ライター海江田の 『 シラフでは書けません。 』 -5ページ目

ザ・雑談

昨日のランドは、リポーターの高木聖佳女史と、エルゴラッソの担当記者、石原遼一さんがいて、わりかし賑やかだった。
3人くらいいると、監督の囲みもいろんな角度から話が聞けて助かる。

高木女史は特別なシーズンを過ごしている。
今季途中、夫の西ヶ谷隆之さんが水戸ホーリーホックの監督に就任。
長く担当する東京ヴェルディや川崎フロンターレに加え、気持ちをのっけるチームがひとつ増えた。
特にヴェルディと水戸は同じディビジョンだからね。
こちらは昇格戦線の生き残りを懸け、あちらは残留に必死だ。

仕事上のデリケートな問題も出てくる。
だが、そのへん高木女史はぬかりなく一線を引いている。
以前、西ヶ谷さんがコーチだった頃、家庭内でヴェルディの話題になり、軽く探りを入れられて(そのつもりはなかったかもしれないけど)、すっとぼけた話を聞いて笑ったよ。
そんなふうに神経を使うのは大変だよね。

僕みたいな外野は気楽なもんだが、サッカー界のサークルに片足でも入るってのは苦労も多いんだろうなあ。
うそでしょ、そんなやり方がまかり通っていいの? って理不尽な話がいくらでもある。
サッカーをはじめ、スポーツの爽快感って、人間が知力体力を尽くし、定められたルールに則って白黒はっきりするところにもあるのだが、内実はそうではない。
ぐじゅぐじゅしたまま、どうにかこうにかやり過ごしていく。

てなことを思ったのは、こないだ前田司郎の初監督作品『ジ、エクストリーム、スキヤキ』を観たばかりからだ。
伏線を回収していくことなく、とっ散らかったまま流れていくのが面白かった。
ああ、僕らの生活ってこうだよなあ。
大小さまざまな問題、人間関係、いずれも決着を見ることなく、ただ流れていく。
現実はそう簡単にはすっきりしないんだよ。
20代の頃だったら、たぶん受け入れられなかった作品だ。
市川実日子の困った顔がかわいかった。

今年の芥川賞を受賞した羽田圭介の『スクラップ・アンド・ビルド』もそういう味わいのある小説。
ついでに同時受賞で話題の又吉直樹の『火花』。とても面白く読めた。

話を聞きたい選手を待っている間、3人で他愛もない話をしていた。
ひょんなことから学生時代の話になったのかな。
「聖佳さんは1軍の女子だったでしょ。学内ヒエラルキーの。そんとき会ってもおれは仲よくなってないし、たぶん口もきいてない」と僕が言ったんですよ。

びっくりしたね。おほほと笑ってるだけで否定しねえんだ。
さらに高木女史がテニス部だったと聞いた石原、「1軍だ。間違いないっすよ」。
おい石原、なに調子乗せてんだよ。
テニス部はピンキリの両極端が定説だろうが。ひでえのもいたぞ。
いいからマスク取れや。
ちなみに石原はラグビー野郎である。

で、捕らぬ狸のなんとやらとわかりつつ、プレーオフ進出に思いを馳せた。
「決勝、どこでやるんだろう」
「えっ、味スタじゃないの?」
「違うんだって」
「あら、てっきり去年と一緒かと。勘違いしてた」
「関東では開催しないという噂がにわかに」
「となれば関西が有力か」
「どこでもいいよ。みんなで行こうよ」





食らいついていきましょう

アビスパ福岡戦は、近所のスポーツ居酒屋「KITEN!」で観戦した。
当然のごとく、超アウェーである。

「金森、ナイス。そこぐいっと行かんね」とアビスパのサポーターが言えば、「三竿、潰してんやい。よかよか」と僕。
言葉は同じだが、応援するチームは違うという複雑な状況だ。

冨樫監督は、前線にアラン・ピニェイロ、ブルーノ・コウチーニョを配した。
前々日の練習でやっていた形であり、相手の特長を分析した結果のチョイスだろう。
この起用は、当たりではなかったが、可能性を感じさせるプレーはあり、取捨が悩ましい。

前節、大宮アルディージャ戦の開始10分を見て、あらためていいチームだなあと僕は思った。
ビンビンに張り詰めたものがあり、それがチームの機能性を高めている。
ブラジル人選手は、このテンションの高さについていけないのではないか。
そんな考えを冨樫監督に話したところ、「シーズン序盤は選手間が互いに理解を深めていなかった。いまは違うものを見せられると思いますよ」と期待を懸けていた。

