リアルに描いて下さいと書いたら3Dになってしまいました

自作のお話で最大出力を誇る最強レベルの機体

これと下の白い機体が一騎打ちする

 

 

 

自作のお話の主人公機

高速機動戦重視の機体

 

 

量産機

各種追加装備でバリエーションが豊富な設定

 

 

 

狙撃が得意な機体

頭頂部のは狙撃時に展開する精密照準器

 

 

何となく黄金バージョンも作ってみました

 

 

 

主に低高度の空中戦を行う機体

頭頂部に伸縮式センサー

後方に伸びた4つの物体は曳航式デコイ

 

AIによって描き方が違い

中には出来上がったら

ガンダムみたいになったものもありました 苦笑

オリジナルの機体はまだまだあるので

またやってみようかと思います

 

 

ファンタジーにありがちなお話だけど

今の人類もやはり出来ていない

欲望と偏見を抑える事

それにより争いや不幸が起こる事が解っているのに

人は精神的には進歩せず

常に欲望と偏見に敗北し続けています

がこれにより技術的には発展をして来ました

結局 善悪は表裏一体で

全ての物事にはメリットとデメリットが

共存しているという事ですね

 

 

 

# 農民の勇者

## 一

辺境の寒村で育った少年リオンは、
十六歳の冬、勇者に選ばれた。

リオンの村は、戦争で疲弊していた。
若い男たちは次々と徴兵され、最前線へ送られた。
村に残ったのは老人と女性、そして子供たち。
畑仕事は人手不足で、
春の種蒔きも秋の収穫も遅れがちだった。
用水路の修理も橋の補修も、十分にできない。
かつて五十戸あった村は、今では三十戸。
空き家が目立ち始めていた。

リオンの父は、十年前に戦場から戻ってきた。
左足を失って。
粗末な木の義足で歩く父の姿を、
リオンは子供の頃から見てきた。
雪の日、父が滑って転ぶのを何度も見た。
それでも父は文句を言わず、畑を耕し続けた。

「戦争なんて、何の意味もなかった」

父は時々、そう呟いた。

「仲間が死んでいくのを見て、自分も足を失って。
何のためだったのか、今でもわからない」

選定の儀式は形式的なものだった。
王国の魔術師が村々を巡り、聖剣に触れさせる。
聖剣が光れば勇者の資質ありとされる。
リオンの手が剣に触れた瞬間、淡い光が灯った。
それだけで、彼の運命は決まった。

「おめでとう、勇者様」

魔術師の言葉に、村人たちは歓声を上げた。
だがリオンの母は泣いていた。
父は義足で立ったまま、黙って息子の肩を叩いた。
その手が、わずかに震えていた。
勇者に選ばれるということは、
最前線に送られるということだ。
そして最前線から帰還する者は、ほとんどいない。
父は知っていた。
戦場がどんな場所か。

王都での訓練期間はわずか一ヶ月。
リオンは基本的な剣術と魔法防御の知識を詰め込まれ、
聖剣と簡素な鎧を与えられて最前線へと送られた。

## 二

最前線の光景は、リオンの想像を超えていた。

見渡す限りの荒野に、巨大な軍事基地が築かれている。
数万の兵士が駐留し、毎日のように物資を
運ぶ輸送隊が到着する。
食料、武器、魔法の触媒、医療品。
山のように積み上げられ、消費され、
また運び込まれる。

「これが戦争か」

リオンは呟いた。
村では、冬になると食べ物が不足した。
母は自分の分を減らして子供たちに食べさせた。
なのにここでは、腐った食料が捨てられている。

基地から数キロ先に、魔族の領域がある。
そこには見えない境界線があり、
魔王軍はそれを越えて攻めてこない。
人類側も、その線を越えて攻め込めば、
必ず魔王が現れて全軍が壊滅する。

「なぜ停戦しないんですか?」

リオンは配属された部隊の隊長に尋ねた。
老練な騎士は苦笑した。

「お前、本当に農民だな。
戦争ってのは勝つためにやるもんだ」

「でも勝てないんでしょう? だったら」

「黙れ」

隊長の声が硬くなった。
「勇者だからって、好き勝手言っていいと思うな。
命令に従え」

## 三

最初の戦闘は、三日後に起きた。

魔族側が小規模な偵察部隊を送ってきた。
人類側は迎撃部隊を編成し、リオンも駆り出された。

戦場に立って、リオンは驚いた。
貴族出身の指揮官は高台で酒を飲みながら、
無策に突撃命令を出す。
兵士たちは従うしかなく、
魔獣の爪と牙に次々と倒れていく。

「撤退を! 一度引いて態勢を立て直すべきです!」

リオンが叫んだが、指揮官は聞かなかった。

「勇者なら戦え! それがお前の役目だろう!」

仕方なくリオンは聖剣を抜いた。
剣は確かに魔獣を斬り裂く。
だが一人で何ができる? 
周りで仲間が死んでいくのを、
ただ見ているしかなかった。

戦闘が終わった時、
人類側の被害は甚大だった。
百人の兵士のうち、生き残ったのは三十人。
魔族側の被害はわずか。

「こんな戦い方じゃ、勝てるわけがない」

リオンは血に染まった大地に膝をついた。

## 四

夜、リオンは基地の倉庫で物資の記録を調べていた。

驚くべき事実が明らかになった。
この基地で消費される物資の七割は、
貴族や上級将校の贅沢品だった。
高級な酒、絹の寝具、貴重な香辛料。
一方で一般兵士の食事は粗末で、
医療品も不足している。

「なんのための戦争なんだ」

リオンの拳が震えた。

資料をさらに読み進めると、
戦争の真の目的が見えてきた。
魔族領の先には、エネルギー資源となる
魔晶石の鉱脈がある。
それを手に入れれば、貴族たちはさらに豊かになれる。
今でもエネルギーは足りている。
ただ彼らが、もっと贅沢をしたいというだけだ。

「村では、冬に凍死する老人がいる。
薬が買えずに死ぬ子供がいる。
なのに貴族は、
もっと贅沢がしたいから戦争を続ける」

リオンは父の姿を思い出した。
義足で畑を耕す背中。
人手不足で荒れていく村。
最前線に送られて帰ってこない若者たち。
村の整備もままならず、
去年の大雨で壊れた橋はまだ直っていない。

リオンの中で、何かが変わった。

## 五

次の戦闘で、リオンは命令に従わなかった。

「全軍突撃!」
という指揮官の命令を無視し、
後方の弓兵部隊に指示を出した。

「魔獣の動きをよく見てください。
左前足に傷がある個体から狙うんです。
動きが鈍いから確実に仕留められる」

兵士たちは戸惑ったが、
リオンの真剣な眼差しに従った。
戦術は功を奏し、
被害を最小限に抑えながら魔獣を撃退できた。

指揮官は激怒した。

「貴様! 命令違反だぞ!」

「はい。でも兵士の命を守りました」

リオンは怯まなかった。
「あなたの命令に従っていたら、
また多くの仲間が死んでいました」

「勇者だからって調子に乗るな!」

貴族の指揮官は剣を抜いた。
だが周りの兵士たちが、静かにリオンの前に立った。

「指揮官殿、
リオン殿のおかげで我々は生き延びました」

老練な隊長が言った。
「もし彼を罰するなら、我々も共に罰を受けます」

指揮官は悔しそうに剣を収めた。

## 六

リオンの評判は兵士の間で広まった。
農民出身の勇者は、贅沢をせず、
兵士と同じ食事を取り、
戦術を工夫して仲間の命を守る。

一方で、貴族や上層部からの風当たりは強くなった。
リオンは呼び出され、王国の将軍に叱責された。

「君は勇者として魔王を倒すために選ばれた。
兵士の面倒を見るためではない」

「魔王を倒す? でも魔王は攻めてきません」

リオンは真っ直ぐに将軍を見た。
「この戦争は、魔晶石が欲しいからでしょう? 
国民が苦しんでいるのに」

「黙れ!」

将軍の顔が紅潮した。
「貴様のような小僧に、何がわかる!」

「わかります」

リオンは静かに答えた。
「国を支えているのは国民です。
国民を大切にしない国は衰退します。
僕の村でも、お互いを助け合わなければ
冬を越せませんでした。
国も同じじゃないんですか?」

