「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」は,秦末に反乱を起こしたことで知られる陳勝の若き日の言葉である。
生い立ち
陳勝は,字(あざな)を渉といい,中国・秦の時代の河南省の人である。
当時の農民は食糧の徴発や徭役の義務のために苦しい生活を送っていたが,陳勝もそうした貧農の一人であった。
青年期
若いとき,陳勝は雇われて他人の土地の耕作を行っていた。
ある日のこと,耕作の手を休めて小高い丘に上がり,しばらくの間もの思いにふけった後,彼は近くにいた雇い主に向かって「もし将来,偉く豊かになったとしても,お互い忘れないようにしましょう」と言った。すると,雇い主は笑いながら「お前は雇われて耕作をしているのに,どうして偉く豊かになるというのか」と答えた。
このとき,陳勝は,大きくため息をつきながら「燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや」と言って,自分の大志を周りの人間が理解できないことを嘆いた。
その後
単なる貧農に過ぎなかった陳勝は,後には,陳勝・呉広の乱と呼ばれる天下を揺るがす大反乱を起こし,さらには建国を宣言して王を称するにいたった。
こうして,陳勝は,自分の抱えていた大きな野心を実行に移し,中国および世界の歴史に名を残す大人物となった。