Wind of World Ⅱ #20:王族勢到着 | ピカチュウと天狼(シリウス)の徒然日記

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かつて栄えていた「ウルフラブ」という奴のブログ。消えてしまった奴に代わりフェリルが管理していた夢の跡地。2008年から長い間のご愛顧ありがとうございました。

ハル、ラツキ、クラウド、アシュラの着陸した公園の跡地は錆びた遊具などが乱雑に置かれ、
木々も荒廃していた。芝生も枯れ、砂場には子供が遊んだ跡が見られた。
「ここがヒガシノミヤ・レベルスリー…?テリクスの話通り、本当に廃墟の町なのね。たった十年でここまで荒廃するってのも不思議ね。」
ハルは錆びた遊具に触れながらそう呟いた。
「海風の影響もあるだろうけど、かつてここを襲ったハートレスが"街の心"そのものを奪ったのも影響しているかもしれない。」
「街の心?」
「この世界の全ての街には、街の創始者の心を死後、街のどこかに入れる習わしがあって、その心は朽ちる事なく何百年も街を見守り続け、
 時には街の危機を救ったりすることもあるらしい。もちろん、荒廃を抑える作用もあるらしく、何百年も前のレベルツーが未だに
 あまり荒廃 してないのはそのためらしい。あと、レベルフォーにも存在するんだぜ。」
ラツキは朽ちた遊具の上に登り、得意げにハルに説明した。
「ここに登るとやっぱ気を感じるなぁ、二時の方角のビルの上でやり合ってるみたいだな。誰がいるかは分かんないがな。」
「どうするの?そこから増援する?」
「まあ待て、まだ他にも戦ってるとこがあるみてぇだ…」
ラツキは瞳を閉じて、神経を尖らせた。
「うーん、ここから南にはでかい気が3つのそこまで大きくない気とやりあってるな。で、ここからかなり北ではかなりでかい気が2つとそこまで大きくない気が3つ。さっきの二時の方角はかなりでかい気1つとまあまあの気が2つ。その逆方向にはとてつもなくでかい気が1つとでかい気2つとそこそこ大きな気が2つ。それ以外は戦闘を終えてるみたいだな。」

一方その頃、ビルクと戦うラティンとテリクスの元に、クスタとティアが到着していた。
「なかなか早く動くみたいだな、だが…追いきれない速度では到底ないな。」
クスタは腰に引っ掛けてある大きめのピストルのような鉄砲を二丁、左右の手に収め、クルクルと回してみせた。
「そんなちゃっちい鉄砲で僕をとらえるつもりか?なにを考えてるかわかんないおっさんだな!」
「そこのバクフーンとブイゼル、じっとしてろよ…ティア、お前は二人を守ってろよ。」
「…分かったわ。」
その瞬間、クスタの姿がスッと消えた。
「消えた!?」
「避けるのはおせぇんだな。」
「はっ!?」
クスタはテレポートでビルクの後ろを取り、ピストルを構えた。
その瞬間にビルクは感づき、テレポートで数メートル飛んだ。
「次取られたら命はないと思え。この銃は自重が効かないもんでね」
(まずいな…こんなつええおっさん見たことねえぞ。そろそろあれをするか。) 
ビルクは前足を地面につき、構えた。
「こいつ、何か仕掛けてくる気だな。」
「おっさん気をつけて!それはボルテッカーの構えだ」
「ボルテッカー…」
ビルクは体に電気を溜め始め、膨大な電気を身に纏った。
「エクストリームボルテッカー!うおおおおお!!」
ビルクから空へと稲妻が立ち上がった。
「勢いだけはなかなかのもんだな。だが、移動速度はどうかな?」
クスタは再度テレポートでビルクの背後を取り、今度は双銃から青いビームを放った。
デュアルコバルトショック
青いビームは空間を歪ませるほどの威力で、二本のビームに挟まれた空間はさらなる歪みでユラユラと揺れていた。
「遅いね。」
「なに!?」
サンダーボルト・アロー!」
クスタよりさらに早く動き、ビームを避けたビルクはクスタの背後から雷の矢を放ち、クスタを貫いた。
クスタはそのまま地面に倒れ伏せてしまった。
「クスタ!大丈夫か…?」
「少し油断した…ティア、後は頼む。」
「分かった。そこでじっとしてろ…そこのバクフーンとブイゼル、クスタを守っててくれ。」
「はい、分かりました!ティアさん、思う存分戦ってください!」
ティアは背中の太い刀を抜き、構えた。
「私は甘くない。覚悟するんだネズミ」
「その余裕がいつまで続くか…見ものだな!」