将軍は何も言えなかった。

## 七

ある夜、魔族側から使者が来た。

使者は人間の言葉を話す魔族で、
リオンに会いたいと言った。
警戒する兵士たちを説得し、
リオンは使者と会談した。

「勇者よ、我々は戦いたくない」

使者は告げた。
「魔王様はこのラインより先を攻める気はない。
我々の領土を守れればそれでいい」

「では、なぜ停戦しないんですか?」

「何度も停戦を提案した。
だが君たちの上層部は、
いつも魔晶石の採掘権を要求してくる。
それは我々の生命線だ。譲れない」

リオンは理解した。
これは侵略戦争なのだ。
魔族が攻めてきたのではない。
人類側が、資源を奪おうとしているだけだ。

「僕に何ができますか?」

「真実を広めてほしい」

使者は言った。
「兵士たちに、この戦争が何のためなのかを
知らせてほしい。そうすれば、きっと変わる」

## 八

リオンは決意した。

彼は兵士たちを集め、戦争の真実を語り始めた。
魔晶石のこと、貴族の贅沢のこと、
故郷で苦しむ人々のこと。
最初は半信半疑だった兵士たちも、
次第にリオンの言葉に耳を傾けるようになった。

「俺たちは何のために戦ってるんだ?」

「家族を守るためじゃなかったのか?」

疑問の声が広がっていった。

上層部は危機感を抱き、リ
オンを反逆者として処刑しようとした。
だが兵士たちが蜂起し、リオンを守った。
基地は混乱に陥った。

その時、魔王が現れた。

圧倒的な力を持つ魔王の前で、人々は恐怖に震えた。
だがリオンは、聖剣を鞘に収めたまま、
魔王の前に進み出た。

「魔王様、話がしたい」

魔王は驚いたように少年を見下ろした。
そして、ゆっくりと頷いた。

## 九

魔王との対話は、一晩続いた。

魔王は語った。
かつて人間と魔族は共存していたこと。
だが人間の一部が力を求めて魔族を攻撃し、
多くの命が失われたこと。
魔王は自分の民を守るために力を得たこと。

「私は復讐をしたいわけではない。
ただ、もう二度と我が民が苦しまないように、
守りたいだけだ」

「わかります」

リオンは答えた。
「僕も同じです。故郷の人々を守りたい。
でもこの戦争は、誰も守っていません」

「では、どうする?」

「変えるんです」

リオンの目が輝いた。
「人類側を、中から」

## 十

夜明けとともに、リオンは基地に戻った。

兵士たちは固唾を呑んで待っていた。
貴族の指揮官たちは震えていた。

「魔王と停戦の合意ができました」

リオンの言葉に、どよめきが起きた。

「条件は三つ。一つ、魔晶石の採掘を諦めること。
二つ、この基地を縮小し、
最小限の監視部隊のみ残すこと。
三つ、解放された兵士と物資を、
各国の復興に充てること」

「ふざけるな!」

貴族の一人が叫んだ。
「魔王の言いなりになるのか!」

「いいえ」

リオンは首を振った。
「これは、僕たち自身のための選択です」

彼は兵士たちに向き直った。

「皆さん、考えてください。
ここで戦い続けて何が得られますか? 
故郷で待つ家族は? 畑は? 仕事は? 
僕の村では、戦争で若者がいなくなり、
畑は荒れ、橋も直せない。
僕の父は十年前に戦場で足を失いました。
今も義足で畑を耕しています。
それでも何も変わらない。
戦争は続き、また人が送られる。
僕たちが本当に守るべきものは何ですか?」

沈黙が訪れた。
そして、一人の兵士が剣を地面に置いた。
次々と、他の兵士たちも武器を下ろした。

「帰ろう」

誰かが呟いた。「故郷へ」

## 終章

それから一年。

巨大な基地は解体され、少数の監視隊だけが残った。
数万の兵士たちは故郷に帰り、農業や商業に従事した。
浮いた物資と資金は、各地の復興に使われた。

リオンは勇者の称号を返上し、故郷の村に戻った。
村には若者たちが戻ってきていた。
荒れていた畑が再び耕され、
壊れていた橋が修理され、
笑い声が響くようになった。

父は義足のまま、息子の隣で畑を耕していた。

「よく帰ってきたな」

父は短く言った。
「お前が変えてくれたんだな、この国を」

「まだ途中です」

リオンは答えた。
「でも、始まりました」

時々、各地を巡って人々に語りかけた。
戦争のこと、平和のこと、
本当に大切なものについて。

貴族の一部は反発したが、
民衆の支持を得たリオンの改革を
止めることはできなかった。
やがて、王国の政治体制そのものが、
少しずつ変わり始めた。

ある春の日、リオンは畑を耕していた。
汗を流し、土に触れ、種を蒔く。
こんな当たり前のことが、
一番大切なのだと、彼は思った。

「リオン兄ちゃん!」

村の子供が駆けてきた。
「魔族の人が来たよ!」

驚いて顔を上げると、あの使者が立っていた。
隣には魔族の子供たちもいる。

「交流プログラムを始めようと思ってね」

使者は微笑んだ。
「人間の子供たちと、魔族の子供たちが
一緒に学ぶんだ。
そうすれば、きっと未来は変わる」

リオンも微笑んだ。

「ええ、きっと」

太陽が昇り、新しい一日が始まる。
畑には種が蒔かれ、子供たちの笑い声が響く。

戦争は終わった。
貴族支配の時代も終わった。
人類と魔族は共存の道を歩み始めた。

だが、リオンは知っていた。

人の欲望は決してなくならない。
もっと豊かになりたい、もっと力が欲しい、
もっと楽をしたい。
そういう欲望は、人の心に常にある。
そして偏見もまた、簡単には消えない。
見た目が違う、文化が違う、
だから信用できないという思いは、
心の奥深くに根を張っている。

いつか、また誰かが欲望に駆られて、
魔晶石を狙うかもしれない。
いつか、また誰かが偏見を煽って、
魔族への憎しみを広めるかもしれない。
新しい支配者が現れて、
民衆を搾取しようとするかもしれない。

「だからこそ、僕たちは見張っていないといけない」

リオンは呟いた。
「自分自身の心も、社会も」

完璧な世界など存在しない。
人は過ちを犯す。欲望に溺れ、偏見に囚われ、
また同じ過ちを繰り返そうとする。

でも、それに気づくことができる。
立ち止まって考えることができる。
間違いを正すことができる。

それが、本当の戦いなのだ。
武器を持って戦場に立つことではなく、
自分の心と、社会の歪みと、日々向き合い続けること。
それは終わりのない、長い長い戦いだ。

リオンは鍬を握り直し、また土を耕し始めた。

明日も、明後日も、この戦いは続く。
欲望と偏見が完全になくなることはない。
だからこそ、諦めずに向き合い続けなければならない。

それが、この新しい世界を守るということなのだから。

ふと、リオンは子供たちの方を見た。
人間と魔族の子供たちが、
一緒に笑いながら遊んでいる。

「あの子たちに、ちゃんと教えないと」

リオンは心に誓った。

自分がされて嫌なことは、他人にもしてはいけない。

それは母が幼い頃に教えてくれた、
とても単純な言葉だった。
殴られたら痛い。だから人を殴ってはいけない。
馬鹿にされたら悲しい。
だから人を馬鹿にしてはいけない。
奪われたら困る。だから人から奪ってはいけない。

戦争も、搾取も、差別も、
すべてはこの単純な原則を忘れたから起きたのだ。

「この教育を、徹底しなければ」

リオンは使者に向かって歩いていった。

「交流プログラムに、一つ追加してもらえませんか」

「何を?」

「すべての学校で、すべての子供たちに教えるんです。
人間にも魔族にも。自分がされて嫌なことは、
他人にもしてはいけないと。
何度も何度も、繰り返し教えるんです」

リオンは畑を見渡した。
春に種を蒔き、夏に世話をし、秋に収穫する。
一年がかりの仕事だ。

「それから、もう一つ」

リオンは続けた。
「壊すのは一瞬だけど、生み出すことは
大変な苦労と多くの年月がかかるということも。
この畑を見てください。
父と僕が何年もかけて耕し、肥やし、整えた土です。
でも、もし誰かが一晩で荒らせば、
すべてが台無しになる。
それを元に戻すには、また何年もかかるんです」

使者は静かに頷いた。

「戦争も同じだった。何世代もかけて築いた村が、
一日の戦闘で焼け野原になる。
何十年もかけて育てた森が、一瞬で切り倒される。
人の命も、信頼も、文化も、壊すのは簡単だけど、
作るのには途方もない時間がかかる」

「それは素晴らしい考えだ」

使者は深く頷いた。
「魔族側でも同じことを提案しよう。
子供たちには、創造の尊さと、破壊の愚かさを、
しっかりと教えなければならない」

「ありがとうございます」

リオンは微笑んだ。
「これを次の世代に、そのまた次の世代に、
ずっと伝え続けるんです。
自分がされて嫌なことは他人にもしない。
そして、何かを壊すのは簡単だけど、
作り上げるには多くの苦労と年月がかかる。
この二つを心に刻めば、きっと」

完璧にはならないかもしれない。
それでも、この教えを心に刻んだ子供たちが育てば、
世界は少しずつ良くなっていく。
安易に破壊を選ばず、
創造の大切さを知る人々が増えていく。

