まるきさん、ゆかしいとは、
見たい、聴きたい、とか、懐かしい、そんな意味合いの言葉です。
むかし、詩人の伊藤比呂美さんが、
『感情線、切れた』という本の中で、
ダイエット中に食品売り場をうろつく気持ちを、
「ゆかしくて」と表現していて、
以来、どうしてもその言葉以外思いつかない感じなんです。
その食べ物への郷愁があるような時に使うことばですかね。私的に。
海苔巻きノルマ5合かあ。
一合が軽くお茶碗3杯ですから、一合あたりで6本分くらいですか?
ということは、海苔も莫大に使うんでしょうなあ。
海苔については、ちょっと物悲しい思い出があったよ。
小学校の遠足で、それまであまり口を聞いたことのなかった、
両親が美容院をやっていてお金持ちっぽい、お洒落な女の子と
一緒にお弁当を食べたことがあったんですが。たまたま、その日だけ
同じグループだったんです。欠席者が多い日でね。
うちはまあ、あまり金持ちじゃない、というより、中の下くらいの
生活環境なんですが、遠足の弁当はハムおにぎり(俵型のおむすびを
ハムで巻いて、干瓢で結わえて、その結び目にきゅうりとかウインナとか
を差し込むのだ。うちは遠足、運動会というとずっとこれだった)
とかお稲荷さんとか、揚げたシューマイとかウインナとか、
それなりに豪華なものなわけだ。それなりにですが。
ところが、お金持ちのはずのその子のお弁当は、
ホイルに包んだおにぎり2個だけ。
その子はもともと食が細い子だったから、
「一個、よかったら食べて」
と貰ったんですが、海苔が美味しくなかった。家だったら、海苔は火で焙って
パリッとさせてから巻くのに、そのおにぎりの海苔は、
あきらかに湿気けたせいで、紫がかってしまった、まずい海苔だった。
その子のおばあちゃんが作ってくれたんだって。
お金持ちのお嬢さんなのに、それでも、お弁当はおにぎりだけなのか、
と思ったら、なんか物悲しい気持ちになった。
べつに自分の弁当と比べてどうのこうの、じゃなくて、
海苔が美味しくないおにぎりがあることが悲しかった。
向田邦子さんのエッセイにも、海苔の色で生活のクラスが分かってしまう、
みたいなのがあったんですが、生活のクラスは上でも、湿気けた海苔の
おにぎりは物悲しいという思い出なんでした。
まあ、お弁当の日をうっかり忘れて、保育園近くのほっかほっか弁当に走った
私が偉そうに言う資格なんかないですが(笑)。