判断がむつかしいところだと思う。
辛抱して使い続けられる状況ならともかく、残り試合がひと桁に入っているからね。
見切ってしまえばそれまでだが、ここできっかけを得られれば、勝負どころで貴重な攻撃のオプションになるかもしれない。
ギリギリのシチュエーションだよ。
ユニットとしては魅力だけど、僕はちょっと間に合わない気がするなあ。
さて、どうするだろうか。

あと前線でカギを握りそうなのは、別メニュー調整中の平本一樹だね。
「復帰のメドは立ってますよ。札幌戦のメンバーに入れれば」と語り、コンディションを急ピッチで上げている。

福岡戦、佐藤優也はいい仕事をしました。さすがです。
連敗を止め、アウェーで勝ち点1の結果は悪くない。
気になったのは、澤井直人のプレーだ。
後半、左サイドからドリブルでボールを運び、ゴールに迫りながらチャンスを逸した。
あのとき、右から南秀仁がフリーで走っていたんだよ。
相手を限界まで引きつけて外を使おうとしたのか、それともゴールに直結するコースが見えたのか。
彼の能力なら南の姿が見えていなかったはずがない。
あの形が生まれるのは予測もしていただろうし。
枠にいったミドルシュートは惜しかったですね。


●掲載情報
『サッカーダイジェスト』(日本スポーツ企画出版社)9月24日発売号
昇格戦線の特集で、東京ヴェルディを2P。
南秀仁の人物モノと、コーチングスタッフの三角関係について書いています。
当初の予定では、人物モノは井林章でいこうとしたんですよ。
編集者に企画出しをするとき、「井林か南のどっちか。井林はすごく活躍しているのに全然書けていないから優先したい」という感じで。
で結局、ザスパクサツ群馬戦の試合途中に編集者に電話して変更したよ。
あの試合の南はインパクトがありすぎた。
後ろの選手は貢献度の高さのわりに、露出させる機会がどうしても少なくなりがちだ。
ほかにも安在和樹や杉本竜士など、ほんとはスルーしちゃいけない選手はいくらでもいる。
どうにかしたいね、これ。





頼むよ、アラン

9月13日、夕刻。立川から鈍行を乗り継ぎ、前橋駅に到着。
J2第31節、ザスパクサツ群馬 vs 東京ヴェルディのキックオフは40分後に迫っていた。

改札を出たところで、ヴェルディサポを発見。
9番、アラン・ピニェイロのシャツを着ている。
よしよし、この人についていけば大丈夫だろう。
駅から
シャトルバスが出ることは知っていた。
乗り場や発着時刻など、細かいことは現地でどうにかなる作戦である。

ところが、だ。
アラン、いったん北口に出たと思ったら、首をかしげながら南口へ。
おおいにまごついている。
アラン、しっかりしろよ。調べが甘いぞ。
人任せのくせに僕は
心のなかで叱咤する。

アラン、バスの掲示板を見たりしながら、かなり焦っているようだ。
本家も意欲はあるが、やや空回り気味なところがある。
そんなところまで真似なくていいんじゃないかな。

キックオフまであと35分。
正田醤油スタジアム群馬は、駅からわりかし距離があり、バスで約20分かかる。
業を煮やした僕はセカンドプランの実行を企てた。
タクシーの同乗者を見つけ、割り勘作戦である。

「ちょっとすみません」と声をかけ、クルマで一緒に行こうと提案したところ、アランから色よい返事はなかった。
この期に及んで、いいのかアラン。
あからさまに怪しまれているふうでもある。
やはり、何らかのヴェルディグッズを身につけておくべきだったか。

聞けば、17時半に最終便のバスが出るという。
あと5分。そうとわかれば、一緒に探すよ。
で、バスの案外所に行き、あっさり解決。無事に乗れた。

バスが少し遅れ、席についたところでキックオフの笛である。

開始の5分くらい見られないのを覚悟したが、間に合ってよかったね。
危うく井林章の先制ゴールを見逃すところだった。

3分、セットプレーから決まった井林の得点は、冨樫監督にとって会心の一撃だろう。
「このチームはまだまだ伸びしろがあり、セットプレーはそのひとつ」と話し、今週からリスタートのみの練習日を設けるなどして、時間を割いてきた。
やったね、いきなりその成果が出た。

これでぐっと有利に試合を進めることができそうだとほくそ笑んでいたら、そうは問屋が卸さなかった。
群馬の出来が思いのほかよく、テンポよくパスをつなぎ、ミスも少ない。
ヴェルディの選手は、どうもやりづらそうにしている。
すると36分、群馬の吉濱遼平に裏抜けを許し、同点に。
あそこで対応したウェズレイ、コースに身体を入れるのがセオリーだが、中途半端に身体をぶつけ、シュートまで持ち込ませてしまった。
間に合いそうにないって判断だったかなあ。