そして、ついにヒガシノミヤ レベルスリーに着陸したエイン率いる王族たちは…
「申し上げます!倉庫に監禁した裏切り者が逃亡しました!」
「一体どうやって逃げたのだ?くそ…甘かったか。」
ダルフは怒るエインを見て、心の中で嘲笑った。
「エイン様、謁見室の準備が整いました。ハッチを開けます。」
「ああ、早急に頼む。もうサキタスらクリスパーはすでに到着していると聞いた。しかも戦闘中とな」
「エイン様、クリスパーと交戦中の者達を特定しました!読み上げますか?」
「ああ、読んでくれ。」
その瞬間、ハッチが開き始め、徐々に謁見室が姿を見せ始めていた。
「まずギルドツイッター本部、リーダーのソレイカ=ブラッソ、メンバーのモッチ=デル=ボルボスラティン=ノースゲート、フォーソレフ=フォティン、
 スコマイン=フリージア、サキラン=グレイス
。なお、メンバーのローディ=リカルバンは裏切り、シルヴェニア騎士団大将のゼルロン様についた模様。」
(やはりあのギルドか…だがあの女は計画通りにやってるようだな。) 
「次にギルドツイッター アルトマーレ支部のリーダー、アズール=ルーブルス。メンバーのフェリル=ウォルフォールヴ、テリクス=ウィゼルット、
 レイ=フォクシーズ、カイ=ソロフライ
。なお、ニコル=ウォルベリアゼルロン様の洗脳で彼についた模様。」
「これだけか?」
「まだおります!ギルドツイッター デイブレイク支部のアローン=ウィストン、ネル=グラデス。国籍不明のティア=ヒールとクスタ=ロスロボス
 我が国の貴族、ヴァル=オータムス。それと正体不明の気が四つです!」
「正体不明だと!?この大陸の者全ての気が登録されているデータベースに存在しないということは、海の向こうの者か…」
「さすがにそこまでは存じ上げません…」
「まあいい、では謁見室へと向かおう。」
エインは操舵室から伸びた階段を上がり、ローダのエボン、ヌチ、ナティーマ、ダルフもそれに続いた。謁見室とはいえ、玉座と赤いカーペットがあり、
壁はあるものの屋根はなかった。また、玉座は高くなっており、そこからは外の景色が見渡せた。エインは下を見つつ、玉座に腰掛けた。
それに気づき、三人の影が突然姿を表した。
「お待ちしておりました、エイン様。」
「出発前に少々厄介な客が来て到着が遅れてしまった。まあ、おまえの部下がそれを片付けてくれるだろうから、心配はいらん。久しぶりだな、
 サキタス、シェヌル、リヒーヴ。」
サキタス…紫の髪をした赤目の女性で、黒いコートを着用していた。容姿端麗で、年はフェリルと同じくらいに見えた。
「さて、サキタス。そなたに任せた計画はどこまで進んでおる?」
「順調です。お探しの仮想世界はアルトマーレのはるか北の海岸に発見しました。シェヌル、例のものを」
シェヌル…名だけ聞くと女性のようだが、実は少年で、ブラッキーの姿をしていた。シェヌルは無言でサキタスに架空世界の写真を渡した。
「これが証拠です。」
「よくやった。私の方も計画は進んでいる。しかし、ファントムをもってしてもあのギルドは潰せなかった。お前の部下のクリスパー達ならやってくれると
 信じておるが、どうだろうか?」
「ご安心ください、クリスパーは選りすぐりの猛者ばかりです。そう簡単には敗れたりしません」
サキタスは俯き加減でニヤッと笑った。
「そうか、ならば任せるとしよ…うっ!?」
「エイン様!?」
「くっ…なにやつ!?」
ローダやサキタス、兵士は全員上を見た。その先にいたのは…
「一撃でやれると思ったら照準ズレちまったぜ。」
「マジメにやれリゲル!ほら、みんなこっち向いちゃったぞ?」
エインから見た左の壁の上にいたのはリゲルとヴァルだった。
「くそ…おまえさんら王になにするんじゃい!」
「落ち着けナティーマ、私に任せろ。」
怒るナティーマを宥め、一目散に飛び出したのはダルフだった。
「エネルギー…チャージ!」
「おい、やべえの来るぞ!逃げるぞリゲル!」
「充電完了!エクレアフォトン!」
黄金に輝く強烈なビームがリゲルとヴァルを襲った。それと同時に、凄まじい爆風が吹き荒れた。
壁の上部が欠け、二人の姿もなくなっていた。ダルフも爆風とともに姿を消した。
「すげぇ技やな、流石ダルフはん。」
「ダルフは二人を追ったか…任せても良さそうだな。傷もかすっただけだし、すぐ治る。さてサキタス、話の続きだ。」

謁見室から飛び出したダルフは、リムバース近辺を逃走する二人を追い、走っていた。
「待て侵入者!お前たちと戦うつもりはない!」
「んな甘い言葉で騙されるか!ローダは王の手先なんだろ?」
「ん?あんたは…ダルフ!?リゲル止まれ。」
振り向きさまにダルフを見たヴァルは動きを止めた。
「どうしたんだよヴァル、こいつ敵じゃないのか?」
「ダルフは七大ローダの中で三人しかいない人格者だ。安心しな、敵じゃない。」
「そうだ、さっきのビームもお前たちをギリギリ避けるように撃った。お前、ニコルの友人だな。」
ダルフは敵意がないことを示すべく、大型キャノンを電子分解で消した。
「いかにも。だがニコルはゼルロンに奪われた。俺はそれを取り返すためにフェリルに協力している。」
「やはり…エインが言ってた事はホントだったようだな。」
そのとき、突然大きな音が響いた。三人は音のした方を振り向いた。
「あれは…!ギルドの人だ。一体誰が…」
そこに倒れていたのはサキラン、レイ、カイの三人だった。その先にいたのは未だ倒されていないファントムのリアルムだった。
「なにこのでかさ…!」
「あー、またゴミムシが三匹かぁ。せっかくエヴォル形態見せてやったらいきなり相手にならなくなっちまった。」
ダルフ達の見上げた先にいたのは、エヴォル形態になったリアルムだった。ゴリラのような姿で、頭には頭蓋骨を被っていた。
「お前がまだ倒されてない最強のファントム…リアルムか!」
「よく知ってるじゃねえか、ゴミムシ!」

最強最大のファントムに出くわしたダルフ達、果たして勝負の行方は…


次回は「地下に眠る兵器」です。次回でこの章もおしまいです。