1 ①について 

 1 本件自己株式の取得の効力について

  (1) 招集手続きについて

    甲社は,本件自己株式の取得にあたって,株主総会の決議(会社法11513号,1561)を経るにあたって,甲社株主に定時株主総会の招集通知(1581項,1571)を発している(資料①)

    もっとも,甲社は,B以外の甲社の株主に対し,第1号議案の「取得する相手方」の株主に自己をも加えたものを株主総会の議案とすることを請求できる旨を通知しなかった(1601項参照)。これは,B以外の株主の株式買取請求の機会(16023)を奪うものであって,重大な法令違反が存在している。

  (2) 株主総会決議について

    本件では,議長のCは,Bが賛成したことを理由に第1号議案が賛成されたものと判断している。

    もっとも,Bは,自己株式取得の相手方たる「特定の株主」であり,Bには議決権が認められていない(1604)。そして,Bは甲社株式の25%を有する株主であるから,Bの議決権数を除けば,出席株主の議決権の3分の2を超えるのは困難である。即ち,Cは特別決議の充足(30922)がないにもかかわらず,可決と判断したことになる。

    なお,Bは自己株式取得の相手方でもある以上,個人的利害関係を有する「特別の利害関係を有する者」(83113号参照)にも該当する。即ち,Bは決議に公正を保つことができない者であるにもかかわらず,CBの議決権を認めたということになる。

  (3) 以上の事実に鑑みると,退社制度の存在しない株式会社において,投下資本の回収手段たる株式譲渡の機会を奪うという重大な法令違反があり,可決されていないにもかかわらず可決とみなした株主総会決議における重大な法令違反が存在している。これは,違反の重大性に鑑みて,法的安定性の見地から無効と解するべきである。

    よって,本件自己株式取得の効力は生じない。

 2 甲社とBとの間の法律関係について

   甲社の本件自己株式取得の効力が認められない以上,Bは甲社の株主のままである。それゆえ,Bは甲社に対し,株主たる地位の確認請求をすることができる。

   他方,甲社は,Bに対して払った25億円の不当利得返還請求をすることができる。

2 ②について

 1 まず,株主DCに対し,処分価格を市場価格の8割とした根拠を明らかにするよう質問したのに対して,Cは説明を拒否している。

   もっとも,本件においては,市場価格の8割とした点ついて明らかにしても,甲社や他の者の権利を侵害するものではない(会社法施行規則712)

   そうだとすれば,Cは正当な理由がないのに説明を拒否したことになり(314条違反),株主総会決議の方法に重大な法令違反がある(83111号参照)

 2 次に,乙社は,本件自己株式処分の相手方である。それゆえ,乙社は個人的な利害関係を有しているにもかかわらず,Cは乙社の賛成を認めて,出席した株主の議決権の3分の2をかろうじて上回ると判断している。

   即ち,乙社の賛成を認めたことで,「著しく不当な決議」(83113)がなされたことになるという重大な瑕疵がある。

 3 また,処分価格が市場価格の8割とする点については,確かに,処分を確実にするには市場価格より低くする必要性があり,また,株価は上下する性質を有することから経営の専門家たる取締役の判断にゆだねることが適切とも思える。

   もっとも,取締役の経営判断といっても,市場価格の10%程度にとどめられるべきであり,市場価格より20%低い価格にすることは合理的判断を逸脱するもので,処分の相手方との関係では無効と解する。

   本件では,甲社の乙社に対する本件自己株式処分の対価は,市場価格より20%低い8割の価格でなされているため無効となる。

 4 以上の各瑕疵の重大性に鑑みれば,取引の安全を重視する必要性はないため,本件自己株式処分の効力は無効となる。

3 ③について

 1 無効な自己株式取得について

   Cは、取締役即ち「役員」(3291項参照)であるから,善管注意義務(330条,民法644)及び,忠実義務(会社法355)を負う。そして,忠実義務の一内容として法令遵守はCの「任務」(4231)に含まれることになる。

