★★アラン・ドロン特集★★
過去のアラン・ドロン主演映画のレビューは次の通り
アラン・ドロンの映画は、ほとんど名画座で観ております。この映画も京成線青砥駅にあった、今はなき「京成名画座」で10代の終わりに観ております。前回の「第43回シネマDEクイズ/列車が印象的な洋画は?」で少数派で推し正解した映画です。多分、30年前ならピエトロ・ジェルミの「鉄道員」などと並んで上位に名を連ねたであろう懐かしい作品です!
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「リスボン特急」
1972年/フランス・イタリア(98分)
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フレンチ・フィルム・ノワールの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィル監督最後の作品でアラン・ドロン主演の犯罪映画!
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◆監 督 |
ジャン=ピエール・メルヴィル
◆キャスト |
アラン・ドロン/コールマン刑事
カトリーヌ・ドヌーヴ/カティ
リチャード・クレンナ/シモン
リカルド・クッチョーラ
マイケル・コンラッド
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オープニングの銀行強盗シーン
声に出して語らない映画! |
表向きはクラブのオーナーだが裏では銀行強盗のボスであるシモン(リチャード・クレンナ)とパリ警察の警部コールマン(アラン・ドロン)との対決を描く。だが、二人は旧知の仲だった・・・
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オープニングが美しい!
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人気のない海岸沿いの道を一台の車がゆっくり走ってくる。荒れ狂う海と波音、突然降りだした雨・・・車のワイパー、荒れ狂う海・・車から降りて一人、また一人と銀行へ消えていく
最近のアクション映画の画像の迫力は凄いの一語です!まさに手に汗握るシーンの連続で、そのCGの凄さはまるで高さを競う高層ビルと似ています。さらに高いビルを!さらに凄いシーンを!それはそれで面白いのですが、その反面、その場で終わってしまうという残念さというか虚無感が残ります。この映画は、今観るともどかしい程ゆったりと進む映像をかみしめる映画です!例えば、冒頭の銀行を襲うシーンは、今ならスピーディーに2~3分で終わらせるのに、必要以上に間合いをとっています。それでいて緊張感が漲る、よりリアリティを醸し出しています
全編、ブルーを基調とした独特の映像の美しさは何度見ても惚れ惚れします。「ブルートーンはメルヴィル」と言われるくらい素晴らしくオープニングから画面に釘付けになります
シモン(リチャード・クレンナ)とその仲間
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名匠メルヴィル監督最後の作品!
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後のヌーベルバーグに大きな影響を与えたメルヴィル監督の最後の作品で、73年55才の若さで亡くなっています
多くの話題作品がありますが、特に次の作品がオススメです!
「恐るべき子供たち」(50年)
「賭博師ボブ」(55年)
「いぬ」(63年)
「サムライ」(67年)
「影の軍隊」(69年)
「仁義」(70年)
男を撮る映画が少ない昨今、高い評価があるものの、もっともっと評価されてもいい監督の一人だと思います。ちなみに、ヌーベルバーグの記念碑的作品でジャン・ポール・ベルモンド主演の「勝手にしやがれ」には、俳優として出演しています
コールマン刑事(アラン・ドロン)
二人の男の間で揺れる女(カトリーヌ・ドヌーヴ)
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豪華俳優の無駄使い!?
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10代の終わりに初めて名画座で観たときの印象を、当時つけていた「映画ノート」にこう記しています
「ドロン、ドヌーヴ、クレンナの3人の無駄使い!ミニチュアのしょぼいセットに安っぽいギャング映画で退屈きわまりない。人間関係がわかりにくく監督の意図が不明!画面も安っぽく重厚味に欠ける。ただ、リチャード・クレンナはいい!」
今、読むと赤面モノでこうして書いているだけでも恥ずかしい(笑)その後何度か観ていますが、観るたびに個人的な評価は上がっている作品です!
確かに10代の頃の「生意気な俺」が語っているように、この映画の最大の欠点は主要人物の関係性でしょうか。この部分の説得力が弱いから全体がぼやけてしまいラストが薄っぺらく感じてしまいます。逆に言うとそれが分かってくるとかなりシンプルな構図が見えてきます!作品の大半が静寂につつまれBGMもほとんどなく、セリフも最小限におさえており、不親切で退屈な映画にうつりますが、メルヴィル監督らしい男の沈黙、生き様が読み取れます。この映画は、表情を読み取れないと永遠に良さがわかりません!
この映画の評価ウンヌンの話をよく耳にします。雑な脚本と締まりのなさがやはり気になります。したがって、よくある「減点法」による映画採点(10点満点でストーリー7点、キャスト8点・・など)では絶対に良い点数がつかない(評価されない)映画ですが、「加点法」だと俄然変わってきます。どちらがいいとかではなく映画に対するスタンスの問題です。バランスを重視する人は多分に「減点法」を、演技や画像そしてプラスアルファを重視する人は「加点法」が多いと思いますが基準が曖昧のため評価というより好みに近い選出になると思います。映画をプラスで観るかマイナスで観るか・・
理屈抜きでこの映画は好きです!
シャンゼリゼ通り
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好きなシーンが満載の映画!
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この映画には、好きなセリフはあまりありませんが、好きなシーンはたくさんあります!
オープニングのシーン
冒頭で話した通り、タイトルバックからのシーンは見事でセリフもほとんどありません
ドヌーヴとドロンの手の平でキスをおくるシーン
ドロンがピアノを弾き終わってからの、このシーンは美しくも哀しく、どんな強烈なキスシーンより印象的であえて短いカットにしたところが見事です
シャンゼリゼ通りのシーン
まさにメルヴィルブルーのシャンゼリゼ通りにオレンジの街燈が灯るシーンです。一瞬ですが言葉に表せないほど美しい!これを見るだけでも価値はあります
クラブの中で3人の目で語るシーン
ドロン、クレンナ、ドヌーヴの3人でのクラブのシーン!目だけでみんな察してしまう重要なシーンですね。これを見落とすとラストがつまらなく感じます
特急列車での強奪シーン
クレンナがヘリから列車へ降り立ち、麻薬を強奪するシーン。ヘリの場面は安っぽく興ざめですが、列車内でのクレンナのシーンは緊張感がありました
そして、ラストの車の中のシーン
これはもう観ていただくしかないシーンで大好きです!
アラン・ドロンのクールさとリチャード・クレンナの渋さに、カトリーヌ・ドヌーヴの妖艶さが華を添えます
この映画は、画像を読む映画です!
全編、一度消音して画像だけで観ることをおススメします。今まで見えてこなかったモノが見えてきます
ラストシーンの車の中!
この映画のドロンは、いつもにも増して寡黙!彼ほど黙れば黙るほど存在感が増す俳優も珍しい!
ラストが見事です!
シモン(リチャード・クレンナ)との対決?のあと、コトの顛末を見ていた部下が余計なひと言を言います
「早く撃ちすぎたと思わないか?」
無表情のドロンが車に乗り、いつもの様に運転を始める彼に、なんとチューインガムをそっと差し出します(余計なことを言ってしまったと思っている部下の表情がいい)。そのあと、いつものように電話が鳴り、いつもなら「はい、8号車!」と出るところ、部下は電話に出ない。バックに凱旋門が遠ざかっていく・・・この沈黙と映像がこの映画を象徴しているかのようです
この映画はオープニングとラストが際立っていいです!
アメリカ映画のように語る映画ではありません!じっくりと腰を落ち着けて読む映画です!エンディングのイザベル・オーブレの哀愁あふれる曲で幕を閉じます!
是非どうぞ!