太陽が高く昇り、畑を照らしている。
リオンは再び鍬を手に取った。

種を蒔こう。土の中に、子供たちの心に。

一瞬で壊せるものを、時間をかけて丁寧に育てる。
それが農民の仕事だ。
そして今は、それが皆の仕事なのだ。

より良い未来という、小さな種を。

―完― 

 

ダンジョンボス戦の

クライマックスだけを作ってみました

 

 

 

# 静寂の刃

ダンジョンの最深部は、死の臭いで満ちていた。

ボスの間の中央に立つジャイアントは、
全高五メートルを優に超える巨体だった。
その両腕には、人の背丈ほどもある
大剣が握られている。
一振りするたびに空気が唸り、
石床に火花が散った。

俺の得物は腰のダガー。
長さにして三十センチ程度。
あの化け物に挑むには、あまりにも心許ない。

周囲には数十の屍が転がっていた。

ギルドの酒場でいつも陽気に笑っていたベテラン剣士。
迷宮の罠に俺がかかった時、
真っ先に駆けつけてくれた魔法使い。
よく通う定食屋の主人が自慢していた息子。
つい一週間前に冒険者になったばかりの少年。

知った顔ばかりだった。

不思議と、怒りは湧いてこなかった。
悲しみも、憎しみも。
ただ、静かな水面のような冷静さだけが
心を満たしていた。
顔は穏やかなままだ。自分でも驚くほどに。

一度、深く息を吸った。

そして、ジャイアントに向かって歩き始めた。

ゆっくりと。とてもゆっくりと。

眼前では絶え間なく大剣が空を裂いている。
横薙ぎ、縦斬り、袈裟懸け。
隙間なく振るわれる刃は、
確実に命を刈り取る死神の鎌だ。

「おい、やめろ!」

「逃げろ! 死ぬぞ!」

遠巻きに見ていた冒険者たちが叫んでいる。
正気を失ったと思われているのだろう。

だが、俺は歩みを止めなかった。

声が聞こえていないわけではない。聞こえている。
ただ、それに応える必要を感じなかっただけだ。

一人の冒険者が、息を呑んだ。

「……当たって、ない?」

そうだ。当たっていない。

俺は避けているわけではない。
ただ真っ直ぐ歩いているだけだ。
それなのに、ひっきりなしに振るわれる大剣は、
一度たりとも俺の身体を捉えていない。

まるで俺とジャイアントが、
別々の世界に存在しているかのように。

不可解な光景だった。
常識で考えれば、あの大剣の間を無防備に歩けば、
即座にバラバラになるか
吹き飛ばされるかのどちらかだ。
それなのに、それが起こらない。

現実として、目の前にある。

俺はダガーを抜いた。

そして、ゆっくりと振った。

ジャイアントの右腕から、鮮血が噴き上がった。

「グオオオッ!」

ジャイアントが咆哮を上げる。
だが、俺の歩みは変わらない。
ダガーを振るうたび、
その腕に新たな傷が刻まれていく。

一つ、また一つ。

傷は見る間に増えていった。
大剣を振るう速度が、徐々に落ちていく。

俺の身体は返り血で真っ赤に染まっていた。
温かい血液が頬を伝い、地面に滴り落ちる。

ジャイアントの両腕は、もはや傷だらけだった。
筋肉が断裂し、骨が見え、
大剣を支えることすらままならない。

「ゴ……ガッ……」

遂にジャイアントは膝をついた。

俺は最後に、大きくダガーを振り抜いた。

一瞬の静寂。

そして、巨大な首が宙を舞い、
唖然とする冒険者たちの前に転がり落ちた。

しばしの沈黙の後、その場が大歓声に包まれた。

「やったぞ!」

「ボスを倒した!」

「信じられない……!」

だが、俺は喜ばなかった。

振り返り、床に横たわる仲間たちを見つめる。
もう二度と笑うことのない彼ら。
もう二度と酒を酌み交わすことのない彼ら。

勝利の歓声が遠くに聞こえる中、
俺はただ静かに、彼らのために祈りを捧げた。

 

スポーツ競技を見ていて

人類の記録を超えるには

機械とのハイブリッドしかないのでは?

と思い現在は公式競技には出られない

動力装置付き装具装着者が

将来 人類の記録を塗り替えそうと思い

そういう話を作ってみました

 

 

 

# 鋼鉄の翼

スタートラインに立つ瞬間が、誰よりも好きだった。

春野健太は県内屈指のスプリンターとして、
高校三年の夏を迎えようとしていた。
百メートル走で10秒8。
インターハイ日本記録も夢ではない記録だ。

健太には、幼い頃からの夢があった。
誰よりも速く走ること。ただそれだけ。
世界で一番速い人間になること。
その夢のためなら、どんな苦労も惜しまなかった。

毎朝4時に起床し、
誰もいないトラックで基礎トレーニング。
授業が終われば即座に練習場へ直行。
夜は自宅でウェイトトレーニングと柔軟体操。
食事は栄養士に相談して
組んだメニューを厳密に守る。
友人との遊びも、恋愛も、全て後回し。
睡眠時間すら計算し尽くされていた。

「健太、たまには休めよ」

チームメイトたちは心配そうに言ったが、
健太は笑って首を横に振った。

「休んでる暇なんてない。
世界記録保持者は、
俺が休んでる間も走ってるんだから」

足の裏の皮が剥け、血が滲んでも走った。
筋肉痛で階段を降りられない日も、
トレーニングは欠かさなかった。
コーチに「やりすぎだ」と止められても、
隠れて練習を続けた。

速く。
もっと速く。
限界の、その先へ。

その執念が、10秒8という記録を生み出した。
でも健太は満足していなかった。
10秒の壁。さらにその先の9秒台。
世界記録の9秒58。
全てを超えていきたい。
頂点に立ちたい。

それが、春野健太という人間の全てだった。

県大会まであと二週間。

その日も夕方遅くまで居残り練習をしていた健太は、
暗くなった帰り道をいつものように歩いていた。
スマートフォンで
明日のトレーニングメニューを確認しながら。

次の瞬間、視界が激しく回転した。

鈍い衝撃音。悲鳴。
自分のものか、誰かのものか分からない。
アスファルトの冷たさを背中に感じた後、
意識が途切れた。

ながらスマホをしていた高級車のドライバーは、
健太に気付くのが遅すぎた。

---

目が覚めたとき、
病室の白い天井が視界いっぱいに広がっていた。

「健太...」

母の泣き腫らした顔が、ぼんやりと見えた。
父は窓際に立ち、背を向けていた。
その肩が小刻みに震えているのが分かった。

医師の説明は淡々としていた。
両足大腿部からの切断。神経の損傷が激しく、
再接合は不可能。車椅子での生活になる。

言葉の意味が理解できなかった。
いや、理解したくなかった。

「走れない...のか」

医師は無言で頷いた。

その日から、健太の世界は色を失った。

リハビリ室で初めて車椅子に座ったとき、
鏡に映る自分の姿を直視できなかった。
膝から下が消失した両足。
それまで毎日酷使し、
鍛え上げてきた筋肉が途切れている。

夜、誰もいない病室で、健太は窓の鍵に手をかけた。

五階。十分な高さだ。

「健太!」

父が飛び込んできた。
まるで予感していたかのように。
力強く息子を抱きしめ、声を殺して泣いた。

その後も健太は何度か試みた。
だが父は、まるで影のように健太を見守り続けた。

---

事故から三ヶ月後のある朝、
父が健太の部屋に入ってきた。

「健太、俺についてこい」

有無を言わさぬ口調だった。

車で二時間ほど走り、
着いたのは郊外の研究施設だった。
外観は普通のオフィスビルだが、
警備は厳重で、入口では網膜認証まで求められた。

「ここは...?」

「お前を、もう一度走らせる場所だ」

地下三階。
白衣を着た研究員たちが行き交う廊下を抜け、
広い実験室に案内された。

「春野社長、お待ちしておりました」

初老の男性研究者が近づいてきた。
名札には「主任研究員 橘誠一郎」とあった。

「息子さんですね。噂は聞いております。
県内トップクラスのスプリンターだったとか」

「...でした、ね」

健太の声には棘があった。

橘は優しく微第んだ。

「いいえ。『です』で間違いありません」

実験台の上に、何かが置かれていた。
人間の脚に似ているが、明らかに機械だった。
艶消しの黒い外装。
関節部分には小さなモーターらしきものが
無数に配置されている。
ケーブルと制御基板が複雑に絡み合い、
まるで神経と筋肉のように見えた。

「これが、最新型のパワードプロステーシス。
動力補助付き義肢です」

橘の説明が始まった。
超小型高出力モーター、
カーボンナノチューブ複合材のフレーム、
リアルタイム姿勢制御AI、
神経接続インターフェース。
技術的な詳細は健太には理解できなかったが、
一つだけ明確に分かったことがあった。

