みなさんこんにちは、一年で最も日が長い、いわゆる夏至の候になりますが、お元気でしょうか。わたくしは日中が長いにもかかわらず割とインドアなモヤシ生活をしてまして、そろそろ夏のマッチョ化計画に向け本格的に始動せねばと思っております。しかし毎年言うものの、日本国が国債ゼロ化をいまだ(おそらく永遠に)達成できないのと同じように、私のマッチョ化計画も永遠に実現できない絵空事であろうということは私をご存知の方はお分かりでしょうが。
さて、どのようなインドア生活をしていたかと言うと、ご本を読んだりしてました。最近はバタバタしてましてなかなか読書をする時間が作れないのですが、私は凡人であるゆえ「インプットなくてアウトプット出来ず」の人間ですので、それでもいくつかはちんたらとですが読んでいました。それらの読後感などを。
「教師の心が折れるとき」 ~教員のメンタルヘルス~実態と予防・対処法
井上麻紀 著
大月書店 1,500円+税
臨床心理士である井上氏による、「学校の先生のココロの健康」をケア・サポートするには何に気をつけ、またどう対処して行くか、を豊富な経験を基に書かれてある本。じつは井上麻紀さんはアマチュアのオーボエ吹きでもあり、不肖わたくしも「まきろんさん」と呼んで仲良くさせてもらっていますが、こんなエラい人だとは知らんかった(笑)。今の世の中、どんな職種であっても仕事上ではそれなりのストレスやプレッシャーを受けておりますが、なかんずく学校の先生は本当に大変で、授業をはじめ生徒指導、会議、部活動、保護者への対応..等々、本当にやることが多そうで、そんななかココロの健康を保つのは大変なんだろうなあと、素人のわたくしですら常々思っておりました。
この本の内容は、では実際どんな時にダウンしやすいか、兆候はあるのか、どのようにして休養をとり、復職に向けるか、また管理職はどうするすべきか、職場ではどんなサポートをすべきか、などなどがコンパクトながら豊富な事例を基にまとめられています。
本の終わりの方には「保護者対応のポイント」や「どのように話を聞くか」などカウンセリングの技術も垣間見えるところがあり(逆転移を見逃さないとか)、学校の先生はもちろんのこと、教師でなくとも読んでおくのは非常に有益だと思いました。てゆかまきろんさんはわたくしと同じイカリングモデルのオーボエをお使いになっていらっしゃるのですが、ということは、わたくしもそのうちこのニョロニョロ日記で本を出せるかしらん。無理ね(笑)。
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さて、次のご本の紹介に行く前に近況ニョロニョロを。
6月××日
新しく塩釜口にオープンした楽器屋さんの講師登録に行く。契約書を書いてると、受付担当とおぼしきおねーちゃんが「あら~オーボエを習いに来たのですか、ちょうど先日先生が決まりまして」と言われ、「あの~、その先生なんですけど」「えっウッソ」と言われる。慌てて「随分お若そうだからてっきり生徒さんかと思って」とフォロー。それお若いんじゃなくて小さいと言いたかったんじゃろうが(笑)。
6月△△日
合唱団さんとのお仕事、この日はリハ。昼食を済ませ、楽器を組み立てながらリードを湿らせ、エチケットライオンでゴシゴシ磨いてたらテノールのおっちゃんに「おっぼく歯磨きか、偉いぞえらいぞ~」と言われる。僕って...。
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「旋法論」 ~楽理の研究~
東川清一 著
春秋社 3,800円+税
一見ぜんぜん関係ないように見えるのですが、ここんとこ必要があって吹奏楽曲の名作「風紋」をアレコレ研究してるんですね。で、この曲を理解するのにどうしても避けて通れないポイントというのがいくつかあるのではと、わたくし感じてたわけなんです。実はこの曲を初めて聴いたのは中学生の時で、しかもわたくしはそのころ吹奏楽部でもなくもちろんオーボエも始めておらずではあったのですが、強烈な印象がありました。そのころピアノで習ってたドビュッシーに非常に雰囲気が似てるところがあるなぁはっふんと、当時から思ってまして。で、このトシになってこの際せっかくだから自分がこの曲についてどう対峙してるのか具体的に書き出そうとしたんですが、ちょっと1万字くらいになってしまい(本当)、正直まとまらんので、すみませんが以下の3点にものすごく簡略化して集約すると
1.メロディや終止形を、旋法(モード)によって解釈する。
2.非和声音(特にアポジャトゥーラ)がどこに出現して、それはどんな意味を持つか、理解する。
3.ハーモニーを古典的な機能和声の内で把握するには限界があり、近代フランス和声(平行進行の許容、そして上・下部付加音という新たな音響素材)のアイデアを取り入れることが不可避。
という結論に達したわけです。こちらご興味あるお方にはわたくしのオタクな思い込みをお話できますが、まず2時間はかかると思っておいてください(笑)。コメダならコーヒー頼んでシロノワール食べてもっかいコーヒー頼んでおつまみの豆を2袋つまんで最後にかき氷まで食べれる長さです。
というわけで、「何長調(Dur)・何短調(moll)とも違う、微妙な中間色をもつ《旋法》とはなにか」を勉強しようと思いまして、アレコレ読んだのですが、やっぱりこのご本が一番徹底しており、そもそも論というか、非常に勉強になりました。特にティンクトリスの旋法理論とグラレアヌスの旋法理論をそれぞれ何にウエイトを置いて論理を展開しているのか、よく分かりました。
ただ、現在のわれわれにはちょっと馴染みの薄い音楽用語「ギャマット」「フィナーリス」「ミクストゥスとコンミクストゥス」などがバンバン出てくる上に、それらを東川氏独自の用語「均」でもって説明してあるので、決して入門書というわけには行かないかもです。たぶんこれ読む前に同氏の別著「シャープとフラットのはなし」~読譜法の今昔~(音楽の友社,2,800円+税)を読んでおくと比較的マイルドに理解できるかと。
また、ジャズ理論やポピュラー音楽理論でも旋法(モード)は扱うので、それらの本や教則本を読むのも手っ取り早いのですが、本来各旋法にはそれぞれ「正格[オーセンティク]」(例:ドリア)と「変格[プラガル]」(例:ヒポドリア)があり、音域や性質はもちろんのことそれぞれドミナントとなる音が違うんですが、これが一緒になって紹介されているので(例:「ドリアンスケールのキャラクタリスティック・ノートはAである」とか)、浅い理解に留まります。
ともあれ、「旋法論」は取っ付きにくいかもですが、これを苦労して読むと、じゃあ実際旋法によって作られていた「グレゴリオ聖歌」などはどうだったのかを書いた、水嶋良雄氏が書いたその名もスバリ「グレゴリオ聖歌」(音楽の友社:6,200円+税)がスラスラと読めるから不思議。
いや、わたくしの場合スラスラというより、より肌で感じることが出来るというか、理詰めを追求した結果感性が鋭くなったというか、そんな感じです。また、水嶋氏のこの本は旋法各論だけでなく、ネウマの読み方、動律の基礎(アルシス/テジス)、発音、はては指揮法(キロノミー曲線)!まで網羅してあるので、西洋音楽の根幹を知るにはもってこいだとわたくしは思っております。
ということで「読書の梅雨1」しうりょう。このオタクシリーズしばらく続きますんで、どうぞよろしくでございます。