第1 設問1
1 X1及びX2は,国土交通大臣がAに対して行った本件許可の取消訴訟を提起しているところ,X1及びX2は本件許可の名宛人ではないため,行政事件訴訟法(以下、省略する。)9条2項により,原告適格が認められるか検討する。
2 この点,9条2項の「法律上の利益」を有する者とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。
そして,当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合にも,法律上保護された利益にあたると解する。
また,法律上保護された利益の判断にあたっては,9条2項の考慮要素を勘案するべきである。
3(1) 法の規定について
法の趣旨は,海に囲まれたわが国の発展に資すること,公益の増進を目的とする事業の振興に資すること,及び地方財政の改善を図ることにある(法1条)。
かかる目的を達するために,競争の用に供するモーターボート競走場を設置するには,国土交通大臣の許可が必要となっている(法4条1項)。また,場外発売場を設置するにあたっても許可制が採られている(法5条1項)。このように,単に発売場を設置するにあたっても許可制が採られていることは,法の目的には周辺環境への影響を考慮しているものと解される。
そして,国土交通大臣は,競争場内又は場外発売場内の秩序維持や,法律の施行を確保するため必要があるとみとめるときは,必要な命令ができる旨定められ(法57条),これも周辺環境への配慮がうかがわれる。
また,法に違反したり,命令に従わない場合には,業務の停止(法58条2項)や,許可の取消し(法2条6項,59条)が定められ,法の目的達成のための実効性確保の規定が存在している。
以上のような法の規定は,法1条の趣旨にかかわらず,周辺環境への一定の配慮も目的として含まれていると解される。
(2) 規則の規定について
規則11条1項では,許可申請書に場外発売場の構造などの内容に関する事項を記載することが求められている。また,場外発売場付近の見取図の添付も要請されており,特に1000メートルの区域内にある文教施設については,位置や名称の明記まで必要となっている(規則11条2項)。
さらに,法5条2項の基準は,規則12条1項1号により文教上著しい支障をきたすおそれのない場所であることとなっている。
このように,単に建物の構造のみならず,文教施設などの周辺環境に配慮する規定となっているのは,ほうと同一の目的に基づくものと解される。
(3) 関係通達について
場外発売場の位置,構造及び設備の基準の運用についての1(1)①では,規則12条1項1号の「著しい支障」の判断にあたって,文教施設から適当な距離があるかが一つの基準となっている。これは,規則11条2項において1000メートルの区域内に存在する文教施設の名称が求められていることに鑑みて,1000メートル以内の区域は適切な区域であるとは言い切れない距離と考えられる。
また,1(1)③では,「文教施設」の内容が書かれているところ,大学院は含まれていない。これは,いまだ判断能力が十分とは言い難い学生を保護するために,健全な学習環境を整備する点に重きを置いているものと考えられる。
(4) 以上の各定めの内容に鑑みれば,各関連法規は周辺住民や学生の生活や学習の平穏をも個別的利益として保護しており,一般的公益に吸収解消されていない。それゆえ,X2には「法律上の利益」が認められ,原告適格がある。
他方,学校法人たるX1については,法科大学院が,各関連規定により個別的利益として保護されているものとは解されないため,X1には「法律上の利益」が認められず,原告適格はない。
第2 設問2(1)
1 差止め訴訟(37条の4)について
Aとしては,取消措置の差止めの訴え(37条の4)を提起することが考えられる。
かかる訴訟が認められれば,Aが取消措置を受けるおそれがなくなることから,実効的な訴えではある。
もっとも,訴訟要件に「重大な損害を生ずるおそれ」が求められるところ,Aは本件施設の工事にいまだ着手していない。そうだとすれば,Aが取消措置を受けたとしても特別な費用を支出したわけではないため,「重大な損害」が認められない可能性がある。
よって,適法とされる見込みが低いため,差止め訴訟は提起するべきではない。
2 公法上の当事者訴訟(4条後段)について
Aは,取消措置を受ける地位にないことの確認を求める公法上の当事者訴訟を提起することが考えられる。