「これを使えば、走れるのか」

「走れます。しかも」
橘は少し間を置いた。

「健常者の記録を超える速度で」

健太の心臓が高鳴った。

「ただし」
父が口を挟んだ。

「パラリンピックをはじめとする
公式競技では使えない。
動力補助は規則で禁止されている」

「...それでもいい」

健太の返事は即座だった。

「記録が公式なものにならなくても構わない。
俺は、ただ走りたい。速く走りたい。
限界を超えたい」

父と橘は顔を見合わせ、頷いた。

---

装着手術は六時間に及んだ。
大腿部の神経末端と義肢のインターフェースを
接続する、繊細な作業。
麻酔から覚めたとき、
健太の脚には二本の黒い義肢が取り付けられていた。

「動かしてみてください。歩くイメージを強く持って」

橘の指示に従い、健太は立ち上がることを想像した。

モーターの微細な駆動音。
義肢が、まるで自分の意志に呼応するように動いた。

上体が持ち上がる。

立ち上がった。

三ヶ月ぶりに、自分の足で。

「あ...ああ...」

涙が溢れた。止められなかった。

「歩いてみましょう」

一歩。
二歩。
義肢の感覚は自然で、
まるで元からそこにあったかのようだった。
重心移動に合わせて自動的に出力が調整され、
バランスを保ってくれる。

「走っても?」

「まだ慣れていないので、軽くジョギング程度に」

健太は聞いていなかった。

走り出していた。

実験室の端から端まで。
風を切る感覚。
地面を蹴る感覚。
それらが、確かに戻ってきた。

いや、これは以前のものとは違う。

もっと強く。もっと速く。

「速い...事故前より、速い!」

健太の顔は、数ヶ月ぶりに笑顔に染まった。

「本気で走ってみたいです。外の運動場で、全力で!」

橘は少し考えてから頷いた。

「分かりました。
ただし、私たちが測定機器を設置するまで
待ってください」

---

研究施設の裏手には、百メートルトラックがあった。
ここで義肢装着者のテスト走行を行うのだという。

夕暮れの空が、トラックをオレンジ色に染めていた。

スタートラインに立つ。

この感覚。忘れていた、この昂揚感。

「準備はいいですか、健太くん」

橘がストップウォッチを構えた。

健太は深く息を吸った。
三ヶ月間。走れなかった日々。
絶望。
自殺を考えた夜。
それら全てを、今ここで置いていく。

「いきます」

スタート。

爆発的な加速。
義肢のモーターが全開で駆動し、
人間の筋力を遥かに超える推進力を生み出す。
五十メートル地点。まだ加速している。
空気抵抗すら感じない。
七十メートル。
八十メートル。
世界が流れていく。

ゴール。

「10秒52!」

橘の声が響いた。

健太は立ち止まり、両手を空に向けて広げた。
叫んだ。
咆哮した。
事故後から積み重なっていた
鬱憤、悲しみ、怒り、
全てを解放するように。

「10秒52...義肢走者の世界記録が10秒61。
ほぼ並んだ...いや」

橘が興奮した様子で近づいてきた。

「健太くん、
これはまだ出力を50パーセントに
制限した状態なんです。
慣らし運転のようなものです」

「え?」

「フルパワーで、
かつ健太くんの技術が最適化されれば...」

橘は一度言葉を切り、真っ直ぐに健太の目を見た。

「8秒は切れます」

時が止まった。

8秒。

世界記録は9秒58。

その壁を、超えられる。

「本当に...?」

「ええ。義肢の性能的には十分可能です。
後は健太くんのトレーニング次第」

健太は再び空を見上げた。

夕焼けが、燃えるように赤かった。

公式記録にはならない。
パラリンピックにも出られない。
誰も認めてくれないかもしれない。

でも、構わない。

人類最速。

その称号は、確かにこの手で掴める。

健太の瞳は、かつてないほど強く輝いていた。
失ったものは大きかった。
でもそれ以上に、得たものがある。

限界を超える翼を。

「橘さん」

「はい?」

「明日から、本格的なトレーニングを始めます」

健太は拳を握りしめた。

「8秒じゃない。7秒台を目指します」

橘は驚いたように目を見開き、それから豪快に笑った。

「いいでしょう。やってみましょう、健太くん。
人類の限界を、一緒に超えましょう」

父が遠くから見守っていた。
息子の笑顔を見て、静かに涙を流していた。

あの日失われた夢が、新しい形で蘇った。

いや、これは以前の夢の延長ではない。

全く新しい、もっと高みを目指す夢だ。

健太は再びスタートラインに立った。
もう一度走りたかった。何度でも走りたかった。

夜の帳が降りる中、モーターの駆動音が響き渡る。

鋼鉄の翼を得た少年は、
誰よりも速く、暗闇を駆け抜けていった。

**【完】**

たまにいるプライドの高い使えない人

自分は優秀だと思っているけど

周りからは全くそう思われていない人

意識高いと言う割に

法律も社会のルールも守れない人

そんな人達をよく見かけます

やっていて恥ずかしくないのかな?

って思うけど価値観が違うんでしょうね

 

 

 

# 意識高い系な裸の王様たち

## 一

オフィスの朝は、高橋のため息から始まる。

「おい、この資料まだできてないのか?
昨日頼んだだろ」

デスクに立つ男の声は、朝の静寂を切り裂いた。
田中主任だ。
四十代半ば、痩せ型で眼鏡をかけた彼は、
東京大学経済学部を卒業し、
自分を「この部署で最も優秀な人材」
と信じて疑わない。
学歴こそが自分の価値を証明していると、
彼は常々口にしていた。

「申し訳ございません。
田中主任が昨日の夕方に
急に別の案件を優先するよう指示されたので……」

「言い訳するな。
優先順位をつけるのも仕事のうちだろ。
使えないな」

田中主任は舌打ちをして、自分のデスクに戻る。
彼の周りでは、誰もが目を合わせないようにしている。
彼の仕事ぶりは確かに熱心だ。
誰よりも早く出社し、企画書も積極的に提出する。
しかし、その企画の下調べは部下任せ、
資料作成も部下任せ、
面倒な取引先への対応も全て部下任せだ。

「ありがとう」
という言葉を、誰も彼から聞いたことがない。

その日の昼休み、
給湯室では恒例の井戸端会議が開かれていた。

「また田中さん、新人の山田君を怒鳴りつけてたわ」

「あの人、自分がやった仕事みたいに
部長に報告してるけど、
実際は全部私たちがやってるのにね」

「東大出てるからって、何様のつもりなのかしら。
学歴があれば何してもいいと思ってるのよ」

「せめてお礼の一つでも言ってくれればいいのに。
『当然だろ』って顔してるもんね」

彼らの陰口を、田中主任は知らない。
いや、知る気もない。
自分は正しく、自分は優秀で、
周りが自分についてこられないだけだと、
心から信じている。

大学時代も同じだった。
彼はテニスサークルで幹事長を務め、
まるで王様のように振る舞っていた。
「俺が東大生だから」という理由で、
後輩たちに雑用を押し付け、
合宿の準備も飲み会の予約も全て人任せ。
それでも「俺のおかげでサークルが盛り上がっている」
と本気で信じていた。
卒業式の日、
後輩たちが「やっと解放される」
と喜んでいたことを、彼は知らない。

## 二

同じオフィスの三階下、
マーケティング部には木村麻衣子がいた。

二十代後半の彼女は、
慶應義塾大学文学部を
優秀な成績で卒業した経歴を持つ。
今日もシャネルのジャケットに身を包み、
エルメスのバッグを肩にかけている。
デスクの上には最新のiPhoneと、
高級ブランドのペンケース。
彼女の周りだけが、
まるで別世界のような輝きを放っていた。

「今日のランチ、銀座の新しいフレンチ行くんだ。
一人二万円くらいするけど、
意識高く生きるためには必要な投資よね」

隣のデスクの同僚が、お弁当を開けながら苦笑いする。

「いいわね、麻衣子ちゃんは。
私なんて節約のために毎日お弁当よ」

「え、まだそんなことしてるの?
時間がもったいなくない?
外食してその時間で自己啓発したほうが絶対いいよ。
私、慶應出てるから分かるけど、
意識高い人はみんなそうしてるよ」

麻衣子の言葉には、悪意はないのかもしれない。
しかし、その無邪気な上から目線は、
周りの人々を確実に傷つけていた。

実は、彼女の華やかな生活は
全て両親の仕送りで成り立っていた。
家賃も、光熱費も、食費も、服飾費も。
給料の大半は趣味の買い物に消え、
貯金はゼロに近い。
それでも彼女は「自分は努力している」
「自分は特別だ」と信じて疑わなかった。

