泣いてしまうわたしに気づき



眠りの浅かったリョウちゃんが目を覚ました・・・・・



『ユイ・・・


どうした・・?』



相変わらず優しいリョウちゃんの声・・・・・




『・・・なんでもないよ・・』



わたしは涙をふき部屋へと歩きだした・・・・



リョウちゃんも立ち上がり後をついてくる・・・・・



『ユイ、電話終わったのか?』




『うん・・・』



ソファーに座るわたしの隣に



リョウちゃんが少し離れて座ってきた・・・・




『そうか・・・


ユイ、俺さぁ


仕事休めなくてさ



今夜ひとりで大丈夫か?』




『うん、大丈夫』



『そうか・・・』



『うん・・・・』




少しの沈黙のあと



リョウちゃんが話し出した・・・・・





『・・・ユイ


どうして怒らないの・・?



俺に言いたい事いっぱいあるでしょ?


怒ってくれよ・・・


殴っていいから


俺をおもいっきり殴れ


な?


気が済むまで殴れ』



そう言いながら


リョウちゃんがわたしの前に座りこんだ・・・・



殴れって・・・・そんな男同士のケンカみたいなこと言って・・・




暴れたりケンカしたりと



わたしと出会う前はそんな感じだったリョウちゃんにとっては




俺が悪いんだから殴れと、そんな気持ちなのかもしれないけど



そんなこと言われても・・・・




『・・・


そんなことできないよ・・・』





怒るわけでもなく


泣きだすわけでもなく


まるで魂がどこかに行ってしまったようなわたしの『うん』に


リョウちゃんは悲しさを感じていたのかな・・・・・・・





『ユイ・・・



どうしたんだよ・・・・・


今までなんでも俺に言ってきてただろ・・・


喜怒哀楽ハッキリしてるのがユイだろ・・・・



な・・?


ユイ、なにか言えよ・・・


ユイの気持ちが見えねぇんだよ・・・』



淋しそうな目をするリョウちゃんがわたしの顔をのぞき込んでくる・・・




リョウちゃん・・・・わたしも同じなんだよ・・・・




自分の心が見えないの・・・・



どうしたいのか、ずっとわからないんだよ・・・・・




病院を出るときには



別れるって言おうってそれだけを考えてたのに




それが言い出せなくなったら



今度は何を言えばいいの・・・・・




倒れる前のあのわたしの勢いはもうどこかに行ってしまっていた・・・・




『ユイ・・・・



笑って・・・


ね?少しは笑ってよ・・・』



言葉の出てこない、こんなわたしにリョウちゃんは困り果てたのかな・・・・




怒れ・・・・



殴れ・・・・



何か言え・・・・



笑え・・・・・



って、そんな事ばかり言う・・・・・・




どうやって笑ったらいいの・・・・




どうやって笑うの・・・・・



わたし笑えない・・・・・





『もう、ほっといてよ・・・



どうしていいかわからないの!



リョウちゃんのこと



好きかどうかもわからなくなっちゃったの・・・・



本当に今、何もわからないの・・・』




追い詰められた気持ちになってきたわたしから出た




その時の素直な言葉・・・・・





わたしはリョウちゃんの顔が見れなかった・・・・・



いまリョウちゃんは恐い顔をしているの・・・?



悲しい顔をしているの・・・・?





『そうだよな・・・


ユイ・・・、わかったから


ちゃんと、こっち向いて』





わたしはリョウちゃんの顔をゆっくりと見てみた・・・・




リョウちゃんは目を潤ませながら微笑んでいた・・・・・




『ユイ、やっと喋ったね・・・


少し安心したよ・・・・』




そう言い


リョウちゃんはまた優しい顔で微笑んでいた・・・・





『これから少しづつ話していこうな・・・?


俺・・・



もうこんな事しないから・・・


もう嘘もつかないから・・・


ね?


もう泣かせないから・・・


もう悲しくさせないから・・・・


俺のこと好きじゃなくてもいいから・・・


俺のことキライでもいいから・・・



俺が頑張ればいいことだから・・・


ユイを守っていくから・・・


全部受け止めるから・・・・・


俺そう決めたから・・・



初めて会ったときから、


俺はコイツと一生一緒にいるんだろうなって


俺は感じたんだから、



ずっと一緒なんだよ・・・・



だから



黙って居なくなるのだけはやめてくれ・・・』





ありふれたこんな言葉でも



若すぎるリョウちゃんにとっての




一生懸命な想いと一生懸命な言葉だったのかな・・・・





守っていくから・・・・




全部受け止めるから・・・・・・




リョウちゃんのこの気持ちの重さにも気づかずに



わたしはリョウちゃんの言葉を



ただ茫然と



信じられない気持ちのまま聞いていた・・・・・