1 設問1

 1 小問(1)について

(1) CBに対して,民法703条に基づいて,2500万円の不当利得返還請求を主張する。以下説明する。

    まず,Cによる甲建物の内装工事により,甲建物の市場価値が1億円から2億円となった。それゆえ,Bには1億円の「利益」が認められる。

    次に,Cは,Aから5000万円で工事を請け負ったにもかかわらず,2500万円の支払いを受けていないため,Cには2500万円の「損失」がある。

    また,Bの「利益」は,Cの工事によるものであるから,「利益」と「損失」との間に因果関係もある。

    そして,BC間には契約関係がないため,Bの「利益」は,「法律上の原因」がない。

    以上から,CBに対し,上記請求をする。

  (2) これに対してBは,AB間の甲建物の賃貸借契約(601)において,内装工事費用は全てA負担となっていたこと,及び更新された内装の所有権はBに帰属するとされていたことから,Bの「利益」には「法律上の原因」があると反論する。

  (3) もっとも,「法律上の原因」がないかどうかは,建物所有者が対価関係なしに利益を受けたかどうかで判断するべきである。

    本件では,AB間の賃貸借契約において賃料が月額200万円と定められている。本件甲建物を改修した状態での賃料の相場は400万円であり,AB間の賃料はそれより低いものの,その理由はAが内装工事費用を負担するからである。そうだとすれば,Bとしては対価関係なしに利益を受けていると言える。

    世って,Bには「法律上の原因」がないため,Cの請求が認められる。

 2 小問(2)

  (1) CFに対して,事務管理(697)に基づく,有益費返還請求(702)として2500万円を請求する。なぜなら,CFとの間で契約関係にはなく,また,内装工事は甲建物にとって有益なものだからである。

  (2) これに対しFは,CAとの請負契約(632)に基づいて内装工事をしたのであり,Cは契約上の「義務」に基づいて内装工事をしたのであり,事務管理自体が成立しないと反論し,私も同意見である。

2 設問2

 1 法的根拠について

  (1) FGに対し,平成2291日に,FAに対する平成231月分から同年12月分までの2400万円の賃料債権を譲渡している(将来債権譲渡)。そして,本件債権売買契約の前に,FAからの説明により,早晩Aが転借人を見つけてAによる賃料支払いも可能になるだろうと考えていた。

    そうだとすれば,Fが本件債権売買契約をしたのは,Aが賃料を払う見込みがあるからであり,Aが賃料を支払う資力を有することを前提に,FG間で本件債権売買契約を締結したとするのが当事者の合理的意思に合致する。

    それゆえ,Fは,平成221月から同年12月分までのAの賃料支払いの資力を担保する(5692)という債務を負っていたことになる。

  (2) もっとも,その後Aは無資力となり事実上の倒産状態になっている。また,今後もAは賃料支払いの見込みが全くなくなっている。

    それゆえ,GAに賃料請求しようにも,Aには支払う資力がなく,Fの前述の債務には履行不能となっている。

  (3) そこで,Gは,履行不能に基づく解除を主張する(543)

 2 解除の要件について

  (1) まず,Aには支払う資力がない以上,前述のFの債務は履行不能となっている。

  (2) 次に,Fの帰責事由については,確かにFA間において甲建物の賃貸借契約が合意解除されていることから,Aが賃料を支払うことができなくなったのは,Fの帰責事由(543条ただし書き)によるものとも思える。

    もっとも,Aが資力を喪失したのは,Aの事実上の倒産というAにかかわる事情に基づくものであって,Fに帰責事由は認められない。

  (3) よって,解除の各要件は充足されない。

3 設問3

 1 小問(1)について

  (1) Fに対する請求について

   ア HFに対し,7171項ただし書きに基づいて損害賠償を請求する。なぜなら,甲建物内のエレベーターの所有権はFにあり,Fは土地工作物の所有者として無過失責任を負うからである。

   イ これに対してFは,Hの怪我はDの手抜き工事によるものとして,まずDに請求するべきと反論することが考えられる。

   ウ もっとも,7171項ただし書きは,占有者が第一に責任を負わなければならない規定ではないため,所有者たるFHの損害を賠償しなければならない。

  (2) Dに対する請求について

   ア 次に,HDに対し,不法行為(709)に基づく損害賠償請求をする。

   イ これに対し,Dはエレベーターを利用する者の身体の安全にまで注意する義務はないとして,「過失」がないと反論することが考えられる。

   ウ もっとも,Dはエレベーターの設置者である以上,契約関係にない者との間でも,工作物の基本的な安全性が欠けることのないよう配慮すべき義務を負っていると考える。

     そうだとすれば,Dがエレベーターのボルトを十分に締めないことは,エレベーターの基本的な安全性を欠けることのないよう配慮すべき義務に反するものである。

     よって,Dには「過失」があり,Hの請求が認められる。

 2 小問(2)について

  (1) Hへの賠償額は減額されるべきではないと考える。以下説明する。

  (2)ア 被害者に過失があれば,7222項により賠償額が減額されることがある。この趣旨は,損害の公平な分担を図るものである。

     そうだとすれば,被害者の身体機能の状態が疾患にあたる場合には,損害の公平な分担に鑑みて,被害者の身体機能の状態を斟酌して賠償額を定めると解する。

   イ 本件では,確かに,Hは高齢で身体機能が低下しているにもかかわらず,毎日妻が入院する病院と自宅とを往復し,また徹夜で妻に付き添っていたため,Hにはかなりの疲労が蓄積されていた。そうだとすれば,Hの身体機能の低下と疲労が重なることにより,Hには疾患と同様の状態が生じていたとも思える。

     もっとも,Hは医師から,身体機能の低下は疾患ではないと診断されていた。また,妻の入院する病院に見舞いに行くことは,日常生活上あり得る状況なので,疾患の判断において重視すべき事情ではない。さらに,エレベーターが異常な作動をすることは,日常生活で起こり難いことなので,Hの怪我が疲労も原因となっているとしても,エレベーターの手抜き工事によることが決定的な原因である。

     そうだとすれば,Hの身体機能の低下も疲労の蓄積も疾患にはあたらない。

     よって,前述の結論の通りとなる。

以上








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【追記】

設問1(1)

受益の捉え方が雑。また、因果関係のあてはめない。法律上の原因がないことの当てはめができてない。


設問1(2)

424、423に気付けない点でサヨナラ・・・。


設問2

基本から思考していない結果です。本来的義務とそれ以外を、基本から思考できれば解けた問題。そもそも、債務と担保を理解していないことも判明されている。


設問3

717要件検討なし。記述内容も、非論理的。直接占有者たるAから考えたほうが良かったのでは?反論の内容も、占有者たるAに請求するべきとは言っていない(「D」と言ってしまっている)ため、内容がずれている。

Dの検討はまぁまぁ。ただし、理由がない。

賠償額の話は、あてはめが中途半端だが、みんなそう変わらないと思う。


※民事系に関しては、学習の仕方に問題があった。科目の体系は自分の中に構築されていない。だから、要件の検討、基本からの思考が求められる問題に、素直に答えられなくなっている。まずは、一つ一つ整理していかなければ、答案は変わっていくことはないでしょう。