Wind of World Ⅱ #19:波導の衣 | ピカチュウと天狼(シリウス)の徒然日記

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かつて栄えていた「ウルフラブ」という奴のブログ。消えてしまった奴に代わりフェリルが管理していた夢の跡地。2008年から長い間のご愛顧ありがとうございました。


特大波導弾!」
ツェネンを包む波導の衣が、前に構えた両手に集められた波導弾をさらに包むように巨大化させた。
「なんだ?あの波導弾、禍々しい波導を帯びてるぞ?」
「フブユキ!来るわよ。気をつけて!」
「はーっ!」
放たれた波導弾は凄まじいスピードでビアンカとフブユキに迫る。
「エイトテールディフェンサー!」
ビアンカの尾が伸び、気を纏い八本に分身し、ビアンカの顔の前で波導弾を止めた。
「フブユキ、今よ!」
リバースコントロール!」
フブユキは手から得体の知れないビームを放ち、波導弾のコントロールを奪った。
「な、どういう技だ?」
「リバースコントロールは敵の放った技のコントロールを奪い取り自在に操る技。この波導弾は僕のコントロールの支配下に入った!」
「ナイスフブユキ!私も攻撃に入るわよ。」
「波導の衣を舐めるな!神風乱舞!」
ツェネンは目にも止まらぬ速さで動き、波導弾を何発も放った。
「なかなか素早いわね。波導弾の威力も上々。フブユキ、その波導弾はとどめまで取っておくのよ!」
「了解した!ビアンカ、追い込みを頼むぞ。」
ビアンカは頭を縦に振ると、少し距離を置き、瞑想に入った。
「自ら的になるとは、死にたいようだな!」
「速攻で終わらせるわ。エイトテール・ファーストフォルム!」
ビアンカの尻尾が長くなり、八本に分かれた。そして、一本一本が横に放射線状に広がり、ビアンカ本体も手を地面についた。
「ホワイトミスト…」
白い霧が視界を奪い、フブユキすらも見えなくなるほどに濃くなった。
「フブユキ、もう少し離れてもらえる?」
「その声はビアンカ!ああ、わかった。」
フブユキは波導弾を持ち、霧のないところまで一目散に走った。
「見つけた!まずはお前からだ!」
「しまった、どうしてここが!?」
「波導の衣は人が発する波導で位置を図れるのさ!覚悟しろ!」
ホワイトフィヨルド!」
白い霧の範囲内が全て一瞬で白い氷に変わった。ツェネンは顔より下を氷に閉じ込められ、身動きがとれなくなった。
「くっそ!なんだこの氷!!」
「ビアンカ、いつの間にかこんな技を…!」
「フブユキ!今よ、波導弾をぶつけて!」
「わかったぜ!」
フブユキは手元に留めておいた波導弾を放った。先ほどの凄まじいスピードを持ったまま、
氷全体を粉々に砕いた。ツェネンの姿も氷と共になくなっていた。
「とんでもない破壊力ね…これをさっきまともに食らってたら危なかったかもしれない。」
「しっかしクリスパーとやらも大したことないね」
「でも、まだこれ以外に九人いるよの?今のやつが最弱の可能性もあるわよ。」
「君たち、強い相手が欲しいみたいだね!」
突然二人の背後から声がした。その一声で凄まじい威圧を感じ、二人は恐る恐る振り向いた。
「なに怖がってるんだ?二人ともあのツェネンさんをすぐ倒しちゃったじゃないか。」
(なんだこいつのこの強烈な威圧感…本気のエリックでもここまでのオーラは放ってなかった。) 
そこに立っていたのは、民族的衣装の茶に白い縞模様の髪を持った虎の獣人だった。
「オイラはランタヨ。この世界では多少は名の知れた戦士なんだ。実はさ、さっきのツェネンはオイラの部下でさ、上司としては
 その敵を取りたいと思うじゃん?」
「来るわよ!気をつけて!」
「二人ともちょっと血の気が多いねー、オイラ弱いものイジメは嫌いなんだ。だから今回は挨拶だけで許してあげようじゃん?」
「え?」
ランタヨはその場で胡座をかいた。
「だってさ、君たちはいずれオイラ達と全面戦争しなきゃならないからさ、今潰したら血の煮えたぎる熱い戦いができなくなっちゃうじゃん?
 だから、覚えておいてよ。クリスパーにはさらに上がいるってことをさ。んじゃね!またいつか会おう!次はその首、噛み千切ってやるからさ。」
ランタヨはテレポートでどこかへ消えてしまった。ビアンカはホッとしたように膝をついた。
「はぁ…怖かった。あんな威圧、何年ぶりに感じたかしら…」
「ランタヨ…奴には要注意しなくてはな。僕らのかなう相手じゃなさそうだ。」

