魔女とレヴィ 第3話 夜の訪問者 


アルナは眉を上げ、グラスを置いた。

「……はぁ。まさか契約もなしにこの子がここにいるの? ふーん。」

その視線がちらりとレヴィへと流れる。

(――この妖精、百合夜を気に入ってるのね。)

唇の端が、かすかに笑みに歪んだ。


「じゃあ、改めて――」

百合夜はレヴィに向き直る。

「私は百合夜。夜に香る“百合"

で、百合夜。」


「……百合夜。」

レヴィはその名を静かに繰り返し、口の中で転がした。

「もう、知ってたけどな。」

照れを隠すように小声で言うと、

風がふっとひとひら舞い上がる。


その音が――どこか嬉しそうに響いた気がした。


ストーブの赤い光が、部屋の隅をやわらかく照らしていた。

グラスをくるくると回しながら、アルナがため息を漏らす。


「まったく……あんたって、本当に変な男にばっかり引っかかるのよねぇ、百合夜。」


「その話、やめて。」

百合夜はワインをひと口で飲み干し、テーブルに置いた。

グラスの底が、かすかに音を立てる。


レヴィはストーブの傍ら、静かに耳を傾けていた。

その肩に、大樹が眠そうにもたれかかる。

指でそっと頭を支えながら、レヴィの瞳がわずかに揺れた。


「だって、大樹の父親なんて――!」


「アルナ!」

百合夜が少し強い声で遮る。

「……あれでも、大樹の父親だったの。

 それに……」

視線を落とし、グラスの中の赤を見つめる。

「……あんなんでも、優しかった。」


アルナはしばし黙り込み、それから大きく息を吐いた。


「優しかった、ね。……でも百合夜。

 優しいだけの人間が、あんな裏切りできる?」

百合夜がわずかに肩をすくめる。

アルナはグラスを置き、真正面から友を見つめた。

「いい? あんたはずっと、自分を責めてるけど……

 悪いのは、裏切った方よ。

 思い出を“守る”ことと、“縛られる”ことは違う。

 もう、あんなやつのために傷つくのやめなさい。」


静寂。

ストーブの中で、小さく薪がはぜた。


「……ママ、大丈夫だよ。レヴィいるもん。」

大樹の眠たげな声が、場の空気をやわらかく変えた。


レヴィの瞳が一瞬、見開かれる。

そのまま無言で大樹を抱き上げ、寝室へ運ぶ。


扉を閉めようとして――

中から、アルナの声がまた響く。


「ほんとにね……あんな浮気旦那のこと、

 いい加減、忘れなさいよ。」


レヴィは静かに立ち止まった。

ドア越しに、百合夜のかすかな笑い声が聞こえる。


――“忘れる”という言葉。

その響きが、胸の奥に妙に重く残った。


人は、こんなにも痛みを抱えながら、

それでも誰かを想い続けるものなのか――。

レヴィはわずかに眉を寄せ、

眠る大樹の髪をそっと撫でた。


ストーブの火が、廊下の壁に赤い影を揺らしている。


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