大学時代も同様だった。
彼女は美容サークルで女王様のように君臨し、
イベントの企画も運営も全て後輩任せ。
自分は可愛い服を着て写真を撮るだけ。
「私が慶應生だから、
サークルのブランド価値が上がってる」
と本気で思っていた。
飲み会では「私、お酒弱いから」と言いながら、
会計は必ず割り勘。
裏で「麻衣子先輩、マジで図々しい」
と言われていたことに、
彼女は最後まで気づかなかった。
卒業式の日も、
「みんな私がいなくなって寂しいだろうな」
と一人で満足していた。

## 三

ある秋の夕暮れ、田中主任は急いでいた。

大事な取引先との会食があり、
既に約束の時間を十五分過ぎている。
彼は信号を無視して、
赤信号の交差点を颯爽と横断し始めた。

「俺は忙しいんだ。信号なんか待ってられるか」

その瞬間、大型ダンプの急ブレーキ音が響いた。

しかし、間に合わなかった。

田中主任の体は宙を舞い、
アスファルトに叩きつけられた。
周囲から悲鳴が上がる。
救急車のサイレンが近づいてくる。
彼の意識は薄れていった。

その日、木村麻衣子も急いでいた。

新作のバッグが発売される百貨店の
オープン時間に間に合わせるため、
彼女はエスカレーターを駆け上がっていた。
「歩行禁止」の張り紙など、目に入らない。

前を歩く老人にぶつかった。
バランスを崩した麻衣子の体は、
エスカレーターの階段を転げ落ちていく。
エルメスのバッグが宙を舞い、
高級時計のガラスが砕け散る音がした。

二人とも、救急搬送された。

## 四

病院の白い天井を、田中主任は見つめていた。

全身を包帯に巻かれ、両足はギプスで固定されている。
医師からは「最低でも半年の入院が必要」
と告げられた。
仕事に戻れるのは、さらにその先だという。

最初に見舞いに来た部下に、彼は言った。

「俺が轢かれたのは、あのドライバーが悪いんだ。
俺は急いでたのに、どうして止まれないんだ。
訴えてやる」

「でも、田中さんが信号無視を……」

「うるさい!俺は被害者だぞ!
それに、お前らがもっと早く仕事を終わらせていれば、
俺はあんなに急ぐ必要なんかなかったんだ。
お前らのせいだ」

部下は黙って病室を出た。
それ以来、見舞いに来る人は誰もいなくなった。

別の病室では、
木村麻衣子が看護師に文句を言っていた。

「なんでこの病院、Wi-Fiがこんなに遅いの?
ありえないんですけど。あと、病院食まずすぎ。
私、オーガニックしか食べないって言ったのに」

「申し訳ございませんが、入院中は病院食を……」

「は?私が怪我したのは、
エスカレーターの設計が悪いからでしょ?
百貨店が悪いのよ。
なんで私が不便な思いしなきゃいけないの?」

彼女の両親が見舞いに来ても、愚痴は止まらなかった。

「パパ、あのエスカレーター訴えてよ。
私が落ちたのは、
あの老人がのろのろ歩いてたからだし、
それを注意しなかった百貨店が悪いのよ。
私は悪くないもん」

父親は深いため息をついた。
四十年間、娘を甘やかし続けてきた自分を、
初めて後悔した。

## 五

半年後、二人は退院した。

田中主任は杖をつきながら、元の職場に復帰した。
しかし、以前のような威勢はない。
体の自由が利かなくなり、
他人に頼らざるを得なくなったからだ。

「おい、この資料運んでくれ」

しかし、誰も動かない。

「聞こえないのか?」

「田中さん、私たちも自分の仕事で忙しいんです。
ご自分でお願いします」

高橋の冷たい声が返ってきた。
田中主任は憤慨したが、
もう昔のように怒鳴ることはできなかった。
周りの目が、以前とは明らかに違っていたからだ。

それでも彼は、
自分が変わる必要があるとは思わなかった。
「あいつらが冷たくなった」
「会社の雰囲気が悪くなった」と、
毎日不満を口にした。

木村麻衣子は、退院後も以前と変わらなかった。

顔に残った傷跡を隠すために、
さらに高価な化粧品を買い求め、
リハビリで歩きにくい体を支えるために、
さらに高価な靴を買った。
全て、両親のカードで。

「私が怪我したのは社会のせいなんだから、
これくらい当然でしょ」

彼女の言葉を、両親はもう否定しなかった。
ただ疲れ果てた目で、娘を見つめるだけだった。

## 六

数年後。

田中主任は、閑職に追いやられていた。
誰も彼と仕事をしたがらず、
重要なプロジェクトから外されていった。
彼は今も、全てを他人のせいにしている。

木村麻衣子は、
三十代半ばになっても両親に依存し続けている。
結婚の話もなく、キャリアも停滞したまま。
それでも彼女は、
「私は悪くない」と信じ続けている。

人は、変わらない。

いや、
正確には、変わろうとしない人は、決して変わらない。

プライドの高い人は、
自分を客観的に見ることができない。
周りが見えているものが、本人には見えない。
まるで、裸の王様のように。

そして、裸の王様は、
最後まで自分が裸であることに気づかないのだ。

世界が間違っていると叫びながら。

自分だけが正しいと信じながら。

孤独の中で。

―完―

このお話は自分が体験した実体験に非常に近いです

当時 アニメや漫画が好き

というだけでかなりの迫害を受けていました

高校卒業後

アニメ製作の為の専門学校に

進学したのですが親も教師も

猛烈に反対していました

多分 犯罪者予備軍のように見ていたのでしょう

仕方なく自分で働いて学費を稼ぎながら

学校に通いました

アニメ製作会社に就職し働いたものの

体を壊して辞めざるを得なくなりました

が自分の意思を貫き

辞める時も仕方なかったものの

納得して辞める事が出来たので

後悔はありませんでした

今 成人してアニメや漫画を見ていても

別に何の迫害もされない世の中になって

本当に良かったと思います

 

 

 

 

# # 好きを貫いて――1980年代、ある高校生の物語

雨が窓を叩く音が、教室に響いていた。

「また集まるのか?」

放課後、俺が鞄を片付けていると、
隣の席の田中が小声で聞いてきた。
声のトーンは、まるで何か危ないことを
確認するようだった。

「ああ、日曜日にな」

俺――田所誠は、できるだけ普通に答えた。
田中は悪い奴じゃない。
ただ、理解できないものを怖がっているだけだ。

「お前ら、いったい何してんの?集まって」

「アニメ見て、感想言い合ってるだけだよ」

「......そうか」

田中は微妙な表情で視線を逸らした。
その目には、明らかに疑念が浮かんでいた。

教室の反対側から、
女子たちのひそひそ話が聞こえてくる。
俺の方をちらちらと見ながら。

「ねえ、田所くんってさ......」

「あー、わかる。キモいよね」

「近寄りたくない。なんか臭そう」

声は小さいが、わざと聞こえるように
言っているのがわかる。
俺が顔を上げると、女子たちは慌てて視線を逸らした。
その目には、まるで汚物でも見るかのような
嫌悪感が浮かんでいた。

廊下ですれ違うときも、女子たちは露骨に距離を取る。
まるで触れたら何か伝染するとでも
思っているかのように。

俺たちは週末になると、
誰かの家に集まってアニメを見る。
録画したビデオテープを持ち寄って、
あのシーンが良かったとか、
この演出がすごいとか、そういう話をする。
ただそれだけのことだ。

でも、周りの反応は違った。

「誠、ちょっといい?」

帰宅すると、母が深刻な顔で俺を呼び止めた。
父もリビングのソファに座って、腕を組んでいる。
テレビでは夕方のニュースが流れていた。

「......容疑者の部屋からは、
大量のアニメビデオと漫画が押収されました。
近隣住民の話では、
容疑者は普段から部屋に閉じこもりがちで......」

アナウンサーの声が、リビングに響く。
画面には容疑者の部屋の映像が映し出され、
本棚に並ぶ漫画が何度もクローズアップされていた。

父がリモコンでテレビを消した。

「また日曜日、あの友達と会うんだって?」

「うん」

「誠......」
母は言葉を選ぶように続けた。

「お母さん、心配なの。
あなた、最近アニメばっかり見てるでしょう?
高校生なのに、そんなの普通じゃないわよ」

「普通って何だよ」

「健太」
父が低い声で割り込んだ。

「お前、将来......変なことしたりしないよな?」

その言葉に、俺は息が詰まった。

「変なことって......」

「いや、最近ニュースでもよく言ってるだろう。
事件を起こした犯人がアニメや
漫画ばかり見ていたって。
お前のその......趣味が、
何か悪い影響を与えてるんじゃないかって、
父さんは心配してるんだ」

