『旅の軌跡を紅い本のなかに~残数2ページ編~』 | 新・旅亀の世界一周冒険活劇

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旅亀の冒険・最終章。流れる雲のようにフワフワと。明日の行き先は明日決める。そんな旅をしよう。

~あらすじと始まり~

―――2009年7月に世界一周の旅に出た旅亀。

世界各国で様々な人との出会い別れを繰り返し、
旅の最終地アジアへとおりたった。
バンコクで旧友ヤギ、らくださん、ぷにょさんとの再会、
チャネラーのオカマ道という混沌とした世界を味わい
ついに旅最後の締めくくりとして東南アジア三大遺跡を目指す決意を。

東南アジア三大遺跡の一つアンコールワットを制した旅亀は、
二つ目を目指してミャンマーへ。

ミャンマーへ行くためには航空券の関係上、
再びタイランドに入国しなければいけなかった。

カンボジアとタイの国境。

この場所で一つの戦いが始まろうとしていた―――。
















シェリムアップよりバスに揺られ、数時間。

僕達は国境の町に到着した。

正直この場所に良い思い出がない僕は、
さっさと出入国スタンプをゲットして
バンコク行きのバスに乗り込みたい気持ちで一杯だった。

だがその気持ちとは裏腹にイミグレに出来た長蛇の列。

うんざりしながらその最後尾についた。









長蛇の列に並んだ旅亀と白リサは、沈黙を保った。

くそ暑い中バックパックを抱えて何かを喋ろうという気にはならない。

僕もリサも、無駄に体力を消費したくないのだ。

そんな中、頭の中では一人、あれやこれやと様々な事を考える。

主にこれからの事だ。

列の半分まで来た頃、僕の思考はある事を考えていた。

それはパスポートの事だった。

実はこの時、パスポートの余白が2ページという危険な状況だった。

さらに付け加えれば、既に購入した航空券から、
ミャンマー→マレーシア→インドネシア→マレーシア
→ブルネイ→マレーシア→フィリピン
に行く事は決まっていた。

この内インドネシアはビザ用に1ページ必要。

実質残り1ページでインドネシアを除く上記の国々+タイに、
無事に入国しなければならない、意地にかけて。











増補すればいいじゃんという声が聞こえる。

いやいやちょいとお待ちなさんな。

確かに俺のパスポートは10年用。そして有効期限は2015なのでまだまだ余裕。

だけどね。何故かどうしても譲れない事の一つに、
“この旅はこのパスポート1冊で乗り切る”というわけわからん決め事が
自分の中にはあるんすよ。

もし何年か経ってその思い出の紅い本を手に取った時。

増補した部分が中途半端に残ってたら嫌なんです。

旅亀の世界一周の証なわけだから、
1ページ1ページびっしりとスタンプが詰まってて、
余白なんか一つもない1冊にしたいんです。

こりゃもう、意地みたいなもん。

15年になるまでに、また海外に出て行くときはどうするって?

そんときゃそん時考えるっすわ。
















『リサ、ホチキスの芯、くれへん?』

『え?そんなん持ってへんで。ホチキス自体ないし』

『カンボジアに入国した時、用紙貼っつけられたやん。それ頂戴』

『・・・いいけど、何に使うん?』











『パスポートのページをそれで塞ぐ』










いやアホですなー・・・あほと呼んで下さい。







・・・つまり、実質余白2ページ部分をホチキスで塞ぎ隠蔽、
各国のスタンプで際限なく埋め尽くされた残りのページでとりあえずは凌ぐという。
あえてわかりにくく例えるなら、
重量オーバーギリチョンのエレベーターに後数人無理矢理乗り込むみたいな戦法を、
先にとっておこうというわけだ。


だって、もし現段階で増補しろ!とかいわれても、いやいや実は隠蔽部分が2ページあるんで、
そこに押して下さい!っていえるでしょ。
インドネシアのビザも、2ページ残しとかないと、
発行してくれないとかなんとか書いてあったし・・・。








ホチキスの芯でパスポートを塞ぐ旅亀。

四隅の端を、芯のみでとめていく。

これが結構ムズかしい。

だってよ、俺、不器用だからよ。

指先が太いんだこれがまた。








・・・なんとかかんとか、2ページを見事に隠しきり、、
そうこうしてる内に出国の順番が回ってきた。

タイ人だかカンボジア人だかわかんない監視官が、
真紅のパスポートを要求する。

監『パスポートプリーズ』

亀『ひ・・・ヒアユアー(ドキドキソワソワ)』

挙動不審の旅亀を横目に、訝しがりながら1ページ1ページをチェックする監視官。

・・・入念に調べるなっつーの・・・















ドスン!!


出国スタンプを押す音が聞こえた。

よし!成功だ。

パスポートを受け取る旅亀。

『センキュウ!!』

いつも以上にありがとうに力が入った。










その後入国スタンプも無事思惑通りの場所へ押印し、

再びやってきたタイ王国。

っつてもミャンマーへ向かう為の経由地なだけだが。。。





僕達二人はバンコク行きのバスに乗り込む。

頭にはバンダナと称した手ぬぐいを。

右手には真紅の本を。

そして本には・・・



宝物という名のスタンプが、
今日もところ狭しとあふれている。



旅亀の冒険はあと少しつづくよ