バナナの後、選手を待っていたのは、驚愕の食材だった!
というか。
バナナの試合のあと、
ロケバスに舞い戻った選手を待っていたおやつって、
なんだったと思いますか。
アイスですよ、アイス!
なんの嫌がらせですか、と思うじゃないですか。
いつもなら、「わーい、おやつだおやつ!」くらいのリアクションを
取るところなんだが、さすがにねえ。
全員無言で、力なく首を振る。
一応、カメラが回っているので、有志さんが、
「みなさん、食べない? そりゃそうだよね、バナナの後だもんね。
よし、それじゃ、僕が食べ…あちっ!」
有志さん、あわててアイスを口から離して、
「やべーよ。これ。凄いカチカチで、舌が凍傷になっちゃうよー
あー、みんな食べなくてよかったね」
有志さん、ありがとう。おかげで全員無事でした。ってなあ。
誰が考えたんだ、バナナのあとのアイスって。
しかもガチガチとは。
…ほんとに、ほんとになんの罰ゲームですか、って感じのおやつタイムだった。
結局。
甘くてヘビーなバナナが、ボディーブローのように効いてしまったらしく。
選手はみんな、ロケバスでぐうぐう眠りつづけたんである。
恐るべし! バナナ。
あたりが、いつのまにやら、暗くなってきて。
「選手、降りる用意をして下さい」、と、スタッフから声がかかる。
おりる用意って、要するに、例のゼッケンをつけろ、ってことなんだけど。
「寒いと思うので、羽織れるものを持ってきた方は、羽織ってくださーい」
菅原はロケバスの横腹に詰められているスーツケース群の中から、
自分のものを出して、白いシャツジャケットを羽織ることにした。
薄い生地なんだけど、他に服もないし。
ショッピングバッグ一つでやってきた正司優子さんは、スタッフからハッピを借りていた。
後でみたら、みんなけっこうハッピを借りていて、羨ましかったなー。
(あー、いままで楽しかったけど、もうこれでお別れかあ)。
一分、一秒がいとしいって、こういう気持ちなんだなあ。
ロケバスの中で、みんなの寝顔を眺めて、母のような気持ちになったこととか、
昔の大食い王で出た食材の話とか、今大会のレベルは高いとか、
そんな話をしたり、眠ったりして、ここまで来たけれども。
もう、自分はここで終わる、と、頭っから思っていた菅原であった。
だって。
その食材というのが。
「鶏から揚げ」。
オイリッシュなものが、体質的に苦手な菅原に、これ以上はない仕打ちでは…。
子どものころは、こうじゃなかったんだけど。
現実逃避に走る菅原であった。子どもの頃の、オイリッシュな食生活が、
走馬灯のように、ぐるぐる回っている。
たとえば。
菅原の父は、豚の脂身が嫌いで、
母が作ったラーメンの、チャーシューの脂身は残すんだ。
嬉々として脂身をもらう子ども菅原。
また。
菅原は餃子やコロッケ、ハンバーグといった、
脂っこいメニューがすんごく好きだったこととか。
ああ。
あの頃の胃袋があったらなあ。
って。
子どもの胃袋で大人と戦えるかーい。
え?
そうかな?
だって。
高橋実桜さんを見よ!
菅原が小学校4年生時分の身長だぞ。
そんであんだけ食べるんだぞ。
うーん、いま小4の頃になれたら、勝てるのかなあ。
むなしい現実逃避をつづける菅原であった。
とりあえず、トイレに行っとくか。
夕日が沈むのを待って撮影とかで、まだ時間ありそうだし。
…正司さんとばったり会ってしまった。
他には、誰もいない。なんとなく、ホッとした気持ちになって、
「あたし、べつに明日までだって食べなくてもいい感じなんだけどね」
ついポロリと本音を口にしたら、
「あたしもあたしもー」
と正司さんがうれしそうに言って、いくらか気持ちが落ち着く菅原だった。
落ちるのは、私に決まっているけど、正司さんとここで(トイレで)会えて
よかったなー。これでもう思い残すことはないよ(トイレでか?)。
バナナは眠くなるだけではなく、カリウムがいい仕事をしてくれて、
昨日のカレーうどんで浮腫んだ下肢も、すっきりして、便通も3度ほどあった。
空腹感はないけれども、体はスッキリしていて、悪くない。
(だからと言って、勝てるほど大食いは甘くないよなー)
すっきりした体とは裏腹に、気持ちはまたどよよんと重いのだった。
でももう。始まるのかなー。
ここらで、撮影の順番を説明しよう!
まず、一番先に取るのが、お店に到着するまで。
夕景だったり、川面の風にあたりながら、漫ろ歩きをする選手だったり。
有志さんから、選手たちへのインタビューなども。
で、一回仕切りなおして、選手たちはロケバスに戻って。
食材ばらし、という、例の、
「食材は、これだーっ!!」というやつをやって、
すぐに食べ始めることはない。
食材ばらしのあと、トイレにもう一度行っておいたり、
飲み物をどうするか、席はここね、とか、いろいろ。
お茶、水、ウーロン茶。水も、時によっては常温とか冷たいのとか。
それはもう、細かいリクエストに応えてくれるのだった。
水とウーロン茶、など、2本の組み合せにも対応だ。
それからようやく、
「いただきまーす」に辿りつけるわけだ。
正司さんと菅原がばったり会ったのは、食材ばらしのあとのトイレタイムであった。
それにしても、食材ばらしって、なんか魚の三枚おろしみたいな響きだよなあ。
食材ばらしの前の、そぞろ歩きでは、女王戦ではいつも先頭で有志さんの
インタビューを受けていた曽根さんのかわりに、
新人ながら、49本のバナナを食べた高橋さんが、白田さんと並んで前を歩いていた。
菅原は、この選手たちと一緒で先頭を歩くことはないだろうって感じだが、
(曽根さんが下げられるとはなあ…)、
と、ひそかにドキドキしたんだった。
だって、自分がずっと女性では一番だったわけでしょう。
それが新人に負けてしまって、しかも、いつもなら一等前を歩くところを、下げられて。
のちになって、正司さんの見解を聞いたことがあるが。
この、次の食材までの散歩シーンというか、歩きのシーンの先頭になるのは、
その前の試合で、目立った人、なんだそうだ。
たとえば、2008年春の女王戦、正司さんがもっとも目立ったのは、
二回戦、じゃなくて、なんといっても、
ビキニでしょう! 海辺で戯れる選手たち、だが、白眉は正司さんだろ。
ビキニの後の、
「胃袋の休息日」では、たしかに正司さんが先頭だったよそういえば。
なるほどー。確かにバナナでは高橋さんが目立ってたもんなあ。
でもこの時は、曽根さんカワイソー、という気持ちで冷や冷やしていたのだった。
だって所詮私は傍観者。
「上を見たらきりがない、下を見たら、後がない」
終いには、片山先生にまでぼやきだした菅原であった。
さあ。
幕はとっくに上がったぞ。
唐揚げも、ジュウジュウいい音を立てて揚がってるぞ。
「二回戦、大山地鶏から揚げ45分勝負! よーい」
有志さんが声をはりあげ、
「いただきます!」(つづく)
こんにちは。
いまだかつてなかった、昼のこの時間の「三宅智子さんと私 26回」。
菅原のぼやき満載でお送りしてみました。
そんなもんですよ。いっつも戦闘モード100%なわけないじゃないですか。
唐揚げは、夜に食べたいと思います。
ガンバレ、自分。
ではコメントお待ちしております。どうぞひらに。