後半、冨樫監督は動く。
ウェズレイを下げ、南秀仁を投入。
三竿健斗が1列下がり、センターバックに入った。
ここから先は、タイトなディフェンスを取り戻したヴェルディが本来の姿を見せた。

69分、右サイドの南がなかに入れたパスを杉本竜士がスルー、中後雅喜のシュートが決まって勝ち越し。
72分、とどめは南のドリブルシュートだ。
相手をひらりひらりとかわし、豪快にサイドネットに突き刺した。
ついに今季10点の大台にのせた。
南は左ひざの違和感により大事を取って天皇杯2回戦を欠場したが、その判断も吉と出たように思う。

安西幸輝が戦列に復帰したのも大きい。
65分、大木暁と交代で途中出場。
この試合、大木もいいガッツを見せていましたけどね。

こないだ、僕は安西に復帰までの道のりを訊いたところだった。
6月あたりから右足首がしくしく痛みはじめ、7月中旬にピークに達する。
シーズン中、ほとんどのサッカー選手は万全なコンディションではなく、どこかしら小さな痛みを抱えながらやっているものである。
そこで、どの程度の痛みなら強く訴えたほうがいいのか迷うんですね。
もともと安西は痛みには強いほうだからなおさら。

安西はメディカルスタッフと相談を重ね、治療に専念することにした。
「自分が試合に出なくなってからチームは連勝。順位を上げていくのはうれしさの反面、やはり悔しさのほうが大きくて」(安西)

およそ1ヵ月前、安西は新たな治療を受けるために筑波大を訪ねた。
患部に衝撃波をあてるというものである。
衝撃波って、すでに字面でこわいよ。
これがね、すんごい痛いんだって。
安西の前に治療を受けた女の子は激痛のあまり失神したそうだ。
あんた、そんなもん見せられてみなさいよ。
ビビるでしょ。僕だったら即座にきびすを返すね。
おいマジかよと、げんなりしたベビーフェイスが目に浮かぶ。
だが、そこは逃げなかった。
男の子である。
先生は効果が表れるまで1週間から2週間と説明し、そのとおりに次第に症状が落ち着いた。
ひとまずよかったね。
安西は根気強く付き添ってくれた能登篤史トレーナーに、いたく感謝していました。


●掲載情報
『フットボール批評』issue07(カンゼン) 9月7日発売
「GMを『育てる』試み」と題し、名古屋グランパスの久米一正社長兼GMと、小倉隆史GM補佐に話を訊いた。
小倉さんと面と向かって話すのは、十数年ぶりである。
「現場をやりたい気持ちはずっとあって、ライセンスも取得したのに、オファーがひとつもなかった」の言葉には実感がこもっていた。

実際、僕もテレビの世界に軸足を置いているように見えていたもんなあ。






Re:海江田哲朗氏のブラインドサッカー記事を読んで

昨夜、日曜は群馬行こうねって話してたタニさんからLINEメッセージがきた。
あんたの書いたのが俎上に上がっていますよ、興味深いよと。

海江田哲朗氏のブラインドサッカー記事を読んで
ブラインドサッカーを長年取材する岡田仁志さんのブログ。

タニさんは、僕の周辺で何かあると、妙に盛り上がるところがある。
そんでさ、こっちの肩を持つつもりはこれっぽっちもないんだ。
僕としても気楽でいいけど、
まったくいい友だちを持ったもんだよ。

最近、サッカーダイジェストWebに記事を2本上げた。
【ブラインドサッカー日本代表】悲願のパラリンピック初出場へ、大逆転なるか!?
【ブラインドサッカー日本代表】障がい者スポーツに「勝負の駆け引き」を求めるのは酷か?
岡田さんが拾ってくれたのは2本目のほう。

まあ、書いたものが誰かに届いたとわかるのはうれしいもので、めったにない機会だから、きちんとワンツー返しますよ。
こういうのは受けないと面白くないからね。
面白くやれるかどうかわかんないけど。

では、順を追って。

まず、タイトルは編集者の仕事で、こういう問いかけのほうが多くの人に届くだろうという狙いがあると思われます。
よほど的外れでない限り、僕は編集者のセンスを信頼します。
んなこた、岡田さんはご存じでしょうけど、読者のために一応。
苦手なんすよね、タイトル。
ピタッとくるのなんて、年に数回。
「これしかないっしょ!」と提案したものに限って、きれいに却下されたり。
どうしてうまくできないんだろう。

中国とイランのやり口は、感心はしないけど、尊重はするというスタンスです。
彼らはそれなりにリスクを背負って欲しいものを掴みにいった。
岡田さんが全体にとって「悪」とする論拠はわかりますが、彼らに「善」を押しつけることは僕にはできません。
皮肉込みでも、おめでとうと書く気にはなれませんでしたが。
日本はそんなチームの後塵を拝した。その事実が重いです。

