魔女とレヴィ 第4話 甘い香りに誘われて
登場人物
レヴィ
ライ
エル
ジャン
アル
-1-
外の風は冷たく、丘の上の家の窓をかすかに震わせていた。
遠くで小鳥が鳴き、冬の光が静かに差し込んでいる。
ソファに腰を下ろしたレヴィは、膝の上に広げた新聞をぼんやりと眺めていた。
インクの匂いと、ストーブの鉄の香。
穏やかで、退屈で――けれど、不思議と悪くない時間。
その静けさを破るように、玄関の扉が勢いよく開いた。
「たっだいまー!」
百合夜の明るい声と一緒に、冷たい風と甘い香りが流れ込んできた。
レヴィが顔を上げると、百合夜が大きな紙袋を抱えて立っている。
袋の口から覗いているのは、茶色い包みと砂糖の袋、そして小さな瓶。
「……また、何を買ってきたんだ」
レヴィが新聞をたたむと、百合夜はにっこり笑った。
「チョコレートの材料! バレンタインの準備よ!」
「バレンタイン?」
レヴィは眉をひそめる。
聞き慣れたようでいて、どこか遠い響きだった。
「そう! 愛と感謝をこめてチョコを贈る日なの!」
「……贈る? 何の儀式だ」
「儀式じゃないの! ほら、季節のイベントっていうか――」
百合夜が荷物をテーブルに広げる。
可愛いラッピング袋、ハートの型、ピンクのリボン。
甘い香りの粒が、空気の中に少しずつほどけていく。
レヴィはその光景を眺め、小さくため息をついた。
(理解不能だ……)
「ほらレヴィ、ボーッとしてないで手伝って!」
「……は?」
「だってあなた、こういう作業得意でしょ? 混ぜたり溶かしたり!」
「それは“薬”の話だ」
百合夜はくすりと笑って、チョコの包みを開ける。
甘く濃厚な香りが、瞬く間に部屋を満たしていった。
それはまるで、見えない誰かを誘うように――。
――そのときだった。
レヴィの耳がふと震えた。
微かな魔力の波動が、空気を震わせる。
「……この感じ……まさか」
外の庭が淡く光り始めていた。
窓の外、霜の降りた芝生の上に、円を描くように草が揺れる。
――フェアリーサークル。
レヴィが立ち上がるのと、百合夜が「えっ?」と顔を出すのは同時だった。
光の輪の中から、影がひとつ、またひとつ。
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