市庁舎へ戻った頃には、すっかり夜になっていた。

窓の外には、平穏を取り戻した街が静かに広がっている。


「結界の効果は――ここから二百年は保つわ」


シンシアは淡々と説明した。


「ただし、忘れ去られないためにも、
百年ごとに管理は続けるつもりよ。
……たとえ、この都市が滅んだとしてもね」


そう言って、夜景へと視線を投げた。


「この度は、ありがとうございました」


ノーランは深く頭を下げる。


「急なお呼び立てにも関わらず、
ご対応いただき、心から感謝します」


「当然のことをしたまでよ」


「結界を施した場所は……
立ち入り禁止にすべきでしょうか?」


ノーランの問いに、レヴィが静かに答えた。


「その必要はない。
人の気配そのものが、彼らを地に封じている」


シンシアが補足する。


「レヴィの結界は、ルーン石を使わない。
盗まれることも、消されることもないわ。
力を注ぐ限り――永久に機能する」


レヴィは、軽く頷いた。


「……私の代で、完璧な封印ができたわ」


シンシアは二人を見た。


「レヴィ、ライ。感謝するわ」


「姐さんに感謝されるとか……」


ライは肩をすくめる。


「今この瞬間に世界が滅んでも、
おかしくねぇな」


レヴィは、深々と頷いた。


「……あんたたち、本当に失礼ね」


シンシアは呆れたように息をつく。


「今日はここで解散よ。
私は、寄りたいところがあるから」


「珍しいな」


レヴィが少しだけ目を見開く。


「今日も付き合えと言われるかと思ったが」


「なに?私のワイナリーに付き合いたいの?」


「嫌だ。帰る」


「……」


シンシアは、心底呆れた顔をした。



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第1話です。


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