「そんなの関係ない!」

「でも、世間はそう見ないの」

母が涙ぐんだ。

「先生にも相談したわ。
先生も、誠のこと心配してくださってる。
もし必要なら、ちゃんとした病院に......」

「病院?俺は病気じゃない!」

「誠、落ち着きなさい。
お父さんとお母さんは、ただお前のためを思って――」

「うるさい!」

俺は自分の部屋に駆け込み、ドアを閉めた。

壁に貼ったアニメのポスターが、
薄暗い部屋で俺を見下ろしていた。
『機動戦士ガンダム』のアムロが、
複雑な表情でこちらを見ている。

なんでだよ。ただ好きなだけなのに。

翌日の昼休み、俺はいつものメンバーと屋上で会った。
同じ学校の佐藤と鈴木、
それに隣の高校から来た山田。
みんな、俺と同じように
肩身の狭い思いをしている仲間だ。

「おい、聞いたか?」
佐藤が深刻な顔で言った。

「高橋、もう来ないってさ」

「え?」

「親に無理やりビデオテープ全部捨てられて、
もうアニメ見るなって言われたんだと。
それで......もう付き合えないって」

鈴木が俯いた。

「俺も親にめちゃくちゃ言われた。
『そんなもの見てると頭がおかしくなる』って」

「クラスでも最悪だよ」
山田が吐き捨てるように言った。

「昨日、アニメ雑誌読んでたら、
クラスの奴らに『キモい』って笑われた。
先生も止めないし、
むしろ『そういうの、ほどほどにしなさい』だってさ」

沈黙が流れた。

「なあ......俺たち、何か悪いことしてるのか?」
佐藤が呟いた。

「ただ好きなもの見てるだけなのに」

「悪くない」

俺は強く言った。三人が顔を上げる。

「悪くないよ。俺たちは何も間違ってない。
親も、教師も、社会も......
みんな理解してないだけだ。
アニメがどれだけすごいか。
どれだけ心を動かすか。
どれだけ......人を豊かにするか」

「でも、木村......」
鈴木が弱々しく言った。

「この状況、いつまで続くんだよ。俺、もう疲れた」

「わからない」
俺は正直に答えた。

「でも、いつか変わる。絶対に変わる。
俺たちが好きなものを、
堂々と好きだって言える世の中が来る。
そう信じてる」

「本当にそんな日が来るのか?」

山田の問いに、俺は空を見上げた。
灰色の雲が、重く垂れ込めていた。

「来るさ。きっと」

俺の声が震えていた。
気づけば、目に涙が滲んでいた。

「いつか......いつか日本のアニメが、
ハリウッド映画みたいに世界を席巻する日が来るよ。
そうしたら、みんな気づくんだ。
俺たちが見てきたものが、どれだけすごかったか。
どれだけ価値があったか......」

涙が頬を伝った。拭おうともしなかった。

三人が黙って俺を見ていた。
やがて、佐藤が小さく笑った。

「木村......お前、本気で信じてるんだな」

「ああ」俺は頷いた。「本気だ」

日曜日、
俺たちは佐藤の家に集まった。
高橋の姿はなかった。

「今日は何見る?」

「『風の谷のナウシカ』の録画、持ってきた」

「マジか!それ見よう!」

テレビの前に座り、ビデオデッキにテープを差し込む。
画面が明るくなり、音楽が流れ始める。

その瞬間、俺たちの周りの世界は消えた。

偏見も、嘲笑も、心配そうな親の顔も、全部消えた。
そこにあるのは、
ただ純粋に物語を愛する仲間たちと、
輝くスクリーンだけだった。

エンディングが流れ終わると、
しばらく誰も口を開かなかった。

「......すごかったな」

佐藤が小さく呟いた。
鈴木と山田が頷く。俺も頷いた。

「なあ」
山田が言った。

「木村の言う通りかもな。
いつか、きっと変わるよ。
こんなに素晴らしいものを、
みんなが馬鹿にし続けるはずがない」

「ああ」
俺は答えた。

「絶対に変わる」

窓の外では、雨上がりの空に虹がかかっていた。

その夜、机に向かって日記を書いた。

*1986年3月15日*

*また親に「将来、事件を起こしたりしないでね」
と言われた。
もう何度目だろう。*

*でも、俺は諦めない。
好きなものを好きでいることは、
悪いことじゃない。*

*いつか、きっと世界は変わる。
俺たちが堂々と、
好きなものを好きだと言える日が来る。*

*それまで、俺は貫く。仲間たちと一緒に。*

日記を閉じて、ベッドに横になった。

暗闇の中で、俺は未来を夢見た。

誰もが自分の好きなものを誇れる、
そんな世界を。

その夢は、きっといつか現実になる。

俺はそう信じていた。
 

クリスマスイブなんで

それっぽい恋愛話を作りました

でも出来たら何か昭和っぽい

恋愛話になって

結局 年齢が出るのかなぁ~

って想いましたね 苦笑

 

# 窓辺の想い

図書室の窓から見えるグラウンドで、
今日も先輩が走っている。

私は図書委員として、
放課後の誰も来ない図書室で本の整理をしながら、
いつものようにその姿を目で追っていた。
先輩はサッカー部で、エースでもキャプテンでもない。
でも、誰よりも早くグラウンドに来て準備をして、
練習が終われば最後まで片付けをしている。
チームメイトが気持ちよく練習できるように、
黙々と支え続けている人だ。

私が先輩に惹かれたのは、そんな姿を見たからだった。

クラスでも目立たない私。
友達は少ないし、話すのも得意じゃない。
先輩と私じゃ、釣り合わない。
この想いが先輩に届くことは絶対にないだろうし、
それでいいと思っていた。
ただ、こうして窓越しに見ているだけで十分だった。

---

「ちょっと! あんたも来なさい!」

母に呼ばれて、休日の午後、
家族総出でスーパーに向かった。
お一人様一点限りのトイレットペーパーを買うため、
父と私まで動員されたのだ。

「こんなことで家族三人も来なくても……」

急な話だったから、着替える暇もなく、
家で着ているダサいトレーナーとジャージのまま。
髪もまとめただけで、化粧なんてしていない。

ぶつぶつ言いながら、
それぞれがトイレットペーパーを抱えて
レジに向かっていた時だった。

「あ……」

前から歩いてくるのは、先輩だった。

心臓が跳ね上がる。
嘘でしょ。
こんなところで、こんな格好で会うなんて。
トイレットペーパーを抱えて、家族と一緒で、
しかもこのダサい服装で。

「やあ」

先輩が私に気づいて、手を上げた。

「あ、あの、こ、こんにちは……」

顔が熱くなる。
言葉が出てこない。
視線が泳ぐ。

「あら、お友達?」

母が横から顔を出した。
やめて、お母さん。

「サッカー部の先輩です……」

小さな声で答えると、母が私の様子をじっと見た。
そして、何かを察したような顔になった。
嫌な予感がする。

「まあ! スポーツマンなのね。
いつもうちの子がお世話になってます」

「お母さん!」

「サッカー部、大変でしょう? 試合とかあるの?」

母は全く私の制止を聞かず、先輩に質問し始めた。
顔が真っ赤になる。
地面に穴があったら入りたい。

でも、先輩は嫌な顔一つせず、丁寧に答えてくれた。

「この前の試合、見に来てくれたら嬉しいな」

そう言って、先輩は私に微笑みかけた。

その時、母が私の肩をぽんと叩いた。

「ねえ、あんた、連絡先交換したら? 
試合の日程とか教えてもらえるでしょ」

「お母さん!」

「いいじゃない。せっかくのご縁なんだから」

母は全く引かない。
もう、恥ずかしくて死にそうだった。

「あ、そうだね。良かったら、交換しない?」

先輩が優しく笑って、そう言ってくれた。

「え……い、いいんですか?」

「うん、もちろん」

夢みたいだった。
まさか、母が気づいて、
こんな形で先輩と連絡先を交換できるなんて。

帰り道、母は満面の笑みで言った。

「いい彼氏じゃない。爽やかで優しそうで」

「違う! 彼氏じゃないから!」

慌てて全力で否定する。

「ただの先輩だし、
向こうは私のこと何とも思ってないし!」

「あら、そうかしら? 
でも、あんたの顔見てたらすぐ分かったわよ。
好きなのね」

「も、もう! お母さん!」

恥ずかしくて顔を背ける。
でも、母のおかげで連絡先を交換できたのは事実で。

「……ありがとう、お母さん」

小さく、本当に小さく、感謝の言葉を伝えた。

---

クリスマスイブの夜。

先輩から送られてきたメッセージには、
「サッカー部のクリスマスパーティーがあるんだけど、
来ない?」と書かれていた。

行きたい。でも、怖い。

返信の文字を打っては消し、打っては消しを繰り返す。
他にも女の子が来るって書いてある。
きっとみんな可愛くて明るい子たちなんだろう。
私なんかが行っても、浮くだけだ。