   そうであるにもかかわらず,Cは法令に反する手続きで本件自己株式の取得を実行している。これは,Cの「任務」たる法令遵守に反する行為である。

   よって,Cには任務懈怠が認められ,無効な本件自己株式取得についてCは甲社に任務懈怠責任(4231)を負う。

 2 本件自己株式処分について

  (1) 前述の通り,CDに対して,本件自己株式の処分価格が市場価格の80%と定めた点について説明を拒絶している。

    これも,Cが負う「任務」たる説明義務(314)に反するものであって,任務懈怠が認められる。

  (2) また,処分価格が市場価格の80%である点については,前述の通りCの合理的判断を逸脱するものである。

    即ち,市場価格の80%より高い価格で処分すべきであったのにしない点で,甲社に損害が生じている。かかる損害は,上述のCの説明義務が尽くされていない結果,充実した会議ができないまま可決とされたことも影響している。

  (3) そうだとすれば,Cの説明義務違反と,市場価格の80%で処分したという任務懈怠により,甲社に損害が生じたことになる。

    よって,Cは甲社に対し,本件自己株式処分について任務懈怠責任(4231)を負う。

以上










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【追記】

条文を探せたのはOK。でも、財源規制に関する部分は全くできていない。

1P11行目の参照条文は意味不明。なぜこんな挿入の仕方をしてしまったのか?

自己株式取得の瑕疵と、総会決議に関する瑕疵との関係は触れていない。確かに、構成中少し疑問に思ったが、どスルーしてしまった。そもそも違う手続なのだから、その点は検討するべき点だった。


同時履行の問題に関しては、あまり知りません・・・。百選の解説の中でそういうのがあったような???


それと、要らない言葉が多すぎる。無駄に言葉を増やしていることで意味不明になっている。違反の重大性→無効の流れは理解できる。でも、法的安定性→無効となるのか?安定させるのであれば有効でも???要らない言葉を加える結果ですね。


経営判断原則は趣旨には書いてない。

自己株式取得の議論との整合性は考えていない。


財源規制の議論が抜けたため、責任の話も内容の薄いものとなっている。無理矢理記述を膨らませた感じ。


※会社法は最近論理的な思考を強く問うている気がする。基本的知識を正確にしつつ。問題を解きまくって、関連するもの相互間の関係を意識した答案をかけるよう訓練する必要あり。










1 設問1

 1 小問(1)について

(1) CBに対して,民法703条に基づいて,2500万円の不当利得返還請求を主張する。以下説明する。

    まず,Cによる甲建物の内装工事により,甲建物の市場価値が1億円から2億円となった。それゆえ,Bには1億円の「利益」が認められる。

    次に,Cは,Aから5000万円で工事を請け負ったにもかかわらず,2500万円の支払いを受けていないため,Cには2500万円の「損失」がある。

    また,Bの「利益」は,Cの工事によるものであるから,「利益」と「損失」との間に因果関係もある。

    そして,BC間には契約関係がないため,Bの「利益」は,「法律上の原因」がない。

    以上から,CBに対し,上記請求をする。

  (2) これに対してBは,AB間の甲建物の賃貸借契約(601)において,内装工事費用は全てA負担となっていたこと,及び更新された内装の所有権はBに帰属するとされていたことから,Bの「利益」には「法律上の原因」があると反論する。

  (3) もっとも,「法律上の原因」がないかどうかは,建物所有者が対価関係なしに利益を受けたかどうかで判断するべきである。

    本件では,AB間の賃貸借契約において賃料が月額200万円と定められている。本件甲建物を改修した状態での賃料の相場は400万円であり,AB間の賃料はそれより低いものの,その理由はAが内装工事費用を負担するからである。そうだとすれば,Bとしては対価関係なしに利益を受けていると言える。

    世って,Bには「法律上の原因」がないため,Cの請求が認められる。

 2 小問(2)

  (1) CFに対して,事務管理(697)に基づく,有益費返還請求(702)として2500万円を請求する。なぜなら,CFとの間で契約関係にはなく,また,内装工事は甲建物にとって有益なものだからである。

  (2) これに対しFは,CAとの請負契約(632)に基づいて内装工事をしたのであり,Cは契約上の「義務」に基づいて内装工事をしたのであり,事務管理自体が成立しないと反論し,私も同意見である。

2 設問2

 1 法的根拠について

  (1) FGに対し,平成2291日に,FAに対する平成231月分から同年12月分までの2400万円の賃料債権を譲渡している(将来債権譲渡)。そして,本件債権売買契約の前に,FAからの説明により,早晩Aが転借人を見つけてAによる賃料支払いも可能になるだろうと考えていた。

    そうだとすれば,Fが本件債権売買契約をしたのは,Aが賃料を払う見込みがあるからであり,Aが賃料を支払う資力を有することを前提に,FG間で本件債権売買契約を締結したとするのが当事者の合理的意思に合致する。

