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From With

子供達に、幸せの見つけ方、教えてあげたい・・大丈夫。隣りにいるから。あなたの周りは、ほら、幸せがいっぱい!!(自宅を色んなお子さんに開放して14年。問題のある子 無い子皆一緒に 同じ時代の同じ時間を生きていきたいな~!一歩一歩、 丁寧に・・)



窓の向こうは雨。ブナ林が霞んで見えた。


チェックアウト12時のホテル、開き直ってゆっくり朝食、ゆっくり荷造りで出発する。


去年から青森に転勤している旅行好きの同級生が蔦温泉と沼地散策を勧めてくれたので車を走らせたが、散策路入り口に立つ「熊、野犬出没注意!!」の看板に犬が大の苦手なFがひるんで断念。



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『八甲田山』

十和田湖に引き返えすつもりが 雨上がりの空に八甲田山がくっきりと見えたので、ハンドルをそちらに切る。


水草の合間に連山を静かに写して佇む「睡蓮沼」は蕩々と流れる奥入瀬川や幾つもの滝を見てきた私達の目を柔らかくほぐしてくれた。



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『記念写真!?』


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(シンバ&ガッキはF&Nの子供達。つまりはAさんと私の孫達。)


『十和田湖プリンスホテル』

だいぶ疲れが溜まってきたので、ゆっくりお茶を楽しむことにした。


十和田湖畔にあるプリンスホテルのラウンジでAさんとNは珈琲 Fはハーブティー 私は紅茶を頼む。



庭でガーデナーが芝生の手入れをし、湖にはボートが大きな輪を描いていた。そんな景色を眺めながらAさんは地図を開き、Nはカメラの汚れを拭っている。


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ぼんやりとしたこんな時間が私は好きだ。


気付くと私一人うたた寝し、三人は湖畔の芝生でホテルに備えてあったラクロス(のような玩具)に興じていた。


はにかみ屋のNが子供みたいに声を立てて笑い、ボールを逃しては派手に転んでズボンに芝生の緑の染みを付ける。


Nが可愛くてならないFは そんなNに望遠レンズでしきりにシャッターを切り、そんなFが可愛くてならないAさんはいつものオレンジスマイルで眼鏡をキュッキュッと動かしていた。



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『発荷峠』

宿に行く前に発荷峠展望台に上った。青い薄絹を重ねたような空が 真昼の終わりを山に湖に告げる・・・その瞬間に立ち会った。


十和田湖を守る森は私の好きな硫酸銅の青、露草の青、ルドンの花の青だった。



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『大湯温泉』

夜、大湯温泉でFの大好きなきりたんぽが比内地鶏汁としてテーブルに並んだ。


ひなびた温泉でありながら真っ白なクロスを掛けたテーブルをお座敷に用意する老舗旅館は開湯七百年、開業明治二年のプライド、と解した。


とっぷりと暮れた夜、Nと散歩に出た。びっくりする位のカエルの声、一日5便程の刻みを入れたバス停、車はもちろん ひとっこ一人いない県道をそぞろ歩いて旅館に戻ると


接客係のお嬢さんが大きなプラスチックケースを持って忙しく横切った。



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翌朝、そのお嬢さんが作務衣姿で見送ってくれた。暖簾の下がった玄関でも、駐車場でもなく、県道に出る曲がり角で「ありがとうございました。」と手を振って下さった。


色んな(生きる場所)を想った。


朝霧に霞む岩木山を眺めながら出発の支度をする。


今日は奥入瀬トレッキングがメインプランだが、昨日 閉館直後に気付いた郷土文学館での「太宰治の高校時代展」に朝一番で立ち寄る。


『太宰治高校時代展』

高校生の頃から太宰文学が好きで、全集はもちろん 書簡まで読みあさった。前回の旅行では太宰の実家 斜陽館をわざわざ金木町のねぷた祭りの折りに訪ねた。


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秋に控える朗読発表会でも彼の『黄金風景』を読むため、この旅行では高速道路に入ると原稿片手に練習練習。もちろん、さすがのAさんにもNにも多少のひんしゅくは買っている。


