書いた中に地名が出る事がありますが
許して頂きたいです
003 春のソナタ(3)
鏡は 運賃箱に 男子の分を含めた額の五円玉を払い前扉から降りてきた
「やばい!遅刻まで後少ししかないよ。急ごう!」
綾奈は男子の手を引き まず走り出した
鏡も続く
しかし綾奈の走るスピードは 鏡には途中までついて行くのに精一杯だった
ここで綾奈はギアチェンジ
「ねー!待ってよー!」
綾奈と男子と鏡の間はかなり離れてきた
「ねえ 君 どこまで走るの?」
「入りやすいとこがあるのよ」
綾奈はスピードを上げたまま走っている
男子は落ち着いて綾奈の後ろを走っていた
ようやくその入口についた
「この3メーターの塀を乗り越えたら 大丈夫」
「君、スタミナあるね」
…珍しく いや 初めてこの男子が褒めてくれた
気分が悪くなる訳はない
しばらく休んでいたが 鏡が現れる様子はない
彼女は途中の売店でジュースでも飲んでいるだろう
「ねえ君、肩車して」
「え?!」
男子は肩車をしたが 綾奈のスカートの中に自分の顔が入ってしまい
「おい…、ちょっと…」
綾奈は構わず立ち上がり 塀に脚をかけ どうにか塀を乗り越えた
男子は綾奈の汗の匂いを反芻した