    それゆえ,Fは,平成221月から同年12月分までのAの賃料支払いの資力を担保する(5692)という債務を負っていたことになる。

  (2) もっとも,その後Aは無資力となり事実上の倒産状態になっている。また,今後もAは賃料支払いの見込みが全くなくなっている。

    それゆえ,GAに賃料請求しようにも,Aには支払う資力がなく,Fの前述の債務には履行不能となっている。

  (3) そこで,Gは,履行不能に基づく解除を主張する(543)

 2 解除の要件について

  (1) まず,Aには支払う資力がない以上,前述のFの債務は履行不能となっている。

  (2) 次に,Fの帰責事由については,確かにFA間において甲建物の賃貸借契約が合意解除されていることから,Aが賃料を支払うことができなくなったのは,Fの帰責事由(543条ただし書き)によるものとも思える。

    もっとも,Aが資力を喪失したのは,Aの事実上の倒産というAにかかわる事情に基づくものであって,Fに帰責事由は認められない。

  (3) よって,解除の各要件は充足されない。

3 設問3

 1 小問(1)について

  (1) Fに対する請求について

   ア HFに対し,7171項ただし書きに基づいて損害賠償を請求する。なぜなら,甲建物内のエレベーターの所有権はFにあり,Fは土地工作物の所有者として無過失責任を負うからである。

   イ これに対してFは,Hの怪我はDの手抜き工事によるものとして,まずDに請求するべきと反論することが考えられる。

   ウ もっとも,7171項ただし書きは,占有者が第一に責任を負わなければならない規定ではないため,所有者たるFHの損害を賠償しなければならない。

  (2) Dに対する請求について

   ア 次に,HDに対し,不法行為(709)に基づく損害賠償請求をする。

   イ これに対し,Dはエレベーターを利用する者の身体の安全にまで注意する義務はないとして,「過失」がないと反論することが考えられる。

   ウ もっとも,Dはエレベーターの設置者である以上,契約関係にない者との間でも,工作物の基本的な安全性が欠けることのないよう配慮すべき義務を負っていると考える。

     そうだとすれば,Dがエレベーターのボルトを十分に締めないことは,エレベーターの基本的な安全性を欠けることのないよう配慮すべき義務に反するものである。

     よって,Dには「過失」があり,Hの請求が認められる。

 2 小問(2)について

  (1) Hへの賠償額は減額されるべきではないと考える。以下説明する。

  (2)ア 被害者に過失があれば,7222項により賠償額が減額されることがある。この趣旨は,損害の公平な分担を図るものである。

     そうだとすれば,被害者の身体機能の状態が疾患にあたる場合には,損害の公平な分担に鑑みて,被害者の身体機能の状態を斟酌して賠償額を定めると解する。

   イ 本件では,確かに,Hは高齢で身体機能が低下しているにもかかわらず,毎日妻が入院する病院と自宅とを往復し,また徹夜で妻に付き添っていたため,Hにはかなりの疲労が蓄積されていた。そうだとすれば,Hの身体機能の低下と疲労が重なることにより,Hには疾患と同様の状態が生じていたとも思える。

     もっとも,Hは医師から,身体機能の低下は疾患ではないと診断されていた。また,妻の入院する病院に見舞いに行くことは,日常生活上あり得る状況なので,疾患の判断において重視すべき事情ではない。さらに,エレベーターが異常な作動をすることは,日常生活で起こり難いことなので,Hの怪我が疲労も原因となっているとしても,エレベーターの手抜き工事によることが決定的な原因である。

     そうだとすれば,Hの身体機能の低下も疲労の蓄積も疾患にはあたらない。

     よって,前述の結論の通りとなる。

以上








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【追記】

設問1(1)

受益の捉え方が雑。また、因果関係のあてはめない。法律上の原因がないことの当てはめができてない。


設問1(2)

424、423に気付けない点でサヨナラ・・・。


設問2

基本から思考していない結果です。本来的義務とそれ以外を、基本から思考できれば解けた問題。そもそも、債務と担保を理解していないことも判明されている。


設問3

717要件検討なし。記述内容も、非論理的。直接占有者たるAから考えたほうが良かったのでは?反論の内容も、占有者たるAに請求するべきとは言っていない(「D」と言ってしまっている)ため、内容がずれている。

