そんなの日本語じゃない -3ページ目

フリッツ (fritz: 故障。通常はon the fritzで壊れている状態を示す)

今日のMerriam Websterの単語 です。

電化製品、機械、そして最近ではウェブサイトやサービスが機能していない状態を表すときに使われる表現です。ちょうどいい日本語が見当たらないので、カタカナとして使っていく方向で考えてみましょう。

とりあえず、今日現在、この用法でフリッツというカタカナが使われている例は見つけられませんでした。

The television is on the fritz.

これは、単純に、

テレビ、壊れてるよ。

という日本語を割り当てればいいのですが、もうちょっと言葉遊びを加えたいところです。

テレビ、お陀仏だよ。

なんていう表現があるので、これではフリッツというカタカナを導入する必要がありません。

ところが、このon the fritz、最近ではウェブ関係が止まっているとき(落ちている、って言いますよね)に使われることが多くなりました。

Paypal is on the fritz.
Hotmail is on the fritz.

これらに対応する日本語はどういうものがあるのでしょう。

ペイパルに障害。
ホットメールに不具合。

なんとも味気ありません。しかし、

ホットメール、お陀仏に。

というのは無理がありすぎます。そして、お陀仏という表現には、もう元には戻らないという意味合いがあるように思います。そこで、

ヤフー、一時的にフリッツ状態に。
ちょっと、MSN、フリッツになっているんじゃない?

というのはどうでしょう。障害、不具合よりも、表情豊かな表現ではないでしょうか。バグやハングがカタカナとして通用しているのですから、(特にネット関係では)それほどの飛躍はないように思います。

公式に使う前に、お手元の機械が故障したとき、

なんだよ、フリッツだよ。

とつぶやく癖をつけると、抵抗が減っていくのではないでしょうか。

野放図(のほうず:ずうずうしいさま、際限のないさま、しまりがないさま)

朝日の社説 からです。


(郵政)民営化することで資金がもっと効率的に運用される環境をつくり、同時に政府の野放図な財政運営を改めさせる。


日常の会話、あるいは文書作成において、野放しという表現は自然に使いますが、私は野放図とは言いません。いかにも朝日新聞という香り漂う言葉なんですが、どう使っていくべきなのか考えてみましょう。


比較的公式な文章での用法を見て見ます。


道路特定財源が、 野放図な道路整備等を招いている、とのことです。


白鵬の相撲は小さいので 野放図になれ、と提言しています。


人間の行動に法的制限を加えず 野放図にしておけば、取り返しのつかない変動や汚染が起こるとのことです。


ものごとのだらしなさを指摘するために使われるのが主で、たまに型破であることをポジティブに表現するために使われることがある、という感じです。前者と後者の比率は9:1程度です。


次に個人的なブログでの用法を見て見ます。


壊れたバイクのオーナー(ご自身)を 野放図と表現しています。


日本で暴力ゲームが垂れ流されている様を 野放図と表現しています。


(創造的な)ご自身の脳みそを 野放図と表現しています。


ということで、物事の緩い様子を、改善要求を暗示しつつ攻撃的に表現する用法が最適のようです。糾弾系とでもいうのでしょうか。また、自分に対して使うことで親近感を出す効果もあるようです。


例文としては、


このようなブログを野放図に書かせておいていいのだろうか。

子供たちに野放図な食生活の改善を目指す。

相変わらず野放図な毎日を送っています。


といった感じでしょうか。皮肉な話ですが、インターネット、ブログ等を適切に表せる言葉なのかもしれません。

端緒 (たんしょ:事のはじまり)

再び日経の社説 からです。

参院では法案再修正論もあるが、改革の内容をさらに後退させるような修正を念頭に置いており賛成できない。現法案を可決し、郵政改革の端緒を早く開くよう望みたい。

端緒を開くは珍しい表現ではありませんが、自分では使わないと思い、取り上げてみました。何かを切り開いて、物事を開始する様をあらわすものです。いくつか例を挙げておくと、

