『マダガスカルの悲劇⑥』 | 新・旅亀の世界一周冒険活劇

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旅亀の冒険・最終章。流れる雲のようにフワフワと。明日の行き先は明日決める。そんな旅をしよう。

恐怖は唐突にやってきた。

僕をアンタナナリヴまで運んでくれるミニバスのドライバーは、アリと名乗った。

25、6歳くらいの働きざかりの青年だ。

僕達の会話は、丁度真ん中に座っているリンダと名乗るおっさんを介して行われた。

アリがフランス語しか喋れない為だ。

最もこのリンダも英語がほとんど出来ない為、3ターンほどで終了するのだが。

僕はアリに聞きたい事があったが、その事を聞きだせずにがっかりした。

アリはなぜかこの日、急いでいたのだ。

道中、アリが無理矢理ミニバスを追い抜いていく瞬間に、僕は何度も遭遇した。

カーブを曲がる時、
キュキュキュという音と共に車体が少し傾くという経験を、
何度もした。

『なぜお前はそんなに急いでいる?』

僕が聞きたかった事だった。

・・・ひょっとすれば、事故るかもしれないな。

そんな風に考えていた矢先、である。

アリがまた前方のバンを追い抜いたのだ。

やれやれまたか・・・などと悠長に考えている場合ではなかった。

今度は少し勝手が違ったのだ。

追い抜いたはいいが、後ろの車も速度を上げてきているではないか。

振り返ると、ビッタリとくっついてきている。

いや、これってもしかして・・・。

すると今度は奴らが、僕達を追い抜いた!!

こりゃ、間違いない。









カーチェイス・勃発だ。

深夜のカーチェイスは、かなり危険だ!

加えてアンタナナリヴまでのこの道は灯りがほとんどない。

運転免許証更新で裸眼ギリギリ合格ラインの僕では、
マダガスカルの闇夜の前では道の先がほとんどと言っていい程見えない。

が、どうやらアリにははるか前方まで見えているらしい。

その証拠に、人がいるのを確認して、クラクションを鳴らしている。

勿論近づくまで僕には全く見えない。

この時ばかりはアリの事を凄いと思った。

それにしても。

事故らないなどという保障は全くない。

むしろ事故る確立の方が高いのではないか。

リンダを経由して、アリにこの道路で過去どのくらい事故があったのかを聞いた。

アリは『1件だ』と答えた。

その1件は誰が起こしたんだと、さらに質問した。

アリは『俺だ』と答えた。











おまえかよッ!!


しかもリンダも乗っていたらしい。

最悪だ。

シートの下からは、よくわからない熱気がこみ上げてくるし。

僕の体は、原因不明の高熱だ。頭も痛い。

そしてアリが繰り広げるカーチェイス。







マジついてねぇえヱ。

再び、助手席を取った事を後悔した。

後ろを振り向くと、そんな事はおかまいなしに爆睡する現地人。

気楽なもんだ。

俺はもうこの所為で、
アドレナリンが出まくって、
眠気の欠片もないってーのにさ。

いっその事このアドレナリンによって、風邪も治ってくれ。

そんな風に思いながら、このままじゃ朝まで起きる羽目になりそうだと同時に思った。

僕はアリを見た。

アリはもう前しか見えていない。

ダメだ。

このままじゃ本当にやばい。

事故らなくても、体力的に相当きつい。

アリに、『速度を落とせ』と言うか・・・。

いや、興奮状態のアリにそういう事を言っても、素直に聞くかどうか・・・。

このまま朝まで我慢するしかないのか・・・。

そう思った時、アリが町のガソリンスタンドの方向へハンドルを切った。

・・・・!!

やった!!

助かった・・・!!

恐怖が終わった・・・。

僕は安堵した・・・









・・・が、すぐに異変に気づく。

バスがなかなか出発しないのだ。

痺れを切らして、僕は外に出た。

そして、さらなる不幸を呪った。











まさかの
ブロークンである。


ここまで、ついてないとは・・・。

アリに速度を落とせと言っておくべきだった・・・。

急がば回れってわけだ・・・。

どれくらい時間がかかるかわからない。

もしかしたら、出発が朝になるかもしれない。

途方もない疲労感が僕を襲ってきた。

とりあえず寝るしかないな・・・。

僕は助手席に戻った。

と、ここでふと、ある言葉が頭を過ぎった。

丁度昨日、久々にネットを開き、旅仲間のブログを見ていた時だ。

『人を信じるってなんだ?』

というぷにょみMAXさんの記事に、このように書いてあったのだ。

『予兆はあった・・・』と。

ぷにょさんは、とある場所でとある被害にあい、
その前にあった予兆が、
その被害場所へ行くなという合図だったと綴っている。

そして今回の僕のパターンも、それに類似しているのだ。

出発前のぶり返し。

ミニバスの故障。

そして、出発前日、たまたまネットを開いてぷにょさんの記事を見たという事。

・・・これは、予兆なのか??

俺に、アンタナナリブに行くなと言っているのか。

僕は悩んだ。

本当に悩んだ。

この場所に留まるか・・・

かと言って、どこだかわからないこの場所で1泊するなんて、とんでもない。















『行こう』

未知の恐怖を振り払い、僕は前へ進む事を決心した。














だが。

今思うと、この選択は間違いだったのかもしれない。

そもそも、ムルンダヴァでゆっくりと療養するという事が、
正しい選択だったのかもしれない。

アンタナナリヴで、
過去最大の試練が、僕を待っていた。


つづく。





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