Dの検討はまぁまぁ。ただし、理由がない。

賠償額の話は、あてはめが中途半端だが、みんなそう変わらないと思う。


※民事系に関しては、学習の仕方に問題があった。科目の体系は自分の中に構築されていない。だから、要件の検討、基本からの思考が求められる問題に、素直に答えられなくなっている。まずは、一つ一つ整理していかなければ、答案は変わっていくことはないでしょう。









1 設問1

 1 X1及びX2は,国土交通大臣がAに対して行った本件許可の取消訴訟を提起しているところ,X1及びX2は本件許可の名宛人ではないため,行政事件訴訟法(以下、省略する。)92項により,原告適格が認められるか検討する。

 2 この点,92項の「法律上の利益」を有する者とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。

   そして,当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合にも,法律上保護された利益にあたると解する。

   また,法律上保護された利益の判断にあたっては,92項の考慮要素を勘案するべきである。

 3(1) 法の規定について

    法の趣旨は,海に囲まれたわが国の発展に資すること,公益の増進を目的とする事業の振興に資すること,及び地方財政の改善を図ることにある(1)

    かかる目的を達するために,競争の用に供するモーターボート競走場を設置するには,国土交通大臣の許可が必要となっている(41)。また,場外発売場を設置するにあたっても許可制が採られている(51)。このように,単に発売場を設置するにあたっても許可制が採られていることは,法の目的には周辺環境への影響を考慮しているものと解される。

    そして,国土交通大臣は,競争場内又は場外発売場内の秩序維持や,法律の施行を確保するため必要があるとみとめるときは,必要な命令ができる旨定められ(57),これも周辺環境への配慮がうかがわれる。

    また,法に違反したり,命令に従わない場合には,業務の停止(582)や,許可の取消し(26項,59)が定められ,法の目的達成のための実効性確保の規定が存在している。

    以上のような法の規定は,法1条の趣旨にかかわらず,周辺環境への一定の配慮も目的として含まれていると解される。

  (2) 規則の規定について

    規則111項では,許可申請書に場外発売場の構造などの内容に関する事項を記載することが求められている。また,場外発売場付近の見取図の添付も要請されており,特に1000メートルの区域内にある文教施設については,位置や名称の明記まで必要となっている(規則112)

    さらに,法52項の基準は,規則1211号により文教上著しい支障をきたすおそれのない場所であることとなっている。

    このように,単に建物の構造のみならず,文教施設などの周辺環境に配慮する規定となっているのは,ほうと同一の目的に基づくものと解される。

  (3) 関係通達について

    場外発売場の位置,構造及び設備の基準の運用についての1(1)①では,規則1211号の「著しい支障」の判断にあたって,文教施設から適当な距離があるかが一つの基準となっている。これは,規則112項において1000メートルの区域内に存在する文教施設の名称が求められていることに鑑みて,1000メートル以内の区域は適切な区域であるとは言い切れない距離と考えられる。

    また,1(1)③では,「文教施設」の内容が書かれているところ,大学院は含まれていない。これは,いまだ判断能力が十分とは言い難い学生を保護するために,健全な学習環境を整備する点に重きを置いているものと考えられる。

  (4) 以上の各定めの内容に鑑みれば,各関連法規は周辺住民や学生の生活や学習の平穏をも個別的利益として保護しており,一般的公益に吸収解消されていない。それゆえ,X2には「法律上の利益」が認められ,原告適格がある。

    他方,学校法人たるX1については,法科大学院が,各関連規定により個別的利益として保護されているものとは解されないため,X1には「法律上の利益」が認められず,原告適格はない。

2 設問2(1)

 1 差止め訴訟(37条の4)について

   Aとしては,取消措置の差止めの訴え(37条の4)を提起することが考えられる。

   かかる訴訟が認められれば,Aが取消措置を受けるおそれがなくなることから,実効的な訴えではある。

   もっとも,訴訟要件に「重大な損害を生ずるおそれ」が求められるところ,Aは本件施設の工事にいまだ着手していない。そうだとすれば,Aが取消措置を受けたとしても特別な費用を支出したわけではないため,「重大な損害」が認められない可能性がある。

   よって,適法とされる見込みが低いため,差止め訴訟は提起するべきではない。

 2 公法上の当事者訴訟(4条後段)について

   Aは,取消措置を受ける地位にないことの確認を求める公法上の当事者訴訟を提起することが考えられる。

   確かに,確認を求めるだけであるから,差止め訴訟と比べて実効性が低いかもしれないものの,訴えが認められればその後国土交通大臣が取消措置をすることは違法となるため,一定の実効性が認められる。