カスタマーリレーションのグループリーダーは、エンドユーザ啓蒙への 端緒を開きます。

マイクロソフトとノキアの合意は、共同努力端緒を開きました。

インテルの製品群は、SOE環境に至る道端緒を開く位置づけでした。

IT関係と研究開発関係で好んで使われているようです。

そして、受ける動詞が開く、ではない場合、あるいは端緒だけで独立に使われている例も多く見られます。

6カ国協議の成否 では、端緒を付けたいという表現が使われています。

 悪党 スペンサー・シリーズ では、とある殺人事件を扱った当時の検事が「あのときの事件は...ようにも感じる」ということを端緒とし、スペンサーは依頼を受けます。

 Google Maps日本版の端緒  と、端的な使いかたもあります。

変わったところでは、

端緒な例が 、という表現が見られます。障害の受容が話題ですので、初期の例といった意味合いでしょうか。

どうでしょう。ここまで繰り返し見させられたら、違和感なくなりませんか。深く考えることなくニュアンスが伝わる言葉なので、積極的に使用して問題ないと考えます。ただし、日常会話上は違和感があるので、ブログ等のメディアには適していないのかもしれません。

最後に白々しい例文を。

それが私の語彙学習の端緒だった。
豊かな日本語を取得する努力の端緒を開いたのだ。

寒々しい余韻が残ったようですが、これでみなさんの記憶に残れば例文としては成功ということで。

フェイティディック (fatidic: 予言的な。運命を予測するかのような)

wordsmith.org の本日の単語です。手元の和英辞書にも載っていないし、goo.ne.jpの英和辞書にもエントリーがありません。ということは、新カタカナ語の有力候補と考えることも出来ます。

今日現在、フェイティディックもファティディックもgoogleでヒットしません。

どう使えばいいんでしょうか。まずは翻訳で考えてみましょう。

カナダでの銃所有に関するいざこざに関する記事 の一部です。

On the afternoon of April 20, 2005, more than two-and-a-half years after the fatidic night, and the day before the trial was scheduled, the Crown withdrew the charge against Laflamme.

適当に訳すと、

あの運命的な夜から二年半以上経った2005年4月20日の午後、裁判の前日に、クラウンはラフレイムに対する告訴を取り下げた。

今ひとつ意味が伝え切れていません。

あの運命を予言するかのような夜から二年半以上経った...

まどろっこしくていけません。ではカタカナを使っていましょう。

あのフェイティディックな夜から二年半以上経過した....

二番目の訳文よりは雰囲気が伝えられているような気がしてきます。

もうひとつ。

ネットスケープの終りを語ったブログ からです。

When Netscape made the fatidic decision of opening the source code of its flagship product and later of rewriting it from the scrath it became clear that an era had ended.

適当に訳すと、

ネットスケープがその看板商品をオープンソース化し、さらにゼロから書きなおすという運命的な決断を下したとき、ひとつの時代が終わったのだった。

カタカナを多用すると、

....さらにスクラッチから作り直すというフェイティディックなディシジョンを下したとき...

と、いんちきコンサルタントのようになってしましますが、この中でフェイティディックが一番醜いカタカナではないような気がしませんか。

直接日本語に取り入れると、意味不明な似非文学的な匂いを出せそうです。

- 今年の夏は僕にとってフェイティディックなものとなった。
- この子犬との出会いは、僕らにとってフェイティディックな意味を含んでいた。

結構いいじゃないですか。文学に長けた人に読んでもらって、感想を聞いてみたいものです。すっぱりと、そんな言葉はない、と切られるだけでしょうけど。

底流(ていりゅう:表面にはあらわれず、物事の深部に動いている勢い)

朝日新聞のコラム からです。

中国は被害の規模を大きく見積もりがちだ。一方の日本では、疑問点ばかり突いて、あたかも事件そのものを否定するかの主張も聞かれる。こうした不毛の行き違いが靖国問題の底流にもありはしないか。

これも間違いようがない言葉ですが、私は今の今までニュアンスを誤解していたようです。底流とは、土台の意味よりも、表面に現れていないことに重みがおかれているようです。視覚的にとらえると、水面下のさらに下、ということになるのでしょうか。