魚住監督の「中国とイランの引き分けという結果にはなにも申しません。ただ、試合内容については不満です」というコメントから、教育者なんだなあと僕は率直に感じました。
言葉を加えるなら、教育者らしい正義感。
それだけの話で、指導者として戦う男であることを否定していませんよ。
教育者とサッカー監督、ふたつは並び立ちませんか?
魚住監督はとてもいい仕事をされたけど、やはり勝負師ではなかったと思います。
監督は日本の守備組織を指して「美しいダイヤモンド」ってよく言ってたじゃないですか。
どの世界でも、真に勝負に辛い人はああいうことを言わないんですよ。
無意味どころか、毒だって知っているから。
言葉に酔って、詰めが甘くなる。
今回、勝負に生きる人であることを証明するには、チームを勝たせるしかなかった。

中国とイランの「したたかさ」については、岡田さんの拡大解釈です。
僕は、あの駆け引き以外に、両者のしたたかな点について言及していません。
だから、わざわざ「勝者に見られたしたたかさ」と、限定して書いています。
この際、セコさと言い換えてもいいです。
日本にはなかったですよね。おそらくは潜在的にも。よって「皆無」としました。
岡田さんが紹介してくれた頭脳プレー、相手を欺くために策略をめぐらすのは当然で、僕の解釈ではしたたかとは違うんですよ。

〈背景に浮かぶのは、障がい者スポーツに注がれる社会の視線だ〉

これはもちろん前段落の日本チームの特性にかかっていて、以降は障害者スポーツ全般(ここでは漢字をひらきません)、そして
私たちの側に視点が移っていくという流れだったんだけど、構成がまずかったかなあ。

選手たちが「謹厳実直」に振る舞わざるを得なくなっている、とまでは意図していません。
スタジアムの外では、素の顔があることも知っています。
僕が一番好きなエピソードは、「どんな声の女が好きなの?」という彼らのエロ話です。
ただ、人格形成を含めて、何らかの影響は確実に与えているんだろうなと。
背景くらいの言葉が妥当かなというチョイスです。

以前、僕は取材でこんなことを話す人と会いましてね。
「いい子にしてないと、周りからそっぽを向かれちゃう」
視力とは別の障害を持った人で、彼、親に捨てられてるんです。
この不安感、ああ、本当のところはわかんないけどわかるなあというのが僕の実感でした。
生きていくには周りの助けが必要で、自分が日常的に発している「うるせえ、バカ」って言葉を、この人は何度も飲み込んでいるんだろうなあと思ったり。

ブラインドサッカーの選手は(日本代表以外の人も)、誰も彼もがちゃんとしている。
いろいろ考えましたね。
やはり社会人として生活しているからか、よく知らないけど家庭環境に恵まれているのかな、なかにはブラサカによって変わった人もいたりして。
団体競技を取材すれば、大抵、10人にひとりくらいはつっけんどんで手強いのがいます。
視覚障害者にも、協調性を欠くはみ出し者で、かつ運動好きなのはいるはずなのに、もしかしてその人は何らかの事情でここまで辿りつけないのだろうかと。
チームは混ぜたほうが強くなる。
これは鉄則ですから、制御が利かないのをひとりくらい入れたほうがいいんじゃないだろうかとか、いらんことまで考えたものです。

原稿の最後のほうは、実際、極端なはみ出し者がいたとして、はたして幻想を抱いている側(中国とイランの試合展開をまるで予期できなかったのだから僕もそのひとりなのでしょう)が受け入れられるのかという素朴な疑問がありまして。
私生活ぐちゃぐちゃで、借金だらけのうえ、ぶさいくなくせに女とやりまくりで、インタビューの態度が超絶ひどく、「あん?」とか返してくるやつ。
口ぐせは「勝ちゃいいんだろ」。
スポンサーは絶対いやな顔をするなあ。
でも、点はバカスカ取るんですよ、そいつ。
もし出てきたら、マジかよと戸惑うでしょうが、今回の原稿を書いた責任をもって、僕はそいつを面白がろうと決めました。
このへんは余計でしたね。

『闇の中の翼たち―ブラインドサッカー日本代表の苦闘』(幻冬舎)は、ちゃんと読んでますよ。
5年くらい前、ブラインドサッカーと出合ったときに。必読でしょ。
僕の趣味ではないけど、世に出す価値のある一冊だと思います。

以上です!