確かに,確認を求めるだけであるから,差止め訴訟と比べて実効性が低いかもしれないものの,訴えが認められればその後国土交通大臣が取消措置をすることは違法となるため,一定の実効性が認められる。
また,公法上の当事者訴訟が認められるには,確認の利益を要するところ,現に国土交通大臣が取消措置をする姿勢を見せ,他方Aは従うつもりがない以上,確認の利益がある。
よって,Aは,取消措置を受ける地位にないことの確認を求める公法上の当事者訴訟を提起するべきである。
第3 設問2(2)
1 関係する法令の定め,及び通達について
本件の法や規則においては,地元の同意は許可の要件とはなっていない。これに対して,資料3の関係通達では自治会の同意が定められている。
そもそも通達は,行政組織の内部において機能するものであり,国民の権利義務に直接影響しないものである。そうだとすれば,国土交通大臣は通達に基づく措置ができないとも思われるが,当該通達が法の正しい解釈に合致するものであれば,適法となる余地がある。
もっとも,法及び規則は,専ら建物の構造などを基準に許可要件を定めており,自治会の同意を要求することは法の正しい解釈に合致するものではない。
よって,条文に定められた基準以外の理由で許可を拒否することは違法となりうる。
2 行政手法の意義と限界について
(1) 自治会の同意を要求する行政手法は,前述通り許可の要件ではない以上,相手方の任意の協力によってのみ実現される行政指導(行政手続法32条1項)にあたるものである。それゆえ,相手方を強制的に従わせるような措置を示すことは行政手続法上違法となる(同法34条参照)。
したがって,Aが従う意思がないにもかかわらず,取消措置をすることは違法である。
(2) もっとも,本件では,一度許可をした後で,許可を取り消す処分が認められるのであれば,国土交通大臣の取消措置は適法とも思えるため,以下検討する。
この点,処分には公定力があり,取消訴訟で取り消されるまでは処分の効力は存続する。例外的に公定力を判決以外で覆すには,処分当時から瑕疵があって処分を撤回する場合に限られる。
本件では,そもそも許可に自治会の同意は必要なく,許可時点において瑕疵は存在しない。それゆえ,国土交通大臣は許可の取り消しをすることはできない。
3 以上により取消措置は,違法となる。
第4 設問3
1 事業者に対して実効性を持つ規定について
法律に違反したり,命令に従わない場合に,許可の取消や,罰則を設けることが考えられる。
但し,実効性を重視するあまり,罰則の内容が重くなってしまうと比例原則に反するおそれがある点は問題となるため,注意しなければならない。
2 住民及び事業者の利害を適切に調整する規定について
(1) まず,許可の前に事前に周辺住民の同意を要求する規定を置くことが考えられる。これにより,利害関係が適切に調整されるからである。
但し,同意の数が高い基準となってしまうと,事実上許可を認めない制度となるおそれがあるため,どの程度の数の同意にするかは問題となる。
(2) 次に,公聴会(行政手続法10条参照)の設置が考えられる。中立的な立場の者の意見を聴くことで,公正な許可を期待できるからである。
但し,公聴会の構成員が一方の利益を重視するような者では公正を達成できないため,構成員の編成には注意するべきである。
以上
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【追記】
設問1
規範はOK。あてはめ死亡。条文あげて評価しようとはした。
だけど、内容が偏っている。周辺環境への影響を窺わすような条文の引用をしていないし、そもそも法律のみだと場外発売場内以外を保護法益として特定はされていない。実効性確保の規定云々の部分も、周辺環境への配慮という点は関係ないため、当該記述部分も何ら関係ない記述となっている。
規則を使おうとするのはいいが、どうして考慮していいのかその検討が欠けている。
関係通達にかんしても同上。加えて、「文教施設」の捉え方が偏っている。
建物の規模・開場時間・距離・位置関係は何ら触れられず。
設問2(1)
若干抽象部分があるものの(一定の実効性とは?)、内容は悪くはないと思われる。
設問2(2)
論述がまとまっていない。考える余裕がなかった。また、中身は、職権取消なのに記述内容にズレあり。
設問3
まぁまぁでは?
肝心の原告適格と、取消措置の適法性の議論が不十分であるのが残念。
配点による論述の濃淡は試験対策上必要ではあるが、いまの自分にはそれ以前の知識の正確性に問題がある。また、論理的に整理する能力が欠けているから、そこを埋める必要あり。