それでも食べたい | 魂の望むまま愛と感謝の気持ちで生きる✨わたしの物語

魂の望むまま愛と感謝の気持ちで生きる✨わたしの物語

現実を生きてこそ✨️
それがスピリチュアル✨
自分を愛すること
大切にすること
優先すること
自分の大切なひとたちと
愛し合って
触れ合って過ごすこと
凛としたわたしで
魂の望むまま生きること
その葛藤と成長
幸せと喜びを綴っています

その人は

緊急入院してから

天井ばかり見つめていた


多くを語らず

ケアもされるがまま


まるで

じっと

死を待っているかのようだった


食道がん末期

肺炎になり緊急入院

嚥下困難があり

禁食

肺炎の呼吸苦を

麻薬の皮下注射で

抑えている状態だった


ある日


「天井ばかり見つめて

毎日つまらなくないですか?」


「何かしたいことないですか?」


そう問いかけた


なぜ

そう問いかけたのかは分からない


寡黙な方だったので

答えはないかもしれない


問いかけて

ケアに入った


その時


「生クリームのケーキが食べたい」


その人は

はっきりとそう答えた


わたしは

驚いたと同時に

ものすごく嬉しくて


「ケーキが食べたいんですね!

先生に確認してきますね!!」


そう浮き足立った


ステーションに戻り

チームのスタッフに彼の想いを伝えた


「禁食中だし、無理でしょ。。」

「危ないよ。。」


誰もが後ろ向きな発言


だけど

天井ばかり見つめていたその人が

初めて意思表示をしたんだ


わかって貰えない悔しさや悲しさが

思わず涙となって溢れる


「それでも!

食べたいって言ってるの」


そこへ

ホスピスの女医さんが通りかかり


「感情にのまれるな!

食べたい欲求を叶えるために

きちんとカンファレンスしなさい。

噛み出しだっていいんだから」


そう叱られた


まずは

本人の意志を主治医へ伝えることが先決

判断は主治医に任せよう


チームが出した答えだった


わたしが代表して

主治医へネゴシエーションした


「いや、無理。ダメ。

肺炎が悪化するのわかってて許可出来ない」


想定通りの返答


「このまま禁食で過ごすのと

肺炎になって治療するのと

命の期限にどのくらいの差がありますか?」


そう食い下がった


「どっちも同じくらい」


「それなら

本人が納得するように

先生から話をしてください」


その人ところに行き


「力が及びませんでした。

先生が話をしに来るので

自分でも伝えられますか?」


そう話をした


主治医は


「今、食べてしまうと

命の期限が

短くなってしまう可能性があります。」


そうはっきり伝えた


その人は


「それでも食べたい。それは覚悟の上です。」


キッパリと先生に言い切った



主治医は

「んーーー」としばらく考えた後


「分かりました。

プリンやゼリーとかはじめてみましょう」


そう承諾した


主治医と一緒に一旦外へ出て


「ありがとうございます!」


お礼を言った


「本人に覚悟の上ってあそこまで言われて

ダメとは言えない。少しずつね。」


その人に


「先生から許可が出ました!

自分の口ではっきり先生に伝える姿

めちゃくちゃかっこよかったです!!」


そう伝えた


その人が

初めて笑顔を見せた


独身で一人暮らしをしていた部屋に

遠方から妹さんが泊まり込んで

通っていた


天井ばかり見つめて

妹さんとも会話せず

病室はいつも沈黙していた


妹さんに

ことの顛末を話し

プリンやゼリーを買ってきてもらうように

お願いした



肺炎が悪化することなく

ゼリーやアイスクリーム

プリンを食べられていた


だけど

いつの頃からか

時々、意識が遠のく


あぁ

限界なのかもしれないな


そんなふうに感じていた


ある日

元の同僚の方が3人で面会にいらした


しかも

ケーキを買って!


