春香だより ――父イタリア人、母日本人、イギリスで生まれ、スイスに育つ娘との[親バカ]育児記録/文芸社

¥840
Amazon.co.jp

amazonでもレビューに書いた。

下記のとおり
―――
帯に『育児書と思って読まないでください!』と書いてある。さらに続けて『サバの味噌煮を口に入れた時は“Che buono!”ではなく、心のそこからあふれてくる“ああ、おいしい!”でなければならないのだ』とある。

タイトルは少し曖昧だと思ったが、最近のマーケティング重視で題名だけよいエッセイとは一線を画す作品だ。

国際結婚が多い昨今で正直飽きるほどの「国際結婚・育児ドタバタ」のエッセイが巷にあふれている。どれも何かいまいち…だと思ったのが今までの感想だ(最近レビューしたイギリスについてのエッセイも同じ)。と言うのも、結局「海外。エッヘン!」と感じるような、海外プラスの事柄が多く書かれ、結局日本への愛着が「こう日本もなればいいのに!」のような比較論になり、結果「かわいさ余って憎さ百倍」で描かれているからだ。

手にしたとき、正直その分厚さに「どのくらいで読めるだろうか」と心配になった。
しかしページをめくり始めて3時間で読んでしまった!内容が軽いなどとは言わない。どこまでこの著者は「バカ正直」に自分の娘に“日本語”を刷りこもう(言葉が悪いだろうか)としているのかを書くのだろうと笑ってしまうのだ。
当人にすれば、3か国語(ご主人のイタリア語、自身の日本語、スイス在住なのでドイツ語)での育児は当然深刻だろうが、外から読む私は「あぁ…日本語を話してほしい」だとか、義理の両親との関係だとか、色々、もろもろ考えて「本当に、大変ねぇ」と他人事に思って、その試行錯誤の著者の毎日を笑ってしまう。
笑ってしまうと言うか、そのような、素晴らしい著者の「言葉」がある。卑屈になりそうな内容が、軽快に言葉を選んで書かれていて笑えるのだ!
海外生活の酸いも甘いも書かれている作品は少ない。特に「母親」としての葛藤をここまで正直には書けないのではないか。
「国際」と言うベースにありながら、その枠にとらわれてなくて、日本にいる新ママさんにも共感してもらえるような内容だと思う。

自費出版と言うこちらの作品。よほどコミックのように絵をちりばめた「軽い」エッセイより何倍もすばらしい。続編が出たらきっと読みたい。

――

エッセイには好きなタイプと読みつけない…と言うタイプに分かれる気がする。
何度読んでも読める人と、つい手を置きたくなる人と…。

やはりこちらの作品は日を置いても「また時間のあるとき手にしてみよう」と思えるものだ。
かつて私はエッセイなんてのは「一度読めばいいや」と思っていたことがあったのだけど、藤原教授や村上氏の作品を通して、その楽しみを知った。
確かに沢木耕太郎の『深夜特急』や『天涯』(写真が主かな)や星野道夫の『ノーザンライツ』は高校生のときに尊敬する指圧師(?)さんに勧められて読みふけった。
高校生が終わって、大学を卒業するころにはこれらの本が私には永遠に返ってくることのない「青春」のようで、手に久しくしてない(書いていてるとまた読みたくなるなぁ)。
あれから年月を経た今の私には平川さんの書く「国際結婚」や「育児」のような、そのような舞台がまだ未知であり、すぐそこにあるかのようで、やはり楽しめるエッセイなのだと思う。

何より、文章が強い!グイグイと引き込まれて一緒にため息をついて「そうなのよね。やっぱり旦那を差し置いて、ひとまず日本語に親しんでほしいわよね」などと思ってしまう(子供もいないのに!)。
強い文章であるのに、アクが強くなくて、その押しすぎないところがいい。

国際結婚をしている人は増えているのだろう。でも国際結婚と言う枠にとらわれない「どう子供と向き合うか」「何が子供にとって一番か」を試行錯誤している母親が見える本は貴重だ。
習い事をさせて「これでいいのか」と自問している人、「旦那よりもやっぱり私を!」と思ってしまい、かつ罪悪感のようなものを感じてしまう人…みなそれぞれ愛情のかけ方は違うが、愛の溢れる母親には違いない!女性には手にしてほしい1冊。
AD