すっげーな、あいつ
メチャクチャ飛ばすよなあ
バス内で数人の部員たちと、箱根を見てる秀俊は呆れていた
秀俊たちは箱根湯本からバスに乗り、間もなく芦ノ湖のバス停に着く頃だった
秀俊、おまえも凄いよ、2区の区間新記録
あんな走りされちゃ、どうしょうもない
今、後続と8分近い差がついてるって
実南は久し振りに顔が明るい
なあ、実南
お前、少し休んだ方がいいよ
九州に一度戻ってみたらいい
と、中津が言った
そうかな
と、話をしていたら、芦ノ湖の大観衆にびっくりし、青山学院のチームメイトを何とか見つけた
あ、大平台のヘアピンを聡が走っていた
もうすぐ5区スタートから10キロ来た地点になる
そして中間点の宮ノ下の交差点だ
10キロ地点もさほど苦しい顔もしないで抜けて行った
そして間もなく宮ノ下や箱根登山鉄道の踏切に差しかかる
しかし青山学院の幟があちこちに見える
OBやOGの人たちが、どんどん立てているようだった
今季は強いシーズンになったから、皆さん盛り上がっている
宮ノ下では選手名を覚えて、応援する風習になったようだ
聡!聡!とコールが湧く
聡はその宮ノ下の交差点を左へ取り、踏切へ行く
そして更に多数の人々が応援する小涌園へ
約14キロ、聡もさすがに一旦きつい表情になる
しかし、監督車から檄は飛ぶわ、観客からは三ツ境コールで盛り上がったりし、登って行く力に変えて行く
あと4キロ行けば、芦の湯の前を通過し、国道1号の最高地点になり、後は、ゴールへ続く下りだ
もう、二度と5区はごめんだ
来年度からはもう少し楽な区間に廻りたい
聡は走り出して10数キロ、怒りを覚える
そして走って八つ当たりをした
(芦の湯、一度泊まった
合宿で
いや、俺自身
歴史の合宿で
もう少しぼろっちい所で、良かったのに)
聡は芦の湯の前の坂を登る、そして下り、また登る
ここが最高地点だ
海抜874m
済ませたらシフトチェンジ
1キロ2分20秒程度のスピードになるも
その下りを難なくこなし、道は平坦になり、芦ノ湖のゴール地点に入る
参考記録だが、これまでのタイムより1分半ほど良い
1時間14分50秒台が出るかどうか
それを監督車から聞いた聡は、余力を振り絞ってスピードを上げる
スピードを上げて、右折し、握りこぶしを右手で上げた