   また,公法上の当事者訴訟が認められるには,確認の利益を要するところ,現に国土交通大臣が取消措置をする姿勢を見せ,他方Aは従うつもりがない以上,確認の利益がある。

   よって,Aは,取消措置を受ける地位にないことの確認を求める公法上の当事者訴訟を提起するべきである。

3 設問2(2)

 1 関係する法令の定め,及び通達について

   本件の法や規則においては,地元の同意は許可の要件とはなっていない。これに対して,資料3の関係通達では自治会の同意が定められている。

   そもそも通達は,行政組織の内部において機能するものであり,国民の権利義務に直接影響しないものである。そうだとすれば,国土交通大臣は通達に基づく措置ができないとも思われるが,当該通達が法の正しい解釈に合致するものであれば,適法となる余地がある。

   もっとも,法及び規則は,専ら建物の構造などを基準に許可要件を定めており,自治会の同意を要求することは法の正しい解釈に合致するものではない。

   よって,条文に定められた基準以外の理由で許可を拒否することは違法となりうる。

 2 行政手法の意義と限界について

  (1) 自治会の同意を要求する行政手法は,前述通り許可の要件ではない以上,相手方の任意の協力によってのみ実現される行政指導(行政手続法321)にあたるものである。それゆえ,相手方を強制的に従わせるような措置を示すことは行政手続法上違法となる(同法34条参照)

    したがって,Aが従う意思がないにもかかわらず,取消措置をすることは違法である。

  (2) もっとも,本件では,一度許可をした後で,許可を取り消す処分が認められるのであれば,国土交通大臣の取消措置は適法とも思えるため,以下検討する。

    この点,処分には公定力があり,取消訴訟で取り消されるまでは処分の効力は存続する。例外的に公定力を判決以外で覆すには,処分当時から瑕疵があって処分を撤回する場合に限られる。

    本件では,そもそも許可に自治会の同意は必要なく,許可時点において瑕疵は存在しない。それゆえ,国土交通大臣は許可の取り消しをすることはできない。

 3 以上により取消措置は,違法となる。

4 設問3

 1 事業者に対して実効性を持つ規定について

   法律に違反したり,命令に従わない場合に,許可の取消や,罰則を設けることが考えられる。

   但し,実効性を重視するあまり,罰則の内容が重くなってしまうと比例原則に反するおそれがある点は問題となるため,注意しなければならない。

 2 住民及び事業者の利害を適切に調整する規定について

  (1) まず,許可の前に事前に周辺住民の同意を要求する規定を置くことが考えられる。これにより,利害関係が適切に調整されるからである。

    但し,同意の数が高い基準となってしまうと,事実上許可を認めない制度となるおそれがあるため,どの程度の数の同意にするかは問題となる。

  (2) 次に,公聴会(行政手続法10条参照)の設置が考えられる。中立的な立場の者の意見を聴くことで,公正な許可を期待できるからである。

    但し,公聴会の構成員が一方の利益を重視するような者では公正を達成できないため,構成員の編成には注意するべきである。

以上




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【追記】

設問1

規範はOK。あてはめ死亡。条文あげて評価しようとはした。

だけど、内容が偏っている。周辺環境への影響を窺わすような条文の引用をしていないし、そもそも法律のみだと場外発売場内以外を保護法益として特定はされていない。実効性確保の規定云々の部分も、周辺環境への配慮という点は関係ないため、当該記述部分も何ら関係ない記述となっている。

規則を使おうとするのはいいが、どうして考慮していいのかその検討が欠けている。

関係通達にかんしても同上。加えて、「文教施設」の捉え方が偏っている。

建物の規模・開場時間・距離・位置関係は何ら触れられず。


設問2(1)

若干抽象部分があるものの(一定の実効性とは?)、内容は悪くはないと思われる。


設問2(2)

論述がまとまっていない。考える余裕がなかった。また、中身は、職権取消なのに記述内容にズレあり。


設問3

まぁまぁでは?


肝心の原告適格と、取消措置の適法性の議論が不十分であるのが残念。

配点による論述の濃淡は試験対策上必要ではあるが、いまの自分にはそれ以前の知識の正確性に問題がある。また、論理的に整理する能力が欠けているから、そこを埋める必要あり。