その太宰が旧制官立弘前高校時代に残した写真や書簡、フロックコートが展示されるというのでこれは行くしかない。


弘高新聞雑誌部送別会で洒落を言ったり冗談を飛ばすふざけた太宰、人懐っこく社交的で孤独に耐えられない人だった太宰が直筆のハガキから読み取れ


『黄金風景』のラストを「負けた、これはいいことだ。そうなければいけないのだ。かれらの勝利は、また私の明日の出発にも光を与える。」で綴った太宰の再生への期待を私なりに理解した。



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『奥入瀬トレッキング』

何度も東北に来ながら奥入瀬だけはいつか家族で完歩しよう、と箱入りにしていた。


いよいよその箱を開ける日を迎えられた幸せに感謝しながら奥入瀬の入り口である石ケ戸から入る。


あまりに有名でテレビでも写真集でもお馴染みの景色だが、実際それを目の当たりにする感動は散策路三歩歩ませず、であった。



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木漏れ日と緑陰を吹き抜ける風が苔むす岩を撫で奥入瀬川のせせらぎを渡っていく。




ブナ、サワグルミ、トチ・・・・・美しい渓畔林の中に瀬音が優しい五線譜を描き、木漏れ日はどこまでも優しい。



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フォトスポットを見つけては三脚を立てて5、4、3・・・とカウントダウンしながらNが走り込む。


奥入瀬川に橋を架けるように倒れた老木を裸足で渡って両手でピースはF。



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雲井の滝、白布の滝、玉簾の滝、不老の滝、九段の滝・・・と



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森の総10kmの散策路もラスト2km位から私がへばり始め、また、終点の子ノ口から駐車場までの折り返しバスがどうやら満員らしい、というので急遽Aさんが最後の滝、銚子大滝からバスに飛び乗り車で迎えに来てくれることになった。


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ここからは気力。奥入瀬完歩を目指してNが同窓会旅行のお土産に買ってきた那智黒を二個もらって黙々と歩く。


最後の1kmはNが傘の先を握って引っ張ってくれ、ローバースカウトだったFが「はいっ!あと1km~!頑張って行こう!!」と掛け声で押してくれた。


けれども、最後の遊歩道に入った途端にへばってはいられなくなった。


・・・きた・・・・・
・・・また、きた・・・・


足元に丸~るい染みがポツリ、ポツリ・・・ポツリ、ポツリ・・・


うそ、ほんと、うそ、ほんと、ほんと、ほんと、ほんと~~~~~~!!


で、いきなりの雨!!
昨日の白神山地の再来じゃない!!


ということで、Nの傘を引く力が強くなり、Fの掛け声が「がんば!がんば!」に変わる。


幸い ポツリ、ポツリが長続きして子ノ口に到着~、ガッツポーズ~!!の直後にザザーーー!!!で完歩。
滑り込みセーフ!!!


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『九重の湯』

奥入瀬近くのホテルはあの星野リゾートの一軒で、雑木林を映す吹き抜けのロビーにある岡本太郎の暖炉が迎えてくれた。


ホテルの温泉もさることながら、マイクロバスで5分程のところにある「九重の湯」にFと出かける。というのは普段混浴が9時のみ女性専用になるからだ。


ホテルの賑わいから一転、バスは街灯一つない真っ暗な道を曲がり山に向かって上り始めた。


白熱灯の下にひっそりと立つ湯殿を見つけ「秘湯」とはこういうところを言うのだろうと思った。


山の紅葉、桜、シダに囲まれた岩風呂のすぐそばに九重の滝が流れていた。


Fと二人、大きな岩にもたれながら今日見た奥入瀬の緩やかな川面を思い出した。


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今日はホテルから一時間以内の白神山地と岩木山を回るだけなので ゆっくり朝食を頂く。


