こちらの続きです。

 


 

 

今から30年前の話に戻る。

 

高校2年生から短大卒業までつきあった、私にとって初めての彼の話。




2浪もして三流大学に入ったその彼は当時大学に入ったばかりだった。

 

『初めての彼』という存在は自分を狂わすものだとつくづく感じる。

 

今思えば、彼のどこを好きになったのかさえわからないし、その彼も本当に私が好きだったのかもよくわからない。

 

当時は私がいいなと思った人が私を恋愛対象として見てくれたというだけで嬉しかったんだと思う。

 

機能不全家族で育った私は『人に必要とされる』ということに大きな意味があって、私を必要としてくれる人を繋ぎ止めるためには自分の感情なんて二の次だった。

 

つきあい始めて気付く価値観の違いに蓋をしつつ、彼の話を肯定して、彼が私に意見を言うことはあっても私が彼に意見することはなかった。

 

私の『初めて』をすべて彼に捧げた。

 

彼は何もわからない私を調教した。

 

「歯があたる」

何度も言われて、でもどう気をつけたら良いのかわからないし、顎関節気味な私には苦痛でしかなかった。

 

「だんだん上手になってきたね」

なんて彼は飴と鞭のようにたまに褒めたけど嬉しくもなんとも感じなかった。

 

そんなに苦労しても口ではいけず、私の中でも無理で、私の手を自分の快感に合わせて動かすのが一番気持ち良いらしい。

 

私の中も気持ち良くないのかと自信を失う。

 

やがて昇りつめると慌てて私の口に持っていき、

「勿体無いから溢さないで全部飲んで」

と強要される。

 

私は気持ち悪くて全て吐き出したいのに言いつけを守った。


行為が終わってしばらくするとお腹が下った。


飲み込んだそれで腹を下す女…なんて惨めなの。

 

彼には言えなかった。


それもあってますます彼との行為が嫌になっていったが、もちろん彼には何も言えなかった。