では、タニさん、あとは頼みましたよ。
おれ、ツイッターやってないから。
つないだ責任もってね。
(感動をありがとうの)世の中に石ころを投げるのもライターの仕事とかうそぶいたけど、朝っぱらから疲れたよ。

それにしても、今回の結果は残念だなあ。かえすがえすも痛い。
近年のブラインドサッカーの発展は素晴らしいのひと言で、大輪の花を咲かせる流れは完全にできていたのに、大勝負に敗れた。





ブラサカアジア選手権開幕

昨日、IBSAブラインドサッカーアジア選手権が開幕した。
場所は、代々木フットサルコートの特設会場。
日本、中国、イラン、韓国、インド、マレーシア、6ヵ国による総当たりのリーグ戦を行い、上位2ヵ国にリオ・パラリンピックの出場権が与えられる。
ブラインドサッカー日本代表は初出場を期し、相当力の入っている大会だ。

原宿の駅を降りて、歩道橋を渡っていたら、チャラけた若者がわんさか。
そうか、ブラサカもずいぶんと広まったものだなと感心していたら違ったよ。
UVERworld(ウーバーワールド)っつうバンドのライブが近くの代々木第一体育館であった。
う~ん、知らん!

日本の初戦の相手はアジア最強の中国だった。
これがね、すんごい強かった。
日本は守りを固め、あわよくば勝ちを狙う戦法だったが、結果は0‐1の敗戦。
GK佐藤大介の好守が光った。
一番得点の可能性を感じたのは、黒田智成がドリブルで突っ込んだときだったなあ。

今日の相手はイラン。
これもかなり手強い。
前線の攻撃力が高く、あのぐいぐいくるドリブルをどうやって抑えるか。
でも、中国戦で勝ち点を取れなかったから、勝利が必要になる。
正念場だ。
19:30キックオフ。当日券、あるそうだよ。
大会公式サイト


●掲載情報
ヴェルディが好調だとオファーはあるもんですね。最近書いた2本。
サッカーダイジェストWeb
スポーツナビ
選手を理解し、適切な働き場を与える。
人間、いくつになっても他者からちゃんと必要とされることの大切さを思ったりします。





多摩陸にて

久しぶりに多摩陸へ向かったのである。
ここを借り、東京ヴェルディは週2程度練習をやっている。
感心なことに、選手たちは帰り際「ありがとうございました」と受付の人に挨拶していく。
そんなん当たり前って思うかもしれないけど、案外そうじゃないんだよ。

チャリンコに乗って、約40分。
外は炎天下だ。
風が気持ちよかぁなんてのは最初だけで、すぐに汗みどろとなった。
替えのTシャツを用意していなかった。不覚!

チームは好調。現在、4連勝で3位につける。
前節、目の下あたりを負傷したウェズレイの姿はなく、ゲーム形式のトレーニングでは畠中槙之輔が入っていた。
メンバーがどうなるかまだわからないが、彼にとってはチャンスに違いない。
安西幸輝、コ・ギョンジュン、ポープ・ウィリアムは別メニュー調整。

ヴェルディユースの94年組、宮地元貴(慶応大3年)が練習参加してたよ。
安在和樹、ポープと同期。
関東大学リーグでは、ハイボールの強さが際立っている。
話には聞いていたけど、快活な口ぶりが印象的な青年です。
ま、ご縁があるといいですね。

練習終了後、外には選手の帰りを待つ少年とお母さんがいた。
身体をくねくねしながら駆け寄り、サインをもらってうれしそうにしている。
その楽しげな様子を、だいぶ身体ががっちりしてきた渋谷亮と見ていた。

「あの子、相当ヴェルディ好きだな。見事なまでの全身緑」
「あの年で、なぜヴェルディを。親の影響っすかね」
「その線が濃いだろう。昔の君もあんなんだったのか」
「いつもジャージでした。青のアディダス」

そうとなれば訊かずにはいられない。
近頃ね、興味を覚えた人には、接近の衝動を抑えきれないんだよ。

お母さんの話によると、一昨年、少年はヴェルディのサッカー教室で観戦チケットをもらい、そんでゴール裏の応援の楽しさにはまったそうだ。
おお、そっちのケースか。
家ではヴェルディの試合を繰り返し見、週末のスタジアムが家族の予定に組み込まれた。
特に好きな選手は杉本竜士。
あの果敢なプレーは、子ども心を揺さぶるよねえ。

翻って、渋谷は「日々、勉強です」と、言外に苦渋をにじませていた。
この日の練習も、左右のサイドバックやサイドハーフに入り、使われることの多いポジションで経験値を積んでいる。
必然、主体的にプレーすることで発揮される彼の特長は影をひそめ、窮屈そうに見えた。
冨樫監督は、渋谷が本来の中盤の底で何ができ、何が足りないかを承知の上でそうしているはずだ。

選手がクラブに対して貢献する形はさまざまだが、価値そのものはピッチ上でのみ示される。
試合で使われないということは、それがまだゼロということだ。
そこで、新人だし、別になんてことないっすよとへらへら強がる人もいるのだけど、そうしないのがこの人のいいところである。
くそう、という気持ちが透けて見える。
いいぞいいぞと、僕はチャリンコをこいで帰った。