一方その頃、レイルスと戦うフェリル達は…
「そういや、お前には見せてなかったな。この技は」
「ん?なんだ?」
「大地に引かれた線路の上を正確に走る鉄道とは、素晴らしいと思わないか?お前のようなバカには到底理解できないだろうがな。」
「罵倒なら聞き飽きた!速攻で終わらせてもらう!」
レイルプラント!」
鉄道のレールのような樹木が絡み合いながら、直径30メートルの半円の空間を作り出した。
「トレインダイヤ・セミエクスプレス!」
レイルスの手元のレイルの始点に、それほど大きくない電車を出現させた。
「走り抜ける列車に……ご注意ください!」
電車は徐々に速度を上げ、絡まったレイルの中をフェリルめがけて爆走した。
「面白い能力だな、でも脱線させてしまえばこっちのもんだ。アイスボール・連弾!」
フェリルはキーブレードを掲げ、その周囲を回りながら氷の玉が巨大化した。
「いっけええ!」
一斉に氷の玉が四方へ飛び、それは電車をホーミングし、確実に当たった。
「ま、これくらいはしてくると踏んでいた。流石にそう簡単には倒せなさそうだな。」
「あとはこの鬱陶しい線路を取っ払わせてもらう!双半月斬り!」
顔の前で腕をクロスさせ構えたキーブレードを二本同時に後ろへ向かって振った。
半月のような形の斬撃がレイルの根元をさっくりと切り落とした。
「これでとどめ!フリーズウィンド」
浮かせた線路を凍らせ、フェリルは二本のキーブレードで線路を粉々に破壊した。
「せっかくの初レイルを木っ端みじんに壊しやがったな。だが残念、僕のレイルは無尽蔵!電車だって無尽蔵!お前は逃げ惑うしかないのさ!」
レイルスはそう言ってさらにレイルを出し、フェリルを取り囲もうとる。
「鞭のような使い方もできるわけか。多彩だなホント。」
「このレイルは、お前を敗北という終点駅へ、僕を勝利という始発駅へ導く線路なのだ!」

一方で、アノーラと戦うソレイカとスコマインは…
アイス…ラグナロク…!」
ビルを凍らせた数メートルの氷塊が光を帯び、空へと浮かび上がった。スコマインは目を閉じ、羽を思い切り広げ、その表情は必死そのものだった。
「まるで浮かぶ鍾乳石!すごい技だ」
「これがスコマインの本気か…。頼んでおいて言うのも難だが、初めて見た。空気中の水分すらも震えさす技…凄いぜ」
スコマインは目を開き、構えを変えた。羽をアノーラに向け、攻撃態勢へと入った。
!」
氷塊のすべてが一瞬にして砕け、見えるか見えないかくらいの大きさになり、それらは光をわずかに反射しながら、高い音を立て、
アノーラを360度から襲った。
「氷が粉々になるとは…あのまま氷塊をぶつけると思ってた。」
「この技に逃げ場は存在しません!確実にあなたを仕留めます!」
アノーラは必死で逃げ惑うも、氷は徐々にアノーラの体を覆っていった。
「しまった…僕もここまでか。」
薄れていくアノーラの意識。氷は冷徹に体の熱を奪っていった。そして、ついに動きが止まり、アノーラは落下した。
「ソレイカさん!受け止めてあげてください!」
「おう!任せてくれ」
ソレイカは落ちていくアノーラを間一髪で受け止め、氷の崩壊を防いだ。
そのソレイカの熱でアノーラの体温が少しだけ戻り、かすかな声をあげた。
「僕を助けてどうするんです……?」
「君には聞きたいことがたくさんある。それに、レリヴァリュー鉱山の唯一のキーマンである君を殺すわけにはいかない。俺たちと来てもらう。」
その裏で、力を使い果たしたスコマインが倒れこんだ。
「スコマイン大丈夫か?やっぱりアイスラグナロクは凄まじい体力を消耗するんだな…」
「すみません…足引っ張ってしまい。でもこれからどうします?他の所もみんな戦闘中でしょうし…」
「スコマイン、アノーラとここにいてくれ。俺はあのビルの上から様子を見てくる。」
ソレイカが指差したのは、廃墟の街並みの中で一際高いビルだった。
「分かりました。お願いします。」

