無言のまま家につき



リョウちゃんのあんな姿を見たことで



何も言えなくなってしまったわたしは



どうしていいかわからず




ソファに座ってみたり


テレビをつけてみたり


キッチンに行ってみたりと


リョウちゃんと部屋に二人きりの



この状態に気持ちが落ち着かずにいた




リョウちゃんは




お店の先輩に電話しちゃうな、と



先輩と話している・・・・




わたしの知らないお酒の名前がたくさん出てくる会話・・・・



わたしが見た事のないリョウちゃんたちの世界の話だった・・・




この電話が終わったらわたしたちは話し合いをするのかな・・・・



やだな・・・・・



リョウちゃんの口からジュリさんとの事を聞きたくないな・・・・




また逃げ出してしまいたい気持ちになり茫然としていた・・・・





『ユイ・・・


先輩がユイと話したいってさ・・・』



そう言い、リョウちゃんが突然わたしに携帯を差し出してきた・・・・




え・・・



わたし話したくない・・・・




どうせ、知っていたのにごめんとかそういう話なんでしょ・・・・




先輩もジュリさんのことを知っていたんだもんね・・・・




ごめんねなんて言われても、



『うんいいよ』とも



『うん大丈夫だよ』とも言えるわけないじゃない・・・・




だからと言って、



謝る人に『許さない』とも言えない・・・・・





わたしは電話を代わりたくないと




無言で首を横にふり答えた・・・・・





リョウちゃんはそんなわたしを見て




ユイはいま手が離せないみたいだから・・と先輩に話しだした・・・・・





『ユイ・・・


先輩がごめんねだって・・・』





やっぱりその話しだったんだ・・・・



リョウちゃんもどうしてわたしに言ってくるの・・・・



適当に答えておけばいいのに・・・・・




わたしはこんな無神経なリョウちゃんにイラつきも感じた・・・





何も答えないわたしの横顔をリョウちゃんがずっと見つめている・・・・・



わたしは仕方なく、



無言でうなづいた・・・・・




リョウちゃんの先輩が悪いわけじゃない・・・・




でも



ごめんねなんて言われても、今のわたしには何も答えられないよ・・・・



わたしはリョウちゃんの先輩のことだって信頼してた・・・・




職業とか年齢とかリョウちゃんの先輩だからとか関係なく、




わたしにとっては、先輩のことも友達の中のひとりだったのに・・・・・




悲しいよ・・・・・



そんなことを感じたときに





ジュリさんが言っていた言葉を思いだした・・・・・・




「店の従業員がグルの時もあるよ・・・・それみんなグルだよ」・・・・・




たしかそんなことも言っていた・・・・・・




もしかしてこれもグルなの・・・・?



二人で謝ってきて今度はわたしに何をする気なの・・・



わたしは



リョウちゃんに関係してる人のことも信用できなくなってしまっていた・・・・




『ユイさんは騙されてるユイさんは騙されてる。。。騙されないで・・・』




ジュリさんに言われ続けた言葉が



頭から離れない・・・・



また胸が苦しくなりそうだった・・・・・




考え込んでしまう前に何かしようと




わたしは自分の携帯をとりだした・・・



リョウちゃんはまだ先輩と仕事の話をしている・・・・・



携帯を開くと



トモカから何度も着信とメールが入ってきていた



トモカは気にかけてあれから毎日連絡をくれていた



昨日はそれに返信もできなかったからトモカが心配している・・・・





「遅くなってごめんね、


温泉から帰って疲れてずっと寝ちゃった」



わたしは倒れたことは伏せてトモカにメールを送った



仕事中で電話はでれないだろうと思ってメールにしたトモカからすぐに着信がきてしまい




リョウちゃんもここにいるしどうしようと




わたしは立ち上がり外にでようと玄関のほうに歩き出した・・・・





『ユイ!


どこ行くの?』





リョウちゃんも立ち上がり追いかけてきた・・・・




『あ、電話きたから


外で話してくるね』




『は?


そのままどこかに行っちゃうんじゃないよな・・?