都会人なんだと思う。
長旅の後半、スタイリッシュな空間と洗練された朝食にかえってくつろいだ。


『白神山地トレッキング』

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なんと記録しよう・・・


怖い体験、凄い体験、未曾有の体験・・・とにかくよく無事だったと思う。


トレッキングと言っても初心者レベル、お年寄りも小さい子も平気な道ということで 特別な装備もせず入山する。


天気も上々、マスカットグリーンに潤う山道は沢の音を木霊して鼻歌を誘う。



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それが、暑いくらいの川原を挨拶を交わして歩き いよいよ神なる山の気配を感じ始めた時、「ゴロゴロ」「ゴロゴロ」と遠くに雷鳴を聞いた。



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抜けるような青空が一枚布をひいたように霞み、山は光を失う。


目の前の(暗門の滝)に続く切り通しが黒い魔物のようにそそり立ち、滝が巻き起こす風は妖気あるものの到来を告げるように木の葉を舞わせた。


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思わず「怖い・・・」と言った。あと数歩で滝・・ そのあと数歩が怖くて踏み出せない。


無理矢理眺めた(暗門の滝)は もはや観光の対象ではなく山の聖霊宿る畏るべき生き物と化していた。



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再び「怖い・・・」と どこかで覚悟した途端 空が破けた。


ぽつり ぽつりの雨は あっという間にスコールとなって私達を襲い、景色を奪い、大人一人分の木道だけが足元にあった。


怖さが寒さ、冷たさに変わって、もはや沢となった山道をザブザブと登る。



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濡れて重くなった洋服を身にまといながら「これはもう着衣泳だね!!」と開き直り(水も滴るいい家族!!)とNが記念写真を撮る。


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道々言ってた冗談が本当になって駐車場に着く頃には青空が広がり、気の毒そうに管理人さんが出て来てビジターセンターの温泉を教えてくれる。


は~~~~~、助かった、と思いきや連泊ゆえ着替えはホテルに置いてきたことを思い出し意気消沈・・・


でも、最後の最後でAさんが自分だけ昨夜は必要品だけホテルに持ち込んだため着替えを入れたカバンがトランクにある、と言ったので 背に腹変えられず Nも私もAさんの洋服を借りる。


まるでAさんが三人いるみたいな車中で 私は思わず東京のFにメールを送った。「こちら白神山にて雪中行軍ならぬ雷雨中さながら着衣泳行軍なり!!」


『岩木山』

岩木山があんまり綺麗なのでAさんは迷わずスカイラインにハンドルを切る。


私はAさんのポロシャツを着たまま疲れて爆睡。目覚めた時は眼下にさざ波のように緑の山が連なる山頂にいた。


本州最北の輪郭線とエメラルド色の海の向こうに函館山が見えた。


『岩木山神社』

ベンガラの大きな鳥居を潜るとさっきの雨で息を吹き返した苔が迎えてくれた。


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「あ」「うん」の狛犬の下に 悪戯っぽく柱にしがみつく二匹の(こちらも)コマイヌ。愛嬌たっぷりの表情に白神山地での悪夢も正に字のごとく(夢)の向こうに消えていった。



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『帽子屋さん』

昨年の冬、雪灯籠祭りに来たときにNが帽子を買ったお店を思い出し、ふらっと寄ってみた。


お店にミシンを据えた本気の帽子屋さんでNは渋いダンガリーのハンチングを選び、バーゲンというので もひとつ洒落た焦げ茶のパナマ帽も頂いた。


東京から二度目の来店と告げると かっぷくのいいオーナーの小母さんと息子さんがそれは感激して下さり、手作りだというねぷた祭りのお飾りをお土産に下さった。


夜、Fが東京から駆けつけ、一気に賑やかになった。明日からまた家族四人 東北旅行ラストランの始まりだ。


(Aさんは昨日辺りから あ~あ、あ~あ、が始まった。)









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Photo by N