凌亮のこと、嫌いになれたらどんなに楽だろう。

でも凌亮は私に声を荒げることもなく、吐き捨てるようなことを言うこともなく、いつも冷静に私の話を聞き私を責めるどころか私の気持ちに同調してくれる。

そんな凌亮だからこそ、私が思ったことはできるだけ早く素直に伝えるべきだったのだろう。

「それに、『眠い』ってばっかり言ってごめんね。
これも唯との旅行で嬉しくて寝るのが遅くなったり眠れなかったりしてたのが原因だよね」

凌亮がそう話してくれて、私はなんて心が狭いのだろうと思い始めていた。

仕事が大変なのもわかっている。

家に帰っても満足な夕食も出てこないし、色々文句を言われたり休日は何かと言いつけられたりして心身が休める場所ではなくなっていることもわかっている。

だからこそ言えなかったんだ。

私が凌亮を幸せにしたいと思っていた。

私といる時だけは幸せだと思って欲しかったのに、だからいくつも言葉を飲み込んでいたのに、結局は私も凌亮を追い詰めるようなことをしている。

私は凌亮を幸せにはできないのかもしれない。

私じゃないほうが凌亮は幸せになれるかもしれない。

そう思っていた時に、
「もし唯がチャンスをくれるなら、旅行の時に体調を崩さないように旅行前から体調を整える。
旅行前日も早く寝て寝不足にならないようにする。
だから、一緒にいて欲しい」
凌亮が涙と鼻水をティッシュで拭いながらそう言った。