でも、先輩に会えるかもしれない。

スマホを握りしめたまま、時間だけが過ぎていく。
気づけば、パーティー開始まで
あと一時間を切っていた。

「……行こう」

小さく呟いて、慌ててクローゼットを開けた。

「何着よう、何着よう……」

手持ちの服を次々と取り出しては、
鏡の前に当ててみる。
これは地味すぎる。
これは逆に気合い入りすぎ。
これは子供っぽい。

「あんた、もう出ないと間に合わないんじゃないの?」

母が部屋を覗いて、呆れたように言った。

「だって、何着ていいか分からなくて……」

「もう、これでいいじゃない」

母が選んでくれた紺色のワンピースを着て、
慌てて家を飛び出した。

待ち合わせ場所に着くと、
すでに何人かが集まっていた。
みんな楽しそうに話している。
私が来たことに気づいた人は、誰もいないようだった。

やっぱり来なければよかったかな。
そう思った瞬間、

「来てくれたんだ」

先輩が私を見つけて、微笑んでくれた。

その笑顔に、少しだけ、心が温かくなった。

けど結局、勇気を出して参加したものの、
やっぱり場違いだった。
他の女の子たちは、クラスでも陽気で
人気のある子ばかり。
みんな楽しそうに話していて、
私だけが浮いている。

周りの会話が弾んでいる。
恋愛の話、クラスの話、共通の友達の話。
私には入る隙間がない。
相槌を打つことしかできなくて、
笑顔を作るのに必死だった。

先輩は幹事として忙しそうで、遠くの席にいる。
時々こちらを見てくれるような気もするけど、
きっと気のせいだ。

一人だけ取り残されたような、
孤独感が胸に広がっていく。

「……お手洗い、行ってこよう」

席を立って、誰も気づかないうちに帰ろう。
そう決めた。

外に出ると、想像以上に寒かった。
吐く息が白い。
街にはイルミネーションが輝いていて、
行き交うのはカップルばかり。

それに比べて私は、一人。

やっぱり、私は先輩と釣り合わない。
パーティーに呼んでくれたのも、
きっと気を遣ってくれただけで。
来るんじゃなかった。
パーティーに参加したのは間違いだった。

涙が溢れてきた。

とぼとぼと歩いていると、
突然後ろから声がかけられた。

「待って!」

振り返ると、息を切らした先輩がいた。

「え……先輩?」

「なんで帰っちゃうの? 用事でもあった?」

俯く私に、先輩が話し始めた。

「実はさ、以前から図書室の窓から
グラウンドを見ている子が気になってたんだ」

心臓が止まりそうになった。

「それから、その子をよく見るようになって。
みんなが気づかない、やりたくないようなことを
一生懸命やってるんだよね。
教室の掃除とか、配り物とか。
そうやって見ているうちに、
どんどん気になっていった」

先輩の言葉が、信じられなかった。

「スーパーで連絡先を交換できた時は、
すっごく嬉しくて。
クリスマスパーティーに誘って、
その子と二人で抜け出してプレゼント渡して、
告白しようと思ったんだ。
でも気づいたら、いなくなってて……」

空から、雪が舞い降り始めた。
街灯の光が涙でキラキラと輝いて見えた。

「君が好きなんだ。付き合ってください」

先輩の真剣な眼差しが、私を見つめている。

涙が溢れて止まらない。
でも、答えはもう決まっていた。

「……はい」

かすれた声で、私は答えた。

先輩が安堵したように笑って、
そっと私の手を握った。温かかった。

降り始めた雪が、二人を優しく包み込んでいた。

窓越しに眺めるだけだった世界が、
今、私の手の中にある。

これは夢じゃない。
本当に、本当の、クリスマスの奇跡だった。
 

米国トランプ大統領が

20~25隻の戦艦を建造する

と発表したのを見て作りました

現実の米国の戦艦が

どうなるのかは今はまだ解りませんが

この時代に戦艦とかロマンではありますよね 苦笑

 

 

 

 

# トンプソンズ・グローリー ― 静かなる抑止力

海上自衛隊に秘匿潜水艦「C・ジャポニカス」が
密かに納入されてから一年が経過した頃、
ホワイトハウスの執務室では
歴史的な発表の準備が進められていた。

「大統領、報道陣の準備が整いました」

補佐官の声に、ジョン・トンプソン大統領は
深く息を吸い込んだ。
窓の外に広がるワシントンの空は、
いつもと変わらぬ穏やかな青さを湛えている。

発表は予想通りの反響を呼んだ。
合衆国海軍の新たな象徴となる
戦艦「トンプソンズ・グローリー級」の建造計画。
公開された想像図には、
大型巡洋艦規模の艦体にレールガン、レーザー兵器、
そしてVLSに搭載される核巡航ミサイルが描かれていた。

しかし、それは表向きの姿に過ぎなかった。

##

バージニア州ノーフォークの秘密造船施設。
厳重な警備に守られたドックの中で、
真の「トンプソンズ・グローリー」が
姿を現しつつあった。

「信じられない……まるでSF映画だ」

視察に訪れた海軍作戦部長は、
目の前の巨大な艦影を見上げて呟いた。

全長約270メートル。
外見は潜水艦だが、
オハイオ級をも凌駕する巨体だった。
搭載する巡航ミサイルは300発。
レールガンとレーザー兵器を多数装備し、
さらに展開式の飛行甲板を持つ。
F-35Bやヘリコプターの運用、格納が可能な設計。
そして何より驚くべきは、
この巨体のまま潜航できるという事実だった。

「これは……」

作戦部長は艦体表面に配置された
無数のパネルに気づいた。

「光学迷彩システムか?」

「はい。海上航行中、完全に姿を消すことができます」
技術者が誇らしげに答えた。

「周囲の環境を瞬時に解析し、艦体全体に投影する。
衛星からも、航空機からも、肉眼でも捉えられません」

動力源はL'sコーポレーション製の最新型原子炉。
出力130万キロワットを誇る炉を2基搭載し、
50年間の連続運用が可能。
その間、燃料交換は不要だという。

「水中速力は?」

「非公開ですが……」
技術者は声を潜めた。

「400ノットに迫ります」

作戦部長は息を呑んだ。
既存のどの潜水艦をも圧倒する速度だ。

「C・ジャポニカスを元にした拡大性能向上型、
ということですな」

「その通りです。
ただし、規模も能力も桁違いですが」

##

執務室に戻ったトンプソン大統領の机には、
様々な報告書が積み上げられていた。

L'sコーポレーションが提示した理念
――「できるだけ平和を長く続ける」。
その実現のために、大統領は多方面に手を打っていた。
今回の軍事力増強のように早急に
実現するものもあれば、
各国との対話を通じて何年もかけて
実現を目指す案件もある。

同時に進めているのが、L'sコーポレーション技術の
リバースエンジニアリングだった。
いつか彼らが手を引いた時のために、
技術を自国のものとする必要がある。
そしてその成果は軍事だけでなく、
民間にも応用され、経済的発展をもたらしていた。

新世代の小型原子炉技術は電力網を革新し、
レールガン技術は宇宙開発に応用された。
材料科学の進歩は医療機器から建築まで、
あらゆる分野に波及している。

「大統領、支持率がまた上昇しました」

補佐官が持ち込んだ最新の世論調査を見て、
トンプソンは複雑な表情を浮かべた。

突然降って湧いたL'sコーポレーションとの関係。
意図したわけではなかったが、
その恩恵は計り知れない。
雇用は創出され、技術力は向上し、
軍事力は強化された。
大統領としての評価は日に日に高まっている。

##

夕暮れ時、トンプソンは再び窓辺に立った。

オレンジ色に染まる空を眺めながら、
彼は静かに呟いた。

「落ちた時、どうなるのかを考えたら怖いな」

支持率の上昇。
経済の好調。
軍事力の増強。全てが順調に見える。
しかし、それは同時に脆弱性でもあった。
L'sコーポレーションに依存した繁栄。
彼らが去った後、アメリカは自立できるのか。

そして何より、この圧倒的な軍事力。
「平和のための力」という理念は理解している。
しかし、力は使い方を誤れば、
平和を破壊する凶器にもなる。

「トンプソンズ・グローリー……か」

大統領は自身の名を冠した戦艦の名を口にした。
栄光という名の潜水艦。
水面下に隠れ、海上では光学迷彩で姿を消し、
必要な時だけ姿を現す抑止力。

それは彼自身の立場とも似ていた。
表向きの顔と、隠された真実。
公開される情報と、秘匿される実態。

執務室のドアがノックされた。

「大統領、次の会議の時間です。
日本の防衛大臣とのビデオ会談ですが」

「分かった。すぐ行く」

トンプソンは窓から離れ、大統領の顔に戻った。

空はもう暗くなり始めていた。
しかし、星々が輝き始めるまで、まだ時間がある。
その僅かな時間、薄明の中で、
彼は自分の選択が正しかったのかを
問い続けるのだろう。

ノーフォークの秘密ドックでは、
「トンプソンズ・グローリー」の建造が
着々と進んでいた。
やがてそれは海に出る。
世界最強の潜水空母として。
そして誰も知らない速度で、深海を駆け抜けるのだ。

