首都アンタナナリヴに予定より1時間遅れの朝6時に到着した。
計算が合わないのは、アリがその後もハイスピードでドライブしたからである。
さらに補足を付け足せば、
ムルンダヴァからアンタナナリヴへの予定所要時間は、
交通状態の関係上、
逆方向から来るよりも3時間遅い18時間なのである。
という事は、アリ達は余程スピードを出していた事になる・・・。
ま、この話をすると長くなるので、番外編としてまた後日・・・。
(どないやねん!!)
さて。
首都・アンタナナリヴのバスターミナルは、相変わらず喧噪が凄い。
各方面へ出かける人々や、客引きが溢れているのだ。
早朝は特にそれが強いように感じた。
そんな風に思いながら、僕はミニバスから降り、屋根に高く積み上げられた荷物を見た。
そして、よくこれで横転しなかったもんだと、思った。
僕は苦笑しながら、荷物整理の少年から、自分のバックパックを受け取った。
そしてバックパックに、防寒対策として取り出しておいたブランケットを蔵った。
次に、信用出来そうなタクシーを探した。
本来ならば路線バスを使う所だが、
『予兆』があったので、
目当てのホテルまでタクシーで移動する事にしたのだ。
幸い、タクシーはすぐに見つかった。
バスターミナル内なので、まあ大丈夫だろうと思い、僕は乗り込んだ。
タクシーは人ごみを掻き分け、市内へ向けて出発した。
道中、タクシーのドライバーが何か話しかけてきたが、
適当に相槌を打ちながら、僕は外の景色を眺めた。
と、暫くしてある事に気づく。
どういうわけか、昨日の夜までの、あの鬱陶しかった身体のダルさがない。
熱も全くないように感じる。
風邪が・・・治った?
シートで身体をずっと温めていたからか。
それとも、アドレナリンが出まくって、完治したのか。
原因はよくわからないが、この事は僕にとっては嬉しかった。
これで最後に、アンタナナリヴで楽しむ事が出来る。
この時はそんな風に思っていた――。
――数分後。
タクシーは何事もなく、僕をムーンライトホテルへ運んでくれた。
この宿はアンタナナリヴでも比較的清潔で、
かつ安く宿泊出来る事から、
旅人の間でも人気がある。
一部屋15000アリ~だ。
とりあえず、
完全に病気が治ったともいえないし、
移動してきたばかりだったので、
僕は1日休む事にした。
そして次の日、
飼育されてはいるが、
マダガスカル固有種と触れ合えるというレミューズパークへ向かった。
今度はメナベ公園の二の舞ではないだろうという、希望を抱きながら。
宿の管理人に、レミューズパークへのミニバスが出ている場所を確認すると、
早速『歩き方』を片手に町へ繰り出した。
乗り合いタクシー等で行く方法もあったが、僕は歩いて行く事にした。
その方が、アンタナナリヴという町の日常を見る事が出来ると思ったからだ。
途中、何人ものマダガスカル人と出会った。
印象的だったのは、その内の何人かが裸足だった事だ。
彼らは物乞いではなく、一般人だ。
そういえばムルンダヴァ・ガイドのソニが、こんな事を言っていた。
『英語を勉強したいが、本を買うお金がない』と。
わずか100円の食事をした時も、
『俺には高すぎるから、ちょっと外させてくれ』と。
ソニが言った言葉と、
裸足の住人は、
僕にマダガスカルの貧しさを痛感させた。
とまあ、マダガスカルの日常に少し触れながら、
ようやく辿りついたミニバス乗り場。
(上の湖は全く乗り場とは関係ありません)
早速ミニバスのオヤジに、レミューズパークへ行きたいという事を告げた。
『レミューズパークへ行きたいんだ!!』
『●×△□Ω♪よし!!乗れ!!』
最初の方は少し聞き取れなかったが、乗れというんだから間違いない。
僕は言われるがままバスに乗り込んだ。
・・・数分後、バスは動物園らしき場所に停車した。
おかしい。
レミューズパークまでは、どう考えても30分以上かかる筈だ。
そんな疑問とは裏腹に、オヤジはゆっくりとこちらを一瞥し、徐に口を開いた。
『ここだぜ、降りろ』
『俺はレミューズパークに行きたいんだ!ここがそうなのか!?』
『何言ってんだお前。
レミューズパークへのミニバスは本数が少ないって言ったじゃないか。
だからここに案内したんだ!!』
・・・・なんだと!?
いや、どれだけ適当なんだお前ら。
レミューズパークへ行きたいと言ってるのに、
本数が少ないという理由で別の動物園へ案内するなんて。
納得がいかない僕は、近くの係員にレミューズパークへの行き方を尋ねた。
係員は、投げ捨てるようにタクシーしかないと言う。
タクシーにいくらで行けるか尋ねると、50000アリだという。
ふざけんな!!
高すぎる!!
俺はもう、マダガスカルでお金をかけようとは、微塵も思っていないんだ!!
と、ここで右往左往している僕に、係員が近づいてきた。
そしてこう、提案したのだ。
『この動物園は、入場料が10000アリだ。それに20000アリを追加すれば、
ワオキツネザルにも触れ合えるし、ピグミーネズミキツネザルも見れるぞ。
わざわざレミューズパークへ行かなくても良いじゃないか。』
その時の僕はどうかしていた・・・と思う。
30000アリがぼったくりだという事に、気づかなかったのだ。
50000アリというタクシー代に比べれば、安いと思ってしまったのだ。
係員の固有種と触れ合えるぞという言葉にどこで?という確認もせず、
それに満足してしまったのだ。
僕はレミューズパークを諦め、この公園内にて、キツネザルたちと触れ合うという選択をした。
さて、ここで少し断っておきたい。
あの時の僕は、病んでいたと思う。
だから今から話す事は、情けない話だ。
だが、その時僕が本当に思った気持ちでもある。
その事は反感を買うかもしれない。
だけど、ありのままを書きたい。
人は、自分の想像している事と違う事が起こると、落胆する。
今回の僕の場合がそうだった。
この公園内であっても、いくら飼われているキツネザルたちであっても、
こんな小屋の中で触れ合うのではなく、木々の周りで触れ合えるものだと思っていた。
それがこんな場所での出会いだ。
こんなの、日本の動物園でも出来るじゃないか!!
こんなのは、僕が望んでいたものじゃなかった!!
だから。
一緒に写真を撮っても、触れ合っても、心が動かなかった。
おまけに、これに30000アリを支払うという事実。
僕はやりきれない思いで、すぐに動物園を出た。
入場時間たった30分だ。
笑えてくる。
動物園前の坂道を一人歩くと、
これまでのマダガスカルの思い出が、一気に蘇ってきた。
いい事なんて、
何一つなかった・・・!!!
美しかったバオバブの夕日ももう、霞んでくる。
この旅で唯一、嫌な国を作ってしまったという思いが込み上げてくる。
マダガスカルが、
最悪の思い出で終わってしまう。
そう思うと、涙が出そうになった。
悔しくて、堪らなかったんだ。
全てにおいて、選択ミスを犯したという、自分の運のなさを呪った。
自分自身の情報収集の怠慢に腹が立った。
それは旅人にとっては恥以外の何者でもない。
僕は目に悔しさと、恥という名の雫を貯めながら、坂道を登った。
登りきる前に、一滴、また一滴と零れ落ちた。
俺は泣き虫だ。
そして、さらに追い討ちをかけるように、僕の身体に異変が起こっていた。
続く。
☆ランキングに参加してます☆
↓携帯電話用クリックはこちら↓
世界一周ランキング
1日1クリックお願いします。
にほんブログ村