魔女とレヴィ 第4話                                          甘い香りに誘われて 


 帰る道すがら、丘の中腹まで登る頃には、空は茜色に変わりかけていた。

 冷たい空気の中で、ふたりの吐く息が淡く溶けていく。


 その光景はまるで――

 長い旅の途中で見つけた、ひとときの安息のようだった。


 丘の上に立つと、海が金色に染まっていた。

 沈みかけた太陽が、波の向こうを静かに照らしている。


 百合夜は海の方を振り返り、風に揺れる髪を押さえながら言った。

 「レヴィ、綺麗でしょ。この景色が大好きなの」

 その声は、夕風に溶けるようにやわらかかった。


 「だから私は……ここを離れられないのね」

 百合夜は少し笑って、視線を遠くに向けた。

 「思い出が詰まってるから」


 レヴィは、その横顔をじっと見つめた。

 ただ百合夜を見ているというより――その奥にある、誰かの面影を見ているようだった。


 ふと、耳を押さえる。

 遠い記憶の底から、声が蘇る。


 (――レヴィ。私、この村の景色が好きなの。……あなたも、そうでしょう?)


 胸が軋んだ。

 思い出の残響が、波音のように心を打つ。


 「レヴィ? どうしたの……?」

 百合夜の声が近づく。


 レヴィは短く息を詰まらせ、目を伏せた。

 「……何でもない」


 その瞳には、ほんのわずかに揺れる光。

 それでも、いつものように整えた声音で言う。

 「……帰ろう」


 百合夜はしばらく彼の背中を見つめ、それから静かに頷いた。

 夕陽の名残が、二人の影を長く伸ばしていく。

 丘を登る足音が、ゆっくりと夜の気配に溶けていった。


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