の子供たちだが、16歳で卒業を迎える前に「大人」として、卒業させるべく、勉学だけでなく、振る舞い、生き方も伝えていく。
このミッチェル校長のすばらしいところは「この学校に来たからこそ、卒業までには胸を張って社会に出て欲しい。それができないのであれば、我々の責任だ」と言い切ってしまうところだ。イギリスでは(特に貧困のある地域か?)やはり階級社会の名残は否めず、生まれた環境がものを言うことが多い。しかしミッチェル校長はそれを理解した上で、生徒一人ひとりに「変わる」チャンスがあることを伝えることから始める。始めはあきらめていた子供たちが、たかが『GCSE』(カレッジなどに行くときに求められたり、求職しても聞かれることもあったりする「共通試験」)ではなく、それらの結果を真摯に受け止めるべく、努力をし、変わっていく様子がすばらしい。
イギリスの教育制度は複雑だ。地方当局(Local Authority)から維持費をもらっているmaintained school(いわゆる公立)があれば、左記と違い学習指導要領には準拠しなくてもよいが、政府(教育省、つまり公的資金)で成り立つAcademyがその数を増やしている。他にも、free schoolやらindependent schoolやら…とにかく詳細があいまいなほど、その種類は多岐にわかれており、特にお金の出所が違うため、学校によっては「超スペシャリスト」をお金を出せば雇えたり、好きな科目(例えばITでも一流のプログラムまで)を設定できるところが出てくるため「貧困層と富裕層の教育の差を増幅させているだけ」と言われ、かなり議論になっている。
もちろん…校長になりたい人が常に「大志」や「使命感」を抱いているわけではないようで、どこかの新聞では『お金持ちエリアの校長にでもなって、楽したい』と言う人もいると読んだ。
しかし、このミッチェル校長は違う!「使命感」と「大志」からでしか成り立っていないような、そんな人で、さらに常駐の教師陣たちもすばらしい!
もちろん、映っていないところでは色々なことがあるに違いないが、生徒を一人の人間として、真摯に向き合っていくその姿勢には感動し、ついつい泣いてしまうほど。
最終回は「吃音」のある生徒、ミシュラフ君の英語(話す)試験のために尽力する英語教師バートン先生の回だったのだが、吃音のせいでひどいことを言われていた彼が卒業スピーチの場を与えられる。子供一人の人生は、教師でこうも変わってしまうのだと思うと、やはり親としては、少しでも子供にとってよい学校を…と思ってしまうのも無理ない(が、果たしてよい学校というのが、勉学の面だけでよいかは別である。ただ、イギリスだと上流が集まる学校は、基本的に振る舞いも〝エリート"である可能性は限りなく高いが…)
日本では教師は仕事の多さや責任のため「ストレス」を抱え、燃え尽きてしまう人も多々いると聞くが、イギリスでも最近は似たような話を聞く。数学教師の先生の回だったが、朝ひとり、デスクでうつむいて泣いているシーンが出たときは、思わずもらい涙だ。
残念なことに日本語ではなく英語(それにヨークシャー地方の言葉は非常に聞き取り難)。
でも、イギリスの学校教育に興味のある人、日本で教師を務めている人、子供が多感な時期のご両親、そして10代の学生さんたち皆に見てもらいたい作品である。