『マダガスカルの悲劇⑦』 | 新・旅亀の世界一周冒険活劇

新・旅亀の世界一周冒険活劇

旅亀の冒険・最終章。流れる雲のようにフワフワと。明日の行き先は明日決める。そんな旅をしよう。

結局あの後、無事2時間後に出発し、
首都アンタナナリヴに予定より1時間遅れの朝6時に到着した。

計算が合わないのは、アリがその後もハイスピードでドライブしたからである。

さらに補足を付け足せば、
ムルンダヴァからアンタナナリヴへの予定所要時間は、
交通状態の関係上、
逆方向から来るよりも3時間遅い18時間なのである。

という事は、アリ達は余程スピードを出していた事になる・・・。

ま、この話をすると長くなるので、番外編としてまた後日・・・。
(どないやねん!!)






さて。

首都・アンタナナリヴのバスターミナルは、相変わらず喧噪が凄い。

各方面へ出かける人々や、客引きが溢れているのだ。

早朝は特にそれが強いように感じた。

そんな風に思いながら、僕はミニバスから降り、屋根に高く積み上げられた荷物を見た。

そして、よくこれで横転しなかったもんだと、思った。

僕は苦笑しながら、荷物整理の少年から、自分のバックパックを受け取った。

そしてバックパックに、防寒対策として取り出しておいたブランケットを蔵った。

次に、信用出来そうなタクシーを探した。

本来ならば路線バスを使う所だが、
『予兆』があったので、
目当てのホテルまでタクシーで移動する事にしたのだ。

幸い、タクシーはすぐに見つかった。

バスターミナル内なので、まあ大丈夫だろうと思い、僕は乗り込んだ。

タクシーは人ごみを掻き分け、市内へ向けて出発した。

道中、タクシーのドライバーが何か話しかけてきたが、
適当に相槌を打ちながら、僕は外の景色を眺めた。

と、暫くしてある事に気づく。

どういうわけか、昨日の夜までの、あの鬱陶しかった身体のダルさがない。

熱も全くないように感じる。

風邪が・・・治った?

シートで身体をずっと温めていたからか。

それとも、アドレナリンが出まくって、完治したのか。

原因はよくわからないが、この事は僕にとっては嬉しかった。

これで最後に、アンタナナリヴで楽しむ事が出来る。

この時はそんな風に思っていた――。

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――数分後。

タクシーは何事もなく、僕をムーンライトホテルへ運んでくれた。

この宿はアンタナナリヴでも比較的清潔で、
かつ安く宿泊出来る事から、
旅人の間でも人気がある。

一部屋15000アリ~だ。

とりあえず、
完全に病気が治ったともいえないし、
移動してきたばかりだったので、
僕は1日休む事にした。

そして次の日、
飼育されてはいるが、
マダガスカル固有種と触れ合えるというレミューズパークへ向かった。

今度はメナベ公園の二の舞ではないだろうという、希望を抱きながら。

宿の管理人に、レミューズパークへのミニバスが出ている場所を確認すると、
早速『歩き方』を片手に町へ繰り出した。

乗り合いタクシー等で行く方法もあったが、僕は歩いて行く事にした。

その方が、アンタナナリヴという町の日常を見る事が出来ると思ったからだ。

途中、何人ものマダガスカル人と出会った。

印象的だったのは、その内の何人かが裸足だった事だ。

彼らは物乞いではなく、一般人だ。

そういえばムルンダヴァ・ガイドのソニが、こんな事を言っていた。

『英語を勉強したいが、本を買うお金がない』と。

わずか100円の食事をした時も、

『俺には高すぎるから、ちょっと外させてくれ』と。

ソニが言った言葉と、
裸足の住人は、
僕にマダガスカルの貧しさを痛感させた。

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とまあ、マダガスカルの日常に少し触れながら、
ようやく辿りついたミニバス乗り場。
(上の湖は全く乗り場とは関係ありません)

