駆け足で、
前から子供がやってきた。
その様子を、
かわいいなー、
なんて思いながら、
僕は歩を緩めた。
すれ違いざま、
その小さな手に、
ぐしゃっと、
握り締められた、
２００アリが、
目に入った。
大きく澄んだその瞳で
彼女は僕の後方を見つめている。
あー、お菓子かなんか買うのかなー
なんて思いながら、
僕はつられて後ろを見た。
彼女が向かった先は老人だった。
その老人は先程、
路上で物乞いをしていた人だ。
杖をついていたのでよく覚えている。
ここはマダガスカル。
彼女も、
彼女の母も、
老人もまた、
マダガスカル人。
人によっては、
本を買うお金がない程貧しい国。
人によっては、
靴さえも買えない貧しい国。
彼女はその裸足の住人に、
２００アリを手渡した。
僕はその光景に、
心を打ち抜かれた。
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