――僕がマダガスカルに絶望した日の前日。
――アンタナナリヴ到着初日の夜の事。
少し硬すぎるベッドの上で、
僕はガイドブックに記載されてある病気の欄を開いた。
そこには数々の病気の種類や、注意すべき点等が書かれていた。
僕は『気になっていた病気』の名前を見つけると、熟読した。
――マラリア(説明省)。
――コレラ(説明省)。
僕の病気が上記である可能性は低い。
だが、可能性がある以上、人はよからぬ方へと想像を掻き立てる。
今思えば、
就寝前にコレラやマラリアといった、
病気に関する記事は、
見ない方がよかったのかもしれない。
これから僕の身に起こる不可解な事態は、
この事が原因で、
即ち精神的な問題で、
起こったのかもしれない。
今だにその原因は不明だが。
とにかくこの時、僕の心を恐怖という名の感情が、埋め尽くしていった。
『マラリアだと、どうしよう。』
『コレラは、死ぬ可能性もあるのかな。』
風邪は治っているのに、不安は薄れる所か増幅した。
それでもなんとか睡眠だけはとろうと、横になった。
眠れば何も考えなくて良い。
そう思ったからだ。
暫くして、前日の移動疲れもあってか、急激な眠気が襲ってきた。
――薄れゆく意識。
僕はこのままいつものように、夢の中へと入っていくつもりだった。
だが。
夢と現実の境目で、突如として恐ろしい事が起こった。
それは、いつもの眠りの感覚ではなかった。
例えるならば、
いや、
非常に例えにくいのだが、
金縛りにあっているような、
それでいて意識が遠のいていくような、
このまま眠れば、
二度と目を覚ます事が出来ないような、
そんな感覚だ!!
咄嗟に僕はやばい!!と思い、目を見開いた。
しかし。
・・・体が動かない!
・・・声が出ない!!
・・・息が出来ない!!!
・・・そして、
身体が痙攣している!!!
なんだ!!
これは!?
やばい、まじでやばい!!
僕は体の底から捻り出す様に声を出した。
『うぐぐああああああ!!・・・・カハっはあっ!!!』
その結果、なんとか意識を自分の体に戻す事が出来た。
だが次の瞬間。
自分の右耳から変な音が発せられている事に気がついた。
それは、微量な音だった。
耳の奥底から、超音波のような音が絶えず聞こえているのだ。
『・・・耳鳴り??』
初めはそう思い、すぐに治るだろうと気にも止めなかった。
そして先程発生した痙攣等の症状も、気のせいだろうと思った。
夢か何かと間違えたんだろうと。
そんな事より再び襲ってくる睡魔に身を委ねたいという思いの方が強かった。
――僕はもう一度眠ろうとした。
今度は、きちんと睡眠を取る事が出来るだろうと思っていた。
だがそんな気持ちをねじ伏せる様に、再度悪魔が牙をむいた。
眠りにつこうとしたまさにその時、またもや同じ感覚が襲ってきたのだ!!
いや、心なしか先程より強力に感じる。
『苦しい!!苦しい!!!』
心の中でそう叫びながら、なんとか意識を取り戻そうとした。
そして、一度目より大きな声を出した。
『っああああああ!!!』
・・・・!!
これは一体、なんなんだ・・・!!?
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!!!!
怖すぎる。
例えようのない恐怖が溢れていく。
病気への不安。
眠りに対する恐れ。
僕は独り、シングルルームで震えた。
そして次第に、精神的に追い詰められていった・・・。
続く。
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