こちらの続きです。




年に一度の旅行には力が入った。


どこに行くか候補をあげて、凌亮の希望を聞く。


場所が決まったら宿泊先をまたいくつかピックアップして、プレゼンをするかのようにまとめて凌亮に選んでもらう。


宿泊先が決まれば予約。


新幹線を使う時は新幹線のチケットも手配。


観光地も調べ上げて、移動時間や滞在時間を計算し、行程表も作る力の入れっぷりだった。


どうせ行くなら効率的にいろんな場所を巡りたい。


同じプランでも一番お得な旅行サイトを調べたりするのが好きな私は、旅行の計画を立てるのが楽しい時間でもあった。


でも独りよがりにはならないよう、いろんな選択肢を用意して、必ず凌亮に最終的な判断はしてもらうようにしていた。


「全部唯に旅行の準備してもらってごめんね。ありがとう」


そう言ってくれる凌亮。


しかし旅行の数日前からいつも雲行きが怪しくなる。


ほぼ100%凌亮は体調を崩してしまうのだ。


旅行当日にはどうにか回復傾向にあって、旅行自体を中止したことは一度もないのだが、毎回本調子ではない。


完璧に仕上げた行程表どおり進めたいのに、その通りにはいかないことだらけで私は旅行中だんだん腹が立ってくるのだった。


1年に1回の旅行だから全力で楽しみたいのに、どうして毎回旅行に合わせて体調を崩すの?


わざとなの?


そんなわけないのにそう思ってしまう私。


凌亮も凌亮で、日々仕事に終われ、家に帰っても心を休ませることができなくて、免疫力低下の一途。


旅行に行くことは楽しみではあったが、体が限界で体調を崩してしまう。


それなのに体調が良くない自分にだんだん素っ気なくなる私に不満が募っていったのだろう。


そもそも体調が悪くなくても、2日目は日中から車を運転していても「眠い」を連発する凌亮に助手席にいる私は気を遣わなきゃいけないし、運転を代わればすぐに爆睡。


電車移動の旅行は座席に座った途端すぐ寝ちゃうから、降りる駅が近づくと起こすということを繰り返し、全然楽しくなかった。


凌亮とはいろんな場所へ行った。


もちろん楽しいこともたくさんあったけど、そのすべての場所に苦い思い出も残して来た。


帰りの車の中では、楽しかった観光地の話で盛り上がったり、次の旅行の話をしたかったけど、現実はそれぞれ思うところがあって無言多め。


新幹線なら本当は新幹線に乗り遅れるぐらい旅行先を満喫したかったのに、現実は早々に駅に着いて待合室で無言の時間を過ごしたり、取ってあった新幹線より早い新幹線の自由席に乗ることばかり。


凌亮もあまり楽しくなかったんだな…とさらに消沈する。


こんなはずじゃなかったのにと悲しくなる。