使われ方を見ましょう。

郵政民営化の空くの元凶底流に隠れています。

東北の灯台合格者ランキングでも 底流では変化の兆しが芽吹いています。

そして、原子力発電にたいする潜在的不安が 市場の底流にあるかもしれません。

見えないところで何かが起こっている、という予感を鮮明に表現できています。カラフルな言葉なため、同じ文の中に表情の豊かな形容詞、副詞が使われたり、ダイナミックな動詞が使われたりすることも多いようです。

ここで根底という言葉とどう違うのだろう、という疑問が出てきます。根底の意味は、物事の土台、なので微妙に使い分けられるのですが、根底に流れる、という表現も良く目にします。

差別意識は無意識のうちに 根底に流れるものです。

普遍的な存在は変化の中で 根底を流れます。

日本、日本人という文化は 根底に流れるものです。

どうでしょう。微妙ながら、確実に使い分けられています。これらの文では、表層化していないことよりも、大きな根幹であることが重視されています。

私としては、この二つの使い分けは意識せずに、"根底に流れる"しか使ってきていなかったように思います。

深部に位置することに意味があり、かつ本質的に重要な存在あるものは、ちょっと気概を込めて、底流にある、と表現していきましょう。

なお、もう少し軽い、あるいは姑息さをあらわしたいときに、水面下、がぴったりのようです。

退路を断つ(たいろをたつ:逃げ道をなくすこと)

毎日新聞のコラム からです。

小泉は早々に、党員の意向などお構いなく、 
「否決は不信任とみなす」
と言い切って、退路を断った。

という表現があります。意味は明快で、誤解のしようもありません。そして、特別珍しい言い回しでもありません。

しかし、少なくとも私はこの表現を使ったことはありません。戦況を連想させる表現なので、どうしても仰々しさを伴ってしまうためです。私には、それほどのものを書く機会はないのです。

では、どういった局面が退路を断つのに値するのでしょうか。少し調べてみました。

自民党野中元幹事長は退路を断つの安売り をしていたようです。引用がなくてもなんとなく想像がつきます。

阪神星野元監督は、退路を断って歴史に残る総力戦 を戦いました。退路を断った男、とも書かれています。

スカイマークエアラインズの西久保社長は、退路を断って 社長に就任されたそうです。

主に、自分から退路を断ったとして、男らしさや潔さを演出するために使われています。戦いに挑むようなイメージが喚起されるからでしょう。経営、スポーツ、政治の3分野で好まれて使われているのも理解できます。ちなみに、論理的には後戻りが出来る場合でも、決意があれば退路を断ったと言ってしまっているようです。

また、日記上で自分の決意を表す局面でも、頻繁に使われています。例えば、上司に資格受験の意思を伝えたあとの気分 も、 Webサイトの公開を宣言すること も、イベント参加のメールを送ること も、退路を断つことになります。

というわけで、自分の強い意志を表現する場合、あるいは強い意志を持っていると思われている他人の行動を表現する場合には、スパイスとして、退路を断って、と追加してよさそうです。

なお、(戦況ではなく)本来の意味に沿った用法も見られますが、むしろ稀な使われ方になってしまっています。

東京大空襲では、住民を猛火の中に閉じ込めて 退路を断った、とのことです。文字通りの意味です。

ここの浦島太郎は カメの海への退路を断ったそうです。同様の用法です

カラムニー(calumny: 中傷。他人の評判を傷つけるための、故意的に誤った情報)

Merriam-Webster Online の今日の単語です。直接日本語となる言葉がないので、カタカナで使ってもよさそうな感があるのですが、google検索では実例を見つけることは出来ませんでした(*1)。

カタカナとして使えるかどうか、考えてみましょう。

まずは翻訳の一部として使えるかどうか。

ABC NewsのHPに関する記事 の一部ですが、

In other words, if HP is to survive, its first step must be to restore the HP Way. To do that, it must strip away both the myth and the calumny that now encrust the HP Way and see it as it really was.

適当に訳すと、

言い換えると、HPが生き残るためには、HP流("HP Way")を復活させことが不可欠だ。そのためには、HP流を翳らせている作り話や中傷を排除し、本来の姿を見つめなおさなければならない。

カラムニーというカタカナを導入すると、

言い換えると、HPが生き残るためには、HP流("HP Way")を復活させことが不可欠だ。そのためには、HP流を翳らせている作り話やカラムニーを排除し、本来の姿を見つめなおさなければならない。

なんとなく、読み流せてしまえませんか?

