シドンは,地中海東岸に存在した,フェニキア人の代表的な海港都市である。現在のレバノン共和国南西部の都市サイダーにあたる。
フェニキア人
地中海東岸の,シリア南部からパレスティナにかけての地域では,古くからカナーン人という民族が居住し海上交易などの活動を行っていたが,フェニキア人はこのカナーン人の末裔だと考えられている。
フェニキア人は,地中海東岸,現在のレバノンを中心とする海岸地帯で都市国家を形成し,地中海を舞台とした海上交易で活躍した。特に,前12世紀頃にミケーネ文明が崩壊してギリシア人の勢力が後退して以降,しばらくの間フェニキア人は地中海貿易を独占して繁栄を享受した。
シドン
フェニキア人もアラム人と同様に統一国家を建設せず,都市国家が分立していたが,シドンはそうしたフェニキア人の都市国家の代表である。
シドンは地中海貿易により海港都市として栄えた。前9世紀以降にはアッシリアや新バビロニアの攻撃を受けて政治的独立を失ったが,その後も重要な海港として存続した。