俺が外で話すからいいよ・・・』




わたしのおかしな行動に


リョウちゃんが悲しそうな顔をした・・・・・




『ぇ・・どこも行かない・・・



じゃあ玄関で話すね・・・』




『いいよ


ユイは部屋で話しな』




そう言い優しく微笑んでリョウちゃんは玄関に座り先輩との電話を続けた・・・・





わたしは部屋に戻りトモカの電話に出た・・・




リョウちゃんがいると話ずらいなぁ・・・・そんな気持ちだった・・・・




『もしもし・・


トモカ仕事は?』





『出るの遅いー


いま外回り中だよ


・・・・え・・


誰がいるの・・・・?



リョウくんの声・・・!?』




リョウちゃんの話し声がトモカにも聞こえてしまった・・・・




なぜかわたしはとても気まずい気持ちになった・・・・




『ぁ、うん・・・・』




『そっかー


そこにいたんだ?』




電話の向こうでトモカが笑いだした・・・・




え・・・・なんで・・・




『・・・どうしたの・・?』





『いや


ユイが温泉から帰ってきたら話そうと思ってたんだけど



リョウくんね


あれからずっとうちのマンションにユイ探しに来てて



たぶん、うちにユイが居ると思って迎えに来てたんだと思うけどね



クソ男って思ってたから、


ユイのこと聞かれてもシカトしてたんだけど




さすがに後半やつれてきてたし



意地悪してる気持ちになってきて



そしたら昨日から来なくなったから


諦めたならいいけど



まさか倒れたり死んでたりしたら




あと味悪いなーって思ってたんだよ(笑)



リョウくんほとんど寝てないんじゃないかな?



リョウくん頬がこけたよね?』






『うん・・・痩せたのかな・・


そうだったんだぁ・・』




たしかに


久しぶりにリョウちゃんの顔を見た時に、少し痩せたかなってわたしも感じていた・・・・




背中が小さく見えたのもそのせいだったのかな・・・・




わたしは玄関に座るリョウちゃんの背中を見つめた・・・・






『ユイ、ユイの気持ちはよくわかるけど



リョウくんも反省してるのかもね


かなり、へこんでたし・・・



もう話し合ったの?』





『まだ・・・』





『ユイらしくないね・・・



よく話し合いなよ



ジュリさんの事も暴力はしてないみたいよ



ユイを泣かせた!って頭に血がのぼったみたいだけど(笑)



あんたが悪いんでしょ!って言っといたよ、しょげてたけどね(笑)


リョウくん子供みたいだね(笑)




じゃ、リョウくん居るんじゃ話しにくそうだし


仕事してくるね』





『ぁ、うん


ありがと、またね』





リョウちゃんはそんなに探しててくれたんだ・・・・




でも




そんなリョウちゃんを信じれない・・・・





そんなに探してもらえたら



きっと嬉しい気持ちも出てくるんだろうね・・・・



もしかしたらそれだけですべてを許す気持ちにもなるのかな・・・



元通りの気持ちにもなるのかな・・・・





でもその時のわたしには



ジュリさんが居なくなったから



わたしを次の宿カノにするためでしょう・・・?




そんな思いが頭に浮かんでしまってしかたなかった・・・・




わたしよりも先に電話の終わっているリョウちゃんが



玄関に座ったままでいる・・・





わたしはリョウちゃんの元に行ってみた・・・



壁に寄りかかりリョウちゃんは眠ってしまっていた・・・・




あんなに愛しかったリョウちゃんの寝顔なのにね・・・・




リョウちゃんの寝顔を見ながら、悲しくて涙が流れた・・・・




あんなに大好きで心から信じていた人を




信じてあげれなくなっている・・・・・




一点の曇りもなく、あんなに心から信じれていたのに



どうしてこんなになっちゃったの・・・・・




涙が止まらなかった・・・・




心が張り裂けそうに痛かった・・・・・・





叶うのなら



あのときに戻りたいよ・・・・・



叶うのなら



リョウちゃんを心の底から信じれていた



笑顔でいれたあの幸せな時に戻りたいよ・・・・・・