デルヴォー展でいちばんときめいた、
「トンネル」。デルヴォー80歳の作品です。
余談ですが、美術展ではあまり例は見ないのですが、
絵の解説に「◯◯歳の作」としてあった山種美術館はナイスだった。
たいてい、最初の解説に生没年があるから、それをメモして暗算して、
(うん、46歳の作品だな、23歳の作品だな)
とやっています。
図録の写真があまりよくないうえに、
(解説の文章は好きなんですが)
私がiPadで撮影という、二拍子も三拍子も揃った画像ですが、
絵がないところで語っても、ですよね。
実物はこの百倍も千倍も麗しいです。
裸体の女性がいるのはいつものことですが、この絵を一瞥したときに思ったのは、
ベルギーって、ベルギーレースの国だよ!
という、なんでそんな基本をいま?ってこと。
女性たちの白っぽいドレスの裾や胸元のヨーク、袖口を飾る、
繊細なレース。
私は見事なプロポーションの裸の女性もすきですが、
(変な意味はないですが、女性ってじつは同性の裸がすきですよ)
うつくしいドレス、完璧に結い上げた髪や華奢な靴やアクセサリー、
と言った美しい女性をつくりあげる周辺のものもすきで。
透きとおった布を何枚も重ねあわせたようなドレスの女性たちに目が釘付けでした。
全員が例によって視線を絡ませることもなく、ひとりひとりの世界に没頭しているかのような女性たちの中にあって、
ひとりこちらを見ているのは鏡の中の少女。
ピンク色っぽい膝までのワンピースも、も白っぽい裾の長いドレスの女性たちとは違いますね。
さて、絵のタイトルである、「トンネル」の下、絵の中央のほかの女性たちよりはやや若い、片腕に脱いだ服をかけた女性をどう思われますか?
私はこの若い女性は、鏡の中の少女が成長した姿に思えるんです。腕にかけた服は、鏡の中の少女が着ていた服。
って!
ひみつのアッコちゃんですか(^_^;)。
アッコちゃんが鏡の向こうでテクマクマヤコンと唱えたとか。いやそれは冗談ですが、
少女と鏡のモチーフはいろんな物語を連想させますね。白雪姫、鏡の国のアリス、ひみつのアッコちゃん。
あるいは、若い女性の回想の中の少女が鏡の中にいるのかもしれない。
ドラえもん世代ですから、
トンネルと言えば、
タイムトンネル~
(そんなものあったっけ?)
トンネルは過去と現在、未来を往き来する装置であり、
鏡の中の少女はすべての女たちの過去であり、
絵の中の女たちはすべて鏡の中の少女なのかもしれない。
習作も展示されていて、
鏡の中の少女が、最初は実像を持っていたのに、
この絵の中では実像はどこへやらで、鏡の中の少女がべつの次元からこちらを覗いているかのよう。
デルヴォーにドラえもんを読ませたかったなあ。
デルヴォーは子ども時代にすきだったジューヌ・ヴェルヌの小説に出てきた地質学者のオットー・リーデンブロックを作品に唐突に参加させていますから、
きっとドラえもん世界も気に入ったのではないかと妄想する私でした。
藤子・F・不二雄はデルヴォーを知っていたのかなあ。
ではでは☆
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