嫌な話ですが、ネットの普及が加速するにつれ、誹謗中傷という日本語が多く聞かれるようになりました。その多くの場合、誹謗中傷よりもcalumnyの方が実は正確に言いたいことを表現できる感じがします。いっそのこと、カタカナで表現してみたらどうなるでしょうか。

カラムニー発言は削除してください。
カラムニーHPを作成されて困っています。
私に対するカラムニー書き込みがありました。

いかがなもんでしょうか。今のところ誰も理解してくれないでしょうが、将来使われだす可能性はないわけではなりません。今のうちに使ってみるのはいかがでしょうか?

(*1)カラムニー、カルムニー、コラムニー、コルムニーで試してみました。網羅したわけではありません。

甚大な (じんだいな:程度が極めて大きいさま)

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20050723MS3M2300R23072005.html

日経の社説ですが、東京でロンドンのような事件が起これば被害が甚大になる、とのことです。簡単に読み流せてしまいそうですが、甚大ってどの程度の大きさなんでしょう。そして自分で文章を書くときに、どの基準で甚大って使うべきなんでしょうか。言葉の用法は単純なんですが、責任を持って使うことは難しいのでは、ということで取り上げてみました。

事実上、被害に対してしか使われていないようなので、どの程度の被害なのかだけがポイントになります。いくつか例を挙げます。

http://www.jlp.net/letter/011025c.html


によると、狂牛病の被害は甚大だそうです。経済的なインパクトがあれば、甚大ということです。

http://www.code-jp.org/wv/MT/archives/000137.html


スマトラ沖地震での被害も甚大だそうです。最大級の災害にも使われているので、程度の上限はなさそうです。

http://web.pref.hyogo.jp/tajima/hamasaka_d/kintoku_page/03.html

集中豪雨の被害も甚大だったようです。ここでは死者一名ということになっています。十分にニュースで取り上げられる程度です。

http://blog.nicelife.jp/archives/2005/04/post_241.html

トレンドマクロの障害による被害も甚大だったそうです。確かに大きな話題になりました。

傾向としては、経済的な打撃があった天災、社会的に話題になった人災の被害は甚大である、といえそうです。

ここで、国家間等の争いにおいては、別の意味合いがありそうです。

http://toron.pepper.jp/jp/kr/textbook/zenbun1.html


韓国の歴史教科書は、受けた被害は甚大に書く、という表現があります。同様に、

http://plaza.rakuten.co.jp/kouzen/diary/200507140000/


大日本帝国がアジアに甚大な被害をもたらしたことがヒロシマ・ナガサキに帰結する、という表現があります。

といった感じで、復讐を考える程度の被害が甚大だ、という様子です。

***

総合すると、客観的な基準はなく、感情的に"極めて大きな"被害であるときに使われるようです。つまり、事実を伝える機能はなくても、それにより当事者の感情を代弁出来る、という機能がありそうです。

機会があったら使ってみましょう。

***

余談ですが、そうなるとこの日経の社説の一文は説得力に欠けることになります。東京などで起こったら被害はロンドン以上?以下? 勢いとしては、ロンドン以上と言いたかったが、その根拠がないため、甚大という言葉でお茶を濁したように見えてしまいます。どんなもんでしょうね。

進行方法はこんな感じで行きます。

これは無理やり語彙を増やしていこう、という企画です。

毎日の生活のなかで、知らない言葉、あるいは知っているつもりだけどよく分かっていない言葉って、結構頻繁に出会うものですよね。しかし、致命的に意味が分からない場合を除いては、辞書を引くこともなく、そのままにしてしまいがちです。

それはそれでいいんですが、それではいつまでたっても日本語の語彙は増えません。理解する語彙が増えなければ、使えるレパートリーも広がりません。

そういうわけで、このブログを通じて、今までは使わなかった単語や表現を無理やり使っていきましょう。正しい用法かどうかは、あまり重要ではありません。題目の単語・表現を使って文を作っていけばそれでいいのです。

文を作るだけではなく、それっぽい使われ方をされているページのリンクも集めていきたいと思います。

まあ、どうなることか、とりあえず始めてみましょう。