「ハードエッジ系」望月けいさんとのお仕事(後編) | ワンダちゃんNEXT DOORプロジェクト 開発スタッフブログ

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とある理由(前回のブログ参照)から、迷宮の中を彷徨いはじめてしまった望月けいさんの手によるワンダちゃんのキャラクターデザイン。望月さんのほうも相当に悩まれていたようなので、電話にて「いったいいま何が生じているのか、そしてここからどう軌道修正を図っていくべきなのか」という話し合いが設けられることになりました。

その話し合いでとくに何か決定的な結論が見い出せたわけではないのですが、「故・水玉螢之丞先生版ワンダちゃんのイメージをなるだけ払拭し、もっと自信を持ってワンダちゃんを望月さん色に染め上げてほしい」ということを改めてお願いしたところ、ちょっと……というか、相当に意外な台詞が望月さんのほうから出てきたのです。
曰く、「普段、創作キャラのイラストを(Photoshopで)描く際は、まず下地のレイヤーに薄いグレーを敷いて、その上のレイヤーにカラーリングデザインまで込み込みの状態でキャラクターをデザインしていくのだけれど、今回は《ワンダちゃん》という重要なテーマがそうした自分の普段のスタイルさえをも忘れさせてしまっていた」とのこと。

……なるほど、言われてみれば確かに、前回のブログに掲載したラフスケッチはそのすべてが下地が白の状態で描かれていますね。Twitterのプロフィール欄で自ら「フィギュア好き」を公言するほどの望月さんだからこそ、よくも悪くも今回の「フィギュア化が前提となっているワンダちゃんのキャラクターデザイン」には自分でも気付けぬようなプレッシャーがかかっていたのかもしれません

ただしこの話し合いにより望月さんのほうでもある意味吹っ切れたところが出てきたのか、迷宮の中を彷徨い続けていたワンダちゃんはようやく望月ワールドに向けて確実に歩みはじめることとなったのです。
 

▲電話を使った話し合いの末に送られてきたラフスケッチ集。見てのとおり、下地のレイヤーには淡いグレーが敷かれた状態で描かれています。そして何より、望月ワールドを知る人ならば「……あ、これ、望月さんのデザインだ!」と分かる領域に入ってきたことがよく分かると思います


こうしてゴール地点をもっとパンキッシュな地点に再設定し直した結果上がってきた新たな4点のラフスケッチの内容は、「赤ずきん風」「ゴスロリ」「軍服風」「未来型風衣装」
ポーズにしても“らしさ”にしてもデザイン性の高さから言っても「軍服風」が頭ひとつ抜け出ているように思えたのですが、二次大戦のドイツ軍を想起させる衣装というのは「こういう時代」だといつどこで誰がどんなクレームを付けてくるのか分からずリスクが高すぎるため、このスケッチからミリタリー要素を目減りさせる方向性でデザインを詰めていくことになりました。

で、そうして「ミリタリー要素を目減りさせる方向性でデザインを詰めた結果」が、以下に掲載する2点のラフスケッチです。

 

▲「軍服風」のミリタリー要素を目減りさせ、「未来型風衣装」からヘッドフォンというキャッチーなアイテムを移植させてきたことが分かります。ここまで来れば完全にもう、このワンダちゃんは「望月ワールドの住人」ですね


結局、全体的なバランスのよさ(カラーリングバランスも含む)と、フィギュア化した際のポーズの見栄え等の理由から、左側のスケッチを決定稿へ持って行くことに決定
……というか、線と塗りこそまだ整えられていないとはいえ、すでにこの時点で《ほぼ決定稿》状態ですね。これまでの本プロジェクトにおけるFILE:01〜05のワンダちゃんたちとはひと味もふた味も異なるテイストを持つ、小悪魔的でスタイリッシュなワンダちゃんの誕生です。うん、これならばまさしく「望月ワールド全開なワンダちゃん」と言うことができると思います。ここまで辿り着く道のりは非常に険しいものがありましたが、悩みに悩んだぶんだけクオリティーの高い作品に仕上がったと言えるでしょう。

というわけで決定稿はFILE:06版ブログの初回に掲載しましたし、すでにいろいろなメディアにも掲載されていますから、次は決定稿が描き上がったのちに望月さんに描き下ろしていただいたディテール稿を紹介したいと思います。

 

▲服装とマントの構造解説図。こうして眺めるとかなり情報量過多ですね……それってつまり、原型師に求められている要求も高いということなのですが、もっとも原型師側的には「詳細画稿がないときちんと立体化できない」という人も多いので、こうした詳細画稿の存在は非常にありがたいのです

 

▲左は、決定稿イラスト1枚だけからだと読み解けない体のラインや、服と体のあいだに生じる隙間、ヘッドフォンのディテール説明を、半透明化した決定稿イラストの上に描き込んだ画像。右は、決定稿イラストでは完全に死角となって見えない左手のポーズ画稿。「原型師側の視点」に立ってディテール稿を描き下ろしていただいていることがよく分かると思います


さて、こうしてようやくキャラクターデザイン&イラストの決定稿が仕上がり、そして細部や死角のディテール稿も描き下ろしていただけた、と。
あとはもう、原型製作担当のChilmiruさん(うろこもん)がひたすら突っ走って立体化するだけ……なのですが、じつはこのあと、いざ造形に着手しはじめた途端に「……ん? んんん!?」的な問題が生じはじめます

というわけで次回は、その「……ん? んんん!?」的な原型製作編に突入です!