我が国に出回っているベッドの大半は、頭側に化粧板がそそり立つデザインがほとんどで、外国映画に見られるようなメルヘンチックなものは皆無に等しい(大金持ち達のモノについては除く)。
昭和40年、新築を機に板の間を与えられ、ベッドを購入することとなった。
映画「The Sound of Music」で雷雨の夜、マリアの部屋に子供たちが集まるシーンとか、スエーデン映画「沈黙」のポスターにあるベッドのイメージを引っ提げ松坂屋のバーゲン会場で出会ったのが初代マイベッドである。
あの時の2万円はリーゾナブルでよい買い物であったと今でも思っている。
その後、結婚とか我々の業界に付き物のドサ回りの為、ベッドは使用されず、実家の物置で眠っていた。
20年以上前、終の棲家を建てたのを機にマイベッドは復活するハズであったが、保管の悪さから、随分みすぼらしい状態に落ちぶれていた。
そこでDIYの腕前を過信し、自らニスを塗り始めたのだが、それが腹の立つほど無様な出来栄えで、数日間落ち込んだ。
そして復刻版を製作するという決断をする(つまらないことに意地を張るのが欠点)。
復刻用の図面は素人が描いた割には緻密であり、それをプロが業務用に直した。
材木の扱い、工作機器のその後の発達は目覚しく、塗装も含め出来上がりについては満足のいくものであった。
小学校時代の同級生が所属するカリモクという家具会社の岐阜工場にオーダーしたので、出来栄えはワールドクラスの折り紙つきであった。
眠ってしまえば、ベッドのデザインなど関係ないという意見もあるが、日常生活におけるルーチンは重要であって、気に入ったデザインのベッドに向かって「今日も一日頑張った!」と気合を入れるには、メルヘンチックなデザインも有用だし、仕上げの塗装も美しい方がよい。
確かに値は張ったが、2代目ベッドにも満足している。
最近、マットレスを買い換えたのだが、昔に比べ随分厚くなりフィット感がよくない。
このフレームの設計図に少し手を加えれば、現代の若者にもマッチするメルヘンチックで、クラッシックな製品に纏まるに違いない。
復刻版第1号の製作費は高額であったが、ひとたび量産されれば大幅に安く出来ると思う。
ここで1世代下の女子に聞いてみた。
今の若い子は、クラシック調にも、木目調にも関心は無く、床だって、白か黒を選ぶとのこと。
夢が無い!