したら、ぐったり疲れちゃって、夕方からちょっと寝るつもりが6時間ぐっすり。
代表の日韓戦、見そこなったよ。





3連勝で4位だよ

勝ったよ。1‐0をみっつ重ねて、3連勝だ。
J2第26節、東京ヴェルディ vs 京都サンガF.C.@味の素スタジアム。
全体的には、両チームの積み重ねの差が如実に表れたといったところか。
京都は監督が交代したばかりで、要所を整理しきれていない印象だった。

ゲームは後半になって動いた。
57分、安在和樹が再三狙っていた裏へのロングパスに、高木大輔が走る。
相手と競り合ってPKをゲットし、これを自ら蹴って成功させた。

「(右上の)コースはいつ決めたのかな……。蹴るちょっと前っすかね。おれ、GKと目が合うのはいやなんで、後ろ向きにボールをセットするんですよ。それで助走の前にチラッと前を見て決める」(高木大)

なるほどね、基本自分本位で、一瞬の駆け引きで勝負するタイプか。
一本気の性格からもそっちのほうが向いてそうだ。

後半15分頃かな。
自陣深いところから澤井直人が高木大に出したロングスルーパスには、おおっと声が出たね。
右足のアウトサイド、ひざ下の振り鋭く、スパーンッと蹴った。
「ちょっとアウトにかかりすぎたんすよ。もっと精度を上げないと」(澤井)
いやー、いいもん見せてもらった。
アウトサイドキックの名手だった元監督の川勝良一さんの評価を仰ぎたいものだ。

3連勝で、4位に浮上。
大木暁は初出場から2試合つづけて勝利のピッチに立った。
こういう状況で出場機会に恵まれる(彼自身も貢献しているとはいえ)というのは、ほんとうに得がたいことだ。
持って生まれた運みたいなもので、自分ではコントロールしようがない。

「今日はプロと大学の違いをまざまざと思い知らされました。スピード、球際、ポジショニング、すべてのレベルが一段上。後半になって多少慣れて対応できるようになりましたが、周りの選手にどれほど助けられたことか」

と、大木は殊勝なコメントである。
マッチアップした同い年の駒井善成には、危ない場面をつくられた。
宮吉拓実、伊藤優汰も同期で、この世代の京都はタレントが揃っている。

前半、惜しいクロスはあった。高さが足りず、ディフェンダーにクリアされた。
「あれはファーサイドを狙ったキック。アシストのチャンスだと思うと、急にあがっちゃうんすよねえ。特にドフリーだと」

遡ること3日前――。
冨樫監督の囲み取材で(といってもレポーターの高木聖佳女史と僕のふたりだったが)、大木大胆起用の裏話を聞いた。

前節、ロアッソ熊本戦の前々日、冨樫監督は大木を起用するプランをコーチ陣に明かした。
コーチのひとりは言ったそうだ。「トガ、考え直せ」。
「わかった。ひと晩考えてみる」と持ち帰った冨樫監督。
翌日、考えが変わらないことを話した。
「おれの首も一緒に差し出すから、大木を使わせてくれ」との殺し文句を付けて。

僕と高木女史はまじめに聞いているのがばかばかしくなっちゃって、大笑いである。
なんだその大げさな話。コーチ会議はコントのノリかよ。

で、そのあと大木にまんま聞かせたら、ぽうっとした顔してやんの。
素直に感激しちゃって、このへんの素朴さは彼のいいところである。
そしてポツリ。
「冨樫さん、危ない橋を渡りましたね」
無茶しやがって、と言わんばかりの口ぶりである。
あのね、自分を危ない橋にたとえるもンじゃないよ。
とぼけたコメントは彼の味である。

「結果を出したい。評価や信用が全然足りないことは誰よりも自分がわかっています。明らかな結果を出さなければ試合で使われない」
このように立ち位置はきちんと把握できている。
勘どころの良さをちょいちょい発揮しているが、客観的に見てすでに通算50試合以上出ている安西幸輝、ベテランの田村直也との差はまだだいぶあるなあ。
だが、こうした経験を重ね、トレーニングに落とし込んでいけば、シーズン終盤にはぐっと迫っているかもしれない。


●追記
なんかね、8月21日に家族向けのサッカーイベントが東京であるそうだよ。
「第3回キッズスポーツフェスタ」
元日テレ・ベレーザの小林弥生さんも講師として参加。
ご興味のある方はぜひ。





お暑うございますね

昨日は、高校選手権神奈川県予選の2回戦に足を運んだ。
対戦カードは、麻布大附属高 vs 新城高。
炎天下の下、11時キックオフ。風があったからまだよかったけど。
新城高の監督が元川崎フロンターレの箕輪義信さんなんだよ。