その頃、リムバースに乗り、シルヴェニアの首都レリヴェリアからヒガシノミヤに向かっていたエインおよびその配下のローダ達。
目的は依然として不明で、ハル達は倉庫の中で縛られ、監禁されていた。
そんな中、あの女がついに行動を起こすのだった。
「ラツキ?起きてるか?」
「そ、その声はダルっ」
「シー!静かにして。あんた達を逃がしに来たわ。」
「えっと…誰?」
ダルフ、さっきアシュラさんが話してた俺と仲良しの三大ローダだ。」
「ああ、思い出したわ。私、ハルって言います。よろしくお願いします。」
「ハルさんね、覚えておくわ。ところで、今どの辺か分かる?」
ハルは言葉に詰まった。
「わかんないわ。そもそもヒガシノミヤって何?って感じだし。」
「今ヒガシノミヤレベル3に入ったわ。もうすぐ着陸するからそろそろ高度が下がるはず。」
「そうだダルフ、王やローダの狙いってなんなんだ?」
ダルフは少し間をおいて口を開いた。
「ズバリ、クリスパーとの会談よ。表向きはファントム討伐とか言ってるけど、王はクリスパーっていう謎の組織と手を組んでこの国を滅亡へと
 持って行こうとしている。それを何としても阻止しなくてはならない、そのためにも私に今できることは、王に対抗できる力を持つアナタ達を
 ここから逃すこと。」
ダルフは鎖に波導を当て、4人の鎖を破壊した。
「さ、こっちよ。」
ダルフ達は身を屈めながら狭い通路を進んだ。その先に鋼鉄の扉が見えてきた。
「みんなも手伝って!いくわよ、せーの!」
ダルフ、ラツキ、クラウド、ハルの4人はドアのハンドルを一つずつ握り、左右に思い切り引いた。外に広がっていたのはリムバースの甲板だった。
そのさらに向こうには一面の雲海がどこまでも続いていた。
「はいパラシュート。みんなスカイダイビングは初めて?」
「ハルとクラウドは知らないが、俺とアシュラさんは大丈夫だ。」
「俺も経験ある。」
「私も大丈夫よ。」
「なら話は早いな。下はビルの残骸だらけだけど、うまく着陸するのよ。あ、王にはアナタ達が勝手に抜け出した事にしておくわね。それじゃ!」
ダルフは狭い通路をさっさと戻っていった。
「なんていい人…でも裏がありそうな」
「バカ、ダルフと俺は疑う余地もないお前の味方だ!」
四人は一斉にパラシュートを背負って雲海へとダイブした。凄まじい速度で雲海を突き抜けると、そこには褐色のビルが無数も立ち並ぶ廃墟の街が広がっていた。
(所々で戦いの気配を感じるわね、でもクラウドの報告ではギルド本部とアルトマーレ支部メンバーで全員のはずなのに、それ以外にも幾つも
 気を感じるわ…増援か、新たな敵襲か…。) 
その瞬間、全員のパラシュートが開き、ゆっくりと地上へと近付いていった。
そして、4人ともビルのない公園跡地に運良く着陸し、スカイダイビングは成功した。
「さて、まずはどこの戦場に増援する?」

ついにヒガシノミヤにたどり着いたハル達、そして迫るエインの影。いよいよ戦いは終局へ!