泉州は,中国・福建省に存在する,唐代から元代に繁栄した海港都市である。
泉州は,中国の福建省の沿岸に位置し,南シナ海に面した都市である。この都市は,唐代から一躍存在感を増して,それから宋・元の時代にかけて繁栄することになった。
唐代に海上貿易がさかんになって東南アジア方面との南海貿易が発展すると,泉州は広州に次ぐ貿易港となって飛躍的に発展した。宋代には海上貿易がいっそう活発化したが,この時代に泉州は貿易を管理する市舶司が設置されてさらに発展していった。そして元代にも海上貿易が積極的に展開されるなかで,泉州は中国第一,世界最大級の海港都市へと発展して大いに繁栄した。
このように海外との交流がさかんであった泉州は,各地から多くの民族が来訪して,多様な文化が持ち込まれることになった。
海上貿易を通じて,泉州には西方からペルシア人やアラブ人などの商人が多く来訪した。このため,外国人の居留地などが生まれ,また景教・マニ教・イスラーム教など外来の宗教の寺院がつくられた。
さらにヨーロッパからはイタリアの商人マルコ・ポーロが元代にこの都市を訪れている。マルコ・ポーロは『世界の記述』(『東方見聞録』)のなかでこの都市を「ザイトン」という名で紹介し,その賑わいぶりを伝えながら世界最大級の海港都市であると讃えている。
明代以降の泉州は,港湾内の土砂の堆積のために港としての機能が失われ,福州や厦門にその地位を譲り,急速に衰えていった。
しかし,今でも泉州には,多くの文化遺跡が残り,かつての交流と繁栄を伝えている。