とりあえず、試合前に挨拶しとこうと箕輪監督を探したが、どこにも見当たらない。
マネージャーの女の子に訊いたら、「監督はいま審判やられてます」。
えっ、あのいかついスキンヘッドの男が。
あれには逆らえないね。元プロだし、見るからにおっかねえし。
試合前にレフェリーを担当するのは、よくあることらしい。

麻布大附属高は県内では知られた強豪私立、一方の新城高は無名の公立だ。
新城高は最終ラインの奮闘もあり前半0‐1と持ち堪えていたが、後半2点を失い0‐3と敗れた。
後半勝負に懸け、相手の焦りを誘う作戦はわりとうまくいっていたが。

「勝ったからって、それがなんなの? そういう子どもたちを刺激して、どうにかチームを鍛えているんですけどね」
箕輪監督は流れる汗をぬぐった。
興味あるなあ、この人の仕事。

試合会場は、東海大相模高で、部活に励む学生がたくさんいる。
挨拶の習慣が徹底されているらしく、僕の前を通るたびに「こんにちは」「前、失礼します」と頭を下げていった。
礼儀正しいのはけっこうだけど、これ案外地獄。
十や二十の数じゃないんだから。
めんどくさくなっちゃって、途中から「おう、おつかれ」「気をつけて帰れよ」とすっかり先生か、OBヅラだよ。

ほんと先生とか人の親って大変だなあってのは、こないだ観た呉美保監督の『きみはいい子』でも思った。
尾野真千子、池脇千鶴、富田靖子と好きな役者が出ていて、過酷な描写にううう
となりながらスクリーンを見つめた。
子役が抜群によかったです。
現実との境目を見失いそうになったのは、是枝裕和監督の『誰も知らない』以来だ。
あとは、そのうち『バケモノの子』を観たい。

東京ヴェルディはいい調子だねえ。
ギラヴァンツ北九州、ロアッソ熊本とのアウェー連戦で、6ポイントを奪取。
北九州戦では高木大輔、熊本戦では新加入の高木善朗がゴールを決め、チームに勝利をもたらした。
5位浮上。まさかこの順位で夏を迎えられるとは思わなんだ。

熊本戦では大木暁がプロ初出場を果たした。
ワンタッチ、ツータッチの判断がよく、機を見てオーバーラップも仕掛けていた。
高木大に合わせたクロスはちょっと高すぎて、頭を抱えていましたね。
全体的にはまずまずの出来。
右サイドバックに故障者が出て、出番が回ってきた格好だが、こういう巡り合わせの運を掴むのは大事です。
練習からやれるところを見せておかないと、冨樫監督は使わないからね。


●掲載情報
『フットボールサミット第31回 松本山雅FC』(カンゼン)
ヴェルディに縁のある、岩間雄大「黒衣のフットボール」と、喜山康平「プロ選手の証明」を寄稿。
岩間のキャリアは異色中の異色だよ。
喜山は、いつかこの人のノンフィクションを書きたいなと温めてきたから、それが叶ってうれしかった。
内容は、ヴェルディのアカデミー出身者に伝えたいことばかりだ。

連載「日本サッカーの『土』をつくる」第11回は、椎本邦一(鹿島アントラーズ強化部スカウト担当部長)に登場してもらった。
伝説のスカウトマン平野勝哉さんからつながる鹿島の伝統がここにもある。
周辺取材にかこつけて平野さんに久しぶりに連絡したら、「こんな棺桶に片足突っ込んでいる人間に」と相変わらずジョークをかましてくれた。
うそだよ。72歳ながら現役バリバリの営業マンで、人工芝を売りまくってるよ。
さておき、鹿島は今年の大卒選手の目玉、明大の和泉竜司を獲れるといいですね。





季刊レポ終刊号

『季刊レポ』終刊号が発売されている。
創刊から5年、20号目にてオシマイ。
終刊ってあまり聞かないよね。潔い。

終刊号なのに、新連載大特集と打って出た。
僕は「東京スポーツ番外地」と題し、マイナースポーツの取材を試みている。
アルティメットって知ってます?
フライングディスク(一般的にはフリスビー)を使う競技ですよ。
初めて見たけど、面白かったなあ。

レポ20
『季刊レポ』20号の内容とご購入はこちら。

三省堂書店神保町本店の2階では、「さよなら(T_T)/ #季刊レポ 」フェアが開催中だ(7月下旬までの予定)。
僕にとって、レポがどういう場だったのかというのは、ヒビレポ『借りたら返す!』最終回に書いた。