平和のために。

その言葉の重みを、トンプソンは噛みしめながら、
次の会議室へと向かった。

―― 了 ――

 

不殺主人公の成れの果てを作りました

 

 

 

不殺の刃

異世界に転移した日、俺は“英雄”のスキルを得た。
剣を振るえば魔物は倒れ、
街を脅かすゴブリンやオーガを狩っては魔石を換金し、
糊口をしのぐ日々。

 

魔物は敵だ。
だが、人は違う。
それが、俺の譲れない線だった。

街を守るために結成した小さなパーティーは、
俺の信条を理解してくれていると思っていた。
軽やかに走る小さなスカウトは、
皆の笑顔の中心だったし、
巨躯の僧侶は壁のように仲間を守った。
魔法使いの彼女は、
戦場にあっても俺の帰る場所だった。

ある日、街に影が落ちた。
魔物ではない――大規模な盗賊団の襲撃。

俺は剣の腹で打ち倒し、気絶させ、追い散らした。

「殺すな。人だ」

その判断が、戦場の空気を歪ませていくのを、
俺は感じ取れなかった。
最初に倒した盗賊を、俺は地面に伏せて去った。

最初に崩れたのは、
いつも一番前を走っていたスカウトだった。

戦闘が一段落し、街路に静寂が戻りかけた頃、
彼は瓦礫の影からひょいと顔を出して手を振った。

「大丈夫だよ、みんな気絶してる!」

だが俺が最初に叩き伏せた盗賊の一人が、
そのすぐ背後にいることに、誰も気づかなかった。
地面に伏せていた男は、息を潜め、
時間を待っていたのだ。

短い悲鳴すら上がらなかった。
小さな体が、力なく崩れ落ちる音だけが路地に響いた。

駆け寄ったとき、スカウトの瞳は見開いたまま、
何かを言おうとしていた。
だが声は出ず、指先が俺の袖を掴もうとして、
空を切った。

「……俺が、殺さなかったからだ」

理解する前に、次の戦場が始まった。

僧侶は最後まで踏みとどまった。

巨体を盾に、祈りと拳で仲間を守り続けた。
骨がぶつかる鈍い音、荒い呼吸、
それでも彼は立っていた。

だが盗賊は人間だった。
恐怖を知り、怒りを覚え、
数で押すことをためらわない。

俺が剣で吹き飛ばした男たちが、
再び包囲を完成させた。

「戻ってくるな!」

俺の叫びは、騒音に飲まれた。

僧侶は囲まれ、四方から刃を突き立てられた。
倒れる瞬間、彼は俺を見て、かすかに笑った。

――守れなくて、すまない。

その表情が、今も脳裏に焼き付いている。

彼女がやられたことを、俺はその場では知らなかった。

後方で魔法を放ち続けていたはずの彼女が、
いつの間にか姿を消していた。
盗賊たちの怒号と嘲笑が重なり、
嫌な予感だけが胸を締め付けた。

戦いが終わり、駆けつけた先で見たのは、
倒れ伏した彼女だった。
服は乱れ、身体には無数の手の痕が残され、
魔力の灯は完全に消えていた。

抵抗した痕跡は、はっきりとあった。
魔法陣の焦げ跡、砕けた指輪、握りしめられた地面。

最後に、刃が一度だけ振り下ろされたことも、
すぐに分かった。

叫び声は、俺のいない場所で尽きていた。

俺は、その直後に「人助け」をした。

震える少女の手を取り、守ったつもりで背を向けた。
仲間たちの死は、俺の選択の延長線上にあったのに。

不殺は、慈悲ではなかった。
ただの独りよがりだった。

その代償を、仲間たちが先に払っただけだった。

気づいた時、俺は路地で震える少女を庇っていた。

「ありがとう」

そう言って近づく彼女の足取りに、
言いようのない違和感があった。

痛みが走る。
胸元に、冷たい感触。

少女は笑った。

「刃には毒が塗ってあるの。もう助からないよ」

理解できなかった。
人を殺さないと決めた俺が、なぜ――。

彼女は、天使のような笑顔で言った。

「見逃された屈辱が、どれだけ悔しかったか。分かる? 

あんたは不殺を振りかざして、私たちを生かした。

だから、私たちは誓った。
必ず復讐してやるって。
女や子供に甘いあんたなら、
私が近づけると思ったよ」

視界が暗くなる。
初めて、分かった。

俺は優しさを選んだつもりで、恨みを蒔いていた。
俺の行いの果てに、守るべき人を失い、
自分の命すら守れなかった。

剣は、誰も救わなかった。
不殺の刃は、すべてを失わせただけだった。

 

 

最近は漫画でもアニメでも

不殺主義の主人公とか

決して人殺しはしないとかいう主人公がいて

吐き気がします

そういうのは勘違いな平和ボケだし

相手を馬鹿にした態度だと思います

自分や自分の大切な人を守る為には

不殺とか人殺しは嫌とか言っていられません

彼らはそういう世界にいるのだから

現実でもそういう事態があるかもしれない

そういう時にそんな寝ぼけた事を言っていたら

大切な人どころか

自分自身さえ守る事は出来ないでしょう

いざという得でも不殺とか人殺しは嫌とか言うのは

覚悟のない臆病者の逃げでしかありません

 

 

 

 

# 覚悟の剣

剣が肉を裂き、骨を砕く音が静寂の中に響いた。

襲撃者の体を貫いた刃を引き抜くと、
男は地に崩れ落ちた。
だが、その口元には奇妙な笑みが浮かんでいる。

「これで……お前も人殺しだ」

鮮血を吐きながらも、男は勝ち誇ったように言った。

まるで最後の一撃を放ったかのように。

神楽司は剣を一振りして血を払い、
冷ややかな目で倒れた男を見下ろした。

「襲って来た奴を殺して何が悪い?」

その声には、一片の動揺もなかった。

男の顔に、わずかな驚きが浮かぶ。
想定していた反応ではなかったのだろう。
罪悪感、後悔、あるいは自己嫌悪
——そういったものを期待していたに違いない。

「お前らはそうやって勝手なルールで
こちらを縛ろうとする」

司は倒れた襲撃者を無造作に蹴った。

「だがそんなものに俺は乗らない」

血の海に沈む男の体が、鈍い音を立てて転がる。

「殺されたくないなら殺しに来なければいいだけだ。
殺しに来るということは、
殺される覚悟があると判断されても
仕方ないということだ」

男の仲間らしき影が、物陰から姿を現した。
同じように司を心理的に
追い詰めようとしていたのだろう。
だが、その企みは完全に外れた。

「殺しに来る相手に対して不殺とか言う奴は、
とんだ思い上がりだ」

司は静かに、しかし確実に敵との距離を詰めていく。

「相手の覚悟を馬鹿にしているだけだ」

敵の顔に焦りの色が濃くなる。

「無抵抗の人を一方的に殺すのなら、
人殺しと言われても仕方ないだろう」

一歩、また一歩。

「だがそうでないのなら、
ただの双方覚悟の上での戦いだ」


司の手が剣の柄を強く握る。
刃が微かに震え、殺気が空気を震わせた。

「それは言葉での攻撃も同じだ。
攻撃には変わりない」

次の瞬間、閃光のような斬撃が敵の腕をかすめた。
浅いが確実な傷。血が滴る。

「自覚があろうとなかろうと、
お前はそういうことをしているのだ」

司の剣技は容赦がなかった。
一撃、また一撃。敵の体に傷が増えていく。
致命傷には至らないが、確実に戦闘能力を削いでいく。

「傷を増やし、
お前の攻撃の手が緩んだり精神的に落ちたら、
俺にとってはラッキーだ」

敵は必死に防御しようとするが、傷は増え続ける。
腕、脚、肩、脇腹——血が流れ、体力が奪われていく。

やがて、敵の動きが鈍くなった。

司は最後の一撃を放った。

水平に振り抜かれた剣が、敵の首を斬り落とす。

鈍い音を立てて、首が石畳に転がった。

司は血に濡れた剣を鞘に収めながら、静かに呟いた。

「お前が望んだことに付き合ってやったんだ。
少しは感謝しろ」

彼は振り返らずに歩き出した。

彼は不殺を誓った英雄でもなければ、
平和ボケした理想主義者でもなかった。

彼は真の覚悟を持った戦士だった。

命を奪うことの重さを知りながらも、
それを背負う覚悟を持つ者。
相手の覚悟を尊重し、自らの覚悟を貫く者。

そして何より——戦場において、
偽りの慈悲が最も残酷な欺瞞であることを
理解している者だった。

戦いとは、覚悟と覚悟のぶつかり合いだ。

その結果を受け入れる覚悟のない者が、
剣を抜くべきではない。

司の背中が、
薄暗い路地の向こうへと消えていった。