「○○さん

やっと1番食べたいものが

きましたよ。」


「生クリームたっぷり頬張りたい」


意識が朦朧とすることもあったけど

お見舞いの品をみて

笑顔になって

そう言った


これは

飲み込めないかもしれない

だけど

今の状態だと次はない


めちゃくちゃ迷った

怖さもあった


スプーンに

ほんの少し

クリームをとって介助していたが


本人は

スプーンいっぱいのクリーム

を食べたいと言う


「今の状態だと

飲み込めないかもしれない。

口に入れて

クリームを器械で取るのはどうですか?」


朦朧としながら頷く


妹さんと

同僚の方々が見守る中


スプーンにクリームをすくって介助した

もう

飲み込む力は残っていない


直ぐに吸引した


クリームはほとんど

吸引器の中に入った


その後

その人は昏睡状態になった



わたしが

トドメをさしてしまったのではないか


後悔と罪悪感で苛まれていた


昏睡の状態で数日経過した


ある日勤の日

妹さんと話をする機会があった


「兄のために

ゼリーを買ってこられる

それが嬉しかった。

何もしてあげられなくて

見ているだけなのが苦しくて

だから

食べること先生に掛け合ってくれて

ありがとうございます。」


涙を溜めて

話して下さった


「1番食べたい生クリームのケーキが来た時は

食べられる状態じゃなかった。

だけど

これを逃したらもう叶わない。

そう思ったんですけど。。

トドメをさしてしまったんじゃないか

と感じてしまいます。」


震える声でそう伝えた


「そんなことない。

兄は嬉しかったと思います。

食べることを始めてから

イキイキしてました。

本当にありがとう。」


お互い

泣きながら手を握りあった



日勤から準夜勤に申し送りをして

自転車で自宅に帰る途中

ふっと

その人のことがよぎった


「あ、今、旅立ったな」


そう感じた


声を上げ

号泣しながら自転車を漕いだ



その人が旅立って

しばらく立ち直れなかった


自分で自分を責めてしまって

思い出しては泣いて。。



ある日

行きつけの居酒屋に

ふらりと行った


マスターが


「おじさん3人が来てくれて

かおりさんにって

ボトル入れてってくれたよ」


そう言うの


そういえば

同僚の方々に

この辺で飲めるところはないかって聞かれて

この店を紹介したんだ!!



マスターが持ってきたボトルには


白いペンで


「石山さん、ありがとう!!」


そう書いてあった



もうね

号泣。。。

わんわん泣いた


許された気がして


こちらこそ

ありがとうございます。。


そう心で伝えながら

しばらく涙がとまらなかった



あれから

10年は経っている


その人のことは

今でもふとした時に思い出す


「○○さん

わたし

間違ってなかったかなぁ?」


そう問いかける


返ってくる言葉は


「ありがとう。。」


いつも

ありがとうの言葉が聞こえてくる



それでも

後悔が消えることはない


もっと

他にできることがあったんじゃないか?

もっと

こうすれば良かったんじゃないか?


そう考えてしまう


あの時の未熟なわたしが

その人を思い

真剣に考え

行動したんだ


間違ってたかもしれない

不正解かもしれない


正解は誰にもわからない


天井ばかり見つめて

諦めたように

無表情だった


その人が


自分の命が短くなることを覚悟の上で

それでも食べたい


そう意思決定をした


そこからの数週間は


死を待つ人

ではなく

生きている人

に変わった 



誰にでも

肉体の死はやってくる


それはとめられない運命だ



今を

どう生きるか

どう生ききるか


その人は

命にかえて


わたしに

かけがえのないことを

教えてくれた




お元気ですか?

先生に直談判した姿は

本当に男らしくてかっこよかったです。

わたし

間違ってませんでしたか?

わたし

看護師として

ちゃんと看護できてましたか?

わたしの

自己満足ではなかったですか? 


お礼もさよならも伝えられないまま

お別れしてしまって。。

今でもわたしの胸に

あなたの存在があります。


未熟なわたしでしたが

あなたのことを思い

あの時できる精一杯の看護をした

そう思ってもいいですか?



あなたの人生の最期の場面に

関わらせてくださり

本当に

ありがとうございました。


まだ

あなたに

想いを馳せてしまいます。


もう会えない

そう思うと

涙が溢れてきます。


だけど

あなたは

今でも

わたしの中で

確かに

生き続けています。


ありがとうございます。