終刊と同時に、レポから派生したユニットの活動が始まっている。
情・弱損ズ。
メンバーは、北尾トロさん(元レポ編集長・ライター)、竜超さん(同性愛マガジン薔薇族編集長)、僕の3人だ。
そんな自覚なかったけど、いろいろと弱であることが発覚。
ゆえに亀の歩みである。
ミーティングをしても、ほんとくだらないことしか話してない。
弱なりに、面白おかしく生きていく方法を探る。





10位に後退

くう、負けた!
J2第23節、東京ヴェルディは最下位の大分トリニータをホームに迎え、1‐2の惜敗を喫した。
大分の選手とサポーター、めちゃくちゃ喜んでたよ。
14試合ぶりの勝利だって。そりゃうれしいでしょうな。

大分の両ワイド、右の西弘則と左の為田大貴にはだいぶ手こずった。
ゲームが動いたのは後半。
ヴェルディはミス絡みで2点を失い、南秀仁のゴールで1点を返したが、最後は大分のなりふり構わない守りに屈した格好だ。

「人と人の間のスペースにポジションを取り、ボールを受けられるようにはなってきたんですけど、もっとボールに触ってリズムをつくりたかったですね」

とは、2試合連続先発出場の中野雅臣。
ルーキーながらまずまずやれているように思え、もっとできそうでもある。
経験を重ねれば、持ち前の前を向いて仕掛けるプレーが増えてくるだろう。

一昨日は、今年初めてヴェルディユースの試合を観に行った。
プリンスリーグ関東第9節、三菱養和SC戦。
こちらも0‐1で負けてしまった。

レフェリーのジャッジがやや不正確で、そこにビハインドの焦りも加わり、ヴェルディの選手たちは判定に不服をもらした。
文句を言いたくなる気持ちもわかるなあと思いつつ、それでも大人が高校生からタメ口を利かれているのを見るのはやりきれないものだ。
育成年代の試合はこの手の切なさが常にある。
といっても、特別口汚いわけではなく、よそのチームも似たようなものだし、昔に比べればずっとマシなんだけどね。

そこで、「もういいじゃん。やろうぜ。プレーしよう」と味方に声をかけている選手がいた。
14番の大久保智明。2年生、左利きのアタッカーだ。
試合が終わって声をかけた。

「最初は一緒になって違うんじゃないかと言ってたんですけど、これは変わりそうもないなと思ったんで切り替えました」

クレバーな判断である。
サッカーにはある種の烈しさが必要だが、それは判定以外に振り向けられるほうがずっと成長に役立つ。
育成年代では特にそうだ。
サッカーに限った話ではなく、社会に出れば、正当性を欠くジャッジをされることなんていくらでもあるんだから。
育成年代の指導者もまた、軽く受け流せるくらいのほうが向いている。
選手の身を預かる立場のため、危険なファールを流されるようだったら、これだけは厳重に抗議しなければいけない。
トップの監督になると、レフェリーにプレッシャーをかけることも仕事の一部になりますけどね。

大前提として、ゲームを裁く大人がしっかりした技量を持つべきというのは正しく、そうあるべきだと僕も思う。
若い選手がレフェリーを育てなければいけない理由はない。
ただ、現状それを望むのはむつかしいでしょ。
以前、プロ、アマ両方のレフェリーを取材したとき、みんなびっくりするほど真面目で実直だったのを憶えている。
真面目さゆえに圧力をかけられると堅くなっちゃうタイプで、気持ちをほぐすにはひと手間かかる。
そういう人が志す仕事なのは今後も変わらないはずだ。

どうやったらみんなで良くなっていけるか。
そこを思考の立脚点にしたとき、選手サイドからやれることもまだ多くあるというのが僕の考えだ。
いずれプロになったとき、報われることもあるんじゃないかな。
人間なんて単純なとこがあるから、ちょっと可愛げのある言い方をするだけでだいぶ違ってくると思う。
あ、平本一樹あたりはそういうの上手ですよ、きっと。
半笑いでレフェリーに話しかけているとき、何を言っているか聞いてみるといい。
シャレが通じなくて、裏目ったこともあるだろうけど。

話が逸れた。
さておき、2年生の14番つうことは、来年のエース候補ですね。
つうても、すでに一桁の8番を付け、年代別代表の常連である渡辺皓太がいるか。
彼、すんごいシャープな動きをする選手だよ。

「10番を付けられるものなら、全員がそうしたいはずです」(大久保)

そうね。ヴェルディの選手だもんね。がんばって。


●掲載情報
『フットボール批評』issue06(カンゼン) 7月6日発売
「勝手にJFA会長総選挙」なる企画をでっち上げ、やってはみたもののおおいに難航した。
見込みが甘かったね。
チャレンジの結果、僕が失敗するぶんにはいいが、今回は人を巻きこんでいるから笑って済ますわけにもいかない。
エンタメ要素を入れていくのって、むつかしいなあ。