早速ミニバスのオヤジに、レミューズパークへ行きたいという事を告げた。

『レミューズパークへ行きたいんだ!!』

『●×△□Ω♪よし!!乗れ!!』

最初の方は少し聞き取れなかったが、乗れというんだから間違いない。

僕は言われるがままバスに乗り込んだ。

・・・数分後、バスは動物園らしき場所に停車した。

おかしい。

レミューズパークまでは、どう考えても30分以上かかる筈だ。

そんな疑問とは裏腹に、オヤジはゆっくりとこちらを一瞥し、徐に口を開いた。

『ここだぜ、降りろ』

『俺はレミューズパークに行きたいんだ!ここがそうなのか!?』

『何言ってんだお前。
レミューズパークへのミニバスは本数が少ないって言ったじゃないか。
だからここに案内したんだ!!』

・・・・なんだと!?

いや、どれだけ適当なんだお前ら。

レミューズパークへ行きたいと言ってるのに、
本数が少ないという理由で別の動物園へ案内するなんて。

納得がいかない僕は、近くの係員にレミューズパークへの行き方を尋ねた。

係員は、投げ捨てるようにタクシーしかないと言う。

タクシーにいくらで行けるか尋ねると、50000アリだという。







ふざけんな!!

高すぎる!!

俺はもう、マダガスカルでお金をかけようとは、微塵も思っていないんだ!!

と、ここで右往左往している僕に、係員が近づいてきた。

そしてこう、提案したのだ。

『この動物園は、入場料が10000アリだ。それに20000アリを追加すれば、
ワオキツネザルにも触れ合えるし、ピグミーネズミキツネザルも見れるぞ。
わざわざレミューズパークへ行かなくても良いじゃないか。』

その時の僕はどうかしていた・・・と思う。

30000アリがぼったくりだという事に、気づかなかったのだ。

50000アリというタクシー代に比べれば、安いと思ってしまったのだ。

係員の固有種と触れ合えるぞという言葉にどこで?という確認もせず、
それに満足してしまったのだ。

僕はレミューズパークを諦め、この公園内にて、キツネザルたちと触れ合うという選択をした。

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さて、ここで少し断っておきたい。

あの時の僕は、病んでいたと思う。

だから今から話す事は、情けない話だ。

だが、その時僕が本当に思った気持ちでもある。

その事は反感を買うかもしれない。

だけど、ありのままを書きたい。

人は、自分の想像している事と違う事が起こると、落胆する。

今回の僕の場合がそうだった。

この公園内であっても、いくら飼われているキツネザルたちであっても、
こんな小屋の中で触れ合うのではなく、木々の周りで触れ合えるものだと思っていた。

それがこんな場所での出会いだ。

こんなの、日本の動物園でも出来るじゃないか!!

こんなのは、僕が望んでいたものじゃなかった!!

だから。

一緒に写真を撮っても、触れ合っても、心が動かなかった。

おまけに、これに30000アリを支払うという事実。

僕はやりきれない思いで、すぐに動物園を出た。

入場時間たった30分だ。

笑えてくる。










動物園前の坂道を一人歩くと、
これまでのマダガスカルの思い出が、一気に蘇ってきた。

いい事なんて、
何一つなかった・・・!!!


美しかったバオバブの夕日ももう、霞んでくる。

この旅で唯一、嫌な国を作ってしまったという思いが込み上げてくる。

マダガスカルが、
最悪の思い出で終わってしまう。


そう思うと、涙が出そうになった。

悔しくて、堪らなかったんだ。

全てにおいて、選択ミスを犯したという、自分の運のなさを呪った。

自分自身の情報収集の怠慢に腹が立った。

それは旅人にとっては恥以外の何者でもない。

僕は目に悔しさと、恥という名の雫を貯めながら、坂道を登った。

登りきる前に、一滴、また一滴と零れ落ちた。

俺は泣き虫だ。











そして、さらに追い討ちをかけるように、僕の身体に異変が起こっていた。

続く。


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