<南海の桃李>
(牛養―――
わしが献策し、おぬしが建てた牌(ひ)がようやく役立つ日が来るぞ)
小柄でずんぐりとした亡き友の姿が、胸の底を過ぎる。
西に発つ牛養を朱雀門で見送った日、真備はまだ髪の色も黒々とした少壮官吏であった。
あれから長い歳月を経て、友が残した牌をようやく見られると考えるだけで、
六十を目前にした胸は青年のように高鳴った。
(この目でおぬしの牌を見、それを帰国の案内に役立てられる。
二十年の歳月を経て、ようやくおぬしとわしの志が実を結ぶのじゃ)
吉備朝臣真備さん
と
高橋連牛養さん
「秋萩の散る」は人物が数珠繋ぎされた連作。
1話1話が胸にあっちあちです。
主題の<秋萩の散る>は、道鏡さんです。