窓の向こうは雨。ブナ林が霞んで見えた。
チェックアウト12時のホテル、開き直ってゆっくり朝食、ゆっくり荷造りで出発する。
去年から青森に転勤している旅行好きの同級生が蔦温泉と沼地散策を勧めてくれたので車を走らせたが、散策路入り口に立つ「熊、野犬出没注意!!」の看板に犬が大の苦手なFがひるんで断念。

『八甲田山』
十和田湖に引き返えすつもりが 雨上がりの空に八甲田山がくっきりと見えたので、ハンドルをそちらに切る。
水草の合間に連山を静かに写して佇む「睡蓮沼」は蕩々と流れる奥入瀬川や幾つもの滝を見てきた私達の目を柔らかくほぐしてくれた。

『記念写真!?』

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(シンバ&ガッキはF&Nの子供達。つまりはAさんと私の孫達。)
『十和田湖プリンスホテル』
だいぶ疲れが溜まってきたので、ゆっくりお茶を楽しむことにした。
十和田湖畔にあるプリンスホテルのラウンジでAさんとNは珈琲 Fはハーブティー 私は紅茶を頼む。
庭でガーデナーが芝生の手入れをし、湖にはボートが大きな輪を描いていた。そんな景色を眺めながらAさんは地図を開き、Nはカメラの汚れを拭っている。

ぼんやりとしたこんな時間が私は好きだ。
気付くと私一人うたた寝し、三人は湖畔の芝生でホテルに備えてあったラクロス(のような玩具)に興じていた。
はにかみ屋のNが子供みたいに声を立てて笑い、ボールを逃しては派手に転んでズボンに芝生の緑の染みを付ける。
Nが可愛くてならないFは そんなNに望遠レンズでしきりにシャッターを切り、そんなFが可愛くてならないAさんはいつものオレンジスマイルで眼鏡をキュッキュッと動かしていた。

『発荷峠』
宿に行く前に発荷峠展望台に上った。青い薄絹を重ねたような空が 真昼の終わりを山に湖に告げる・・・その瞬間に立ち会った。
十和田湖を守る森は私の好きな硫酸銅の青、露草の青、ルドンの花の青だった。

『大湯温泉』
夜、大湯温泉でFの大好きなきりたんぽが比内地鶏汁としてテーブルに並んだ。
ひなびた温泉でありながら真っ白なクロスを掛けたテーブルをお座敷に用意する老舗旅館は開湯七百年、開業明治二年のプライド、と解した。
とっぷりと暮れた夜、Nと散歩に出た。びっくりする位のカエルの声、一日5便程の刻みを入れたバス停、車はもちろん ひとっこ一人いない県道をそぞろ歩いて旅館に戻ると
接客係のお嬢さんが大きなプラスチックケースを持って忙しく横切った。

翌朝、そのお嬢さんが作務衣姿で見送ってくれた。暖簾の下がった玄関でも、駐車場でもなく、県道に出る曲がり角で「ありがとうございました。」と手を振って下さった。
色んな(生きる場所)を想った。


















