【シングルよもやま話 57】 やはり本人的にはイヤだったらしい、あの可憐な美少女のデビュー曲! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 またまた間が空いてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私の方は4月から本業のタイムスケジュールが変わってからというもの、相変わらず自分の時間が充分取れない日々が続いております。いきおい、このブログも半ば開店休業状態に陥ってしまっていて、ちょくちょく覗きに来て下さる方には申し訳なく思いつつも、なかなか更新がままならず……なぬ「そんな“ご託”はどーでもいいからさっさと本題に入れ」とおっしゃる… うーむ、そりゃごもっとも。それでは気を取り直してさっそく「シングルよもやま話」、いってみましょうか

 もう一ヶ月も前の話になってしまうのですが、若手女優として人気のある某タレント
さんが、あるバラエティ番組に出演した時のこと。15年以上前のアイドル時代に出したデビュー曲を“抜き打ち”でオンエアされて、いたく取り乱した挙げ句、可憐なイメージにおよそ似つかわしくない暴言を吐いた(慌てて補足しておきますが、暴言と言っても、「いやだ!バカじゃないの~!?」「この番組最悪~!」程度だったらしいです)…、というネットニュースを目にしました

 実は1997年にリリースされた件(くだん)のデビュー曲をいたく気に入ってしまった私は、しっかりリアルタイムでCDを買っております
。でも、その若手女優さんがバラエティ番組で見せた反応を私が意外に感じる…なーんてことは微塵もなく「やっぱり本人的には“黒歴史”だったのかー」と、何だかミョーに納得させられてしまいました。もっとハッキリ言ってしまうと、私の中では「たった一曲だけで終わってしまった歌手活動のことを、彼女自身がどう思っているのかすごく知りたい…」と内心ウズウズしているような所があったので、長年の心のわだかまりが解けてスッキリしちゃったなぁ、といった感じです(←我ながらヤな性格だなぁ)。

 …と、ここまでつらつら書いてはみたものの、多くの方にとっては、「さっぱり何のことやら
」という感じですよね。どうもすいませんm(u_u)m。その“若手女優さん”と“デビュー曲”を、ここで種明かししておきましょう。これであります()。


「セピアの夏のフォトグラフ」(吹石一恵)
作詞:広瀬香美、作曲:広瀬香美、編曲:本間昭光/広瀬香美
[1997.7.24発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数 -万枚]
[歌手(?)メジャー度★★★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★]

  


 吹石一恵は、’80年代から子役として芸能活動をしていたらしいのですが、私が彼女を芸能人として認識したのは、1997年に人気ゲーム「ときめきメモリアル(ときメモ)」の映画版に出演したのが最初でした(今回ご紹介する「セピアの夏のフォトグラフ」は、その映画のテーマソング)。で、私が彼女の名前を最初に耳にした時にとっさに考えたのは、「むむっ、近鉄(バッファローズ)のあの“いぶし銀”吹石(徳一)と同じ名字じゃないか。珍しい名字ってことは、まさか実の娘か…?でも、美少女な娘とあの親父じゃ全然似てないから、きっと違うなーということ(←いま思えば、実に失礼千万な内容だぁね)。

 まぁそんなことはさておき作品のことですが。今回はまず曲を聴いてもらった方が、私が冒頭で書いた話を理解してもらいやすいと思うので、さっそくYouTubeをどうぞ~




 いかがでしたか。彼女の可憐なルックスからイメージする歌声とあまりにギャップのありすぎる“結果”に、衝撃
を受けた方もおられるのではないでしょうか(あ、イントロのコーラスは吹石さんじゃなくて作詞作曲の広瀬香美さんなので、お間違いなきよう)。彼女は決して“音痴”という訳ではないのですが、歌唱法が“自由奔放すぎる”というか“投げやり”というか…(あ、言っちゃった)。しかも、本人曰く「高い声が出ない(要するに、合唱のパートで言えば“アルト”なのでしょう)」ということで、レコーディングの際に音程を下げてるんですね。…となると、どうしても声は“野太く”聴こえちゃいますよ。これらのことをフツーの女の子がやっても揶揄されることはないでしょうが、よりによって可憐なイメージを持つ14歳の美少女が、名刺代わりのデビュー曲でカマしてくれちゃったから、みーんなひっくり返っちゃった

 でもね、彼女はもともと歌手を目指して芸能界入りしたのではないし、我々受け手サイドもデビュー曲がアレだったからって彼女を嫌いになったという話はとんと聴いたことがないので、歌手デビューの一件は彼女の芸歴にとっては些末なこと(現に私は今も彼女の大ファン
ですから。“健全なセクシー”なんてそうそう誰にでも醸し出せるものじゃありません)。で、いつの間にか歌手デビューのことは静かに封印されていたところを、今回18年ぶりにバラエティ番組で“寝た子を起こされて”しまった、というワケ。吹石さんにとってはホントにご愁傷様でしたが、これからも芸能界で生き長らえるつもりなら、“脛の傷”を左から右へと受け流す(←古い。しかも向きが逆)くらいの余裕を見せて戴きたいものですネ。もっとも、“取り乱す彼女”というのもなかなか可愛いのでそれもまた良し、ですが…(←好きなタレントには甘すぎるぞ)。

 さて、詞と曲は、独特のハイトーン・ヴォイスで’90年代半ばに冬のポップスシーンを席巻していた広瀬香美の手によるもの。彼女は、’90年代の最盛期に内田有紀、篠原涼子、森口博子、下川みくに、山口リエなどの女性アイドルや、森川美穂、神崎まき、相馬裕子、石嶺聡子、貴島サリオ、YOYOYOなどのガール・ポップ系アーティストなどにかなり多くのシングル作品を提供しているのですが、私の印象ではどうも作品としてはあまりパッとしないものが多い
んだよなぁ。もともと歌うアーティストに合わせて作風を変えるなんて器用なことはできない人だし(つまり職業作曲家としては厳しい)、オリジナリティあるメロディの引き出しもそんなに沢山持ち合わせてないように思うし…。そんな中にあって、「セピアの夏のフォトグラフ」は、終始一貫して広瀬香美ブランドだと分かるメロディ・ライン(しかもキャッチー)のオンパレードで出色の出来。とにかく聴いていてワクワクするのが良いです

 最後に、「歌が上手くない」という件に関してちょっとだけ(ウソ。長いので覚悟して
)。「歌が上手い」という事象は、例えば具体的には「音程が合っている」のように限定的な範囲に収斂する傾向があるため、いわゆる世間の評価がおおむね一致するのが常ですが、これを「歌が上手くない」と言い換えたとたんに話は面倒になってきます。ざっくり言えば、「歌が上手くない」=「歌が下手」+「歌が上手でも下手でもない」ですが、「歌が下手」と「歌が上手でも下手でもない」の境界には明確な“しきい値”が存在せず、“聴き手の感じ方”への依存度が大きくなってしまう。「AとBという“歌の上手くない”人がいる場合に、ある人はAの方がBよりも遙かに下手と感じ、またある人はそれとは全く逆に感じる」ことが多々ある所以ですね。

 私の考えでは、「歌謡曲の世界において歌が上手くない」と思われるケースでは、だいたい次のパターンが散見されます(とは言っても、歌手ごとに綺麗に分類できる訳ではなく、合併症を併発しているケースが多いのですが
)。
 (1) 音痴、または音程が不安定なパターン
 (2) 音程は合っているが、歌心(表現力)に難があるパターン
    (a) 歌い方が棒読み的、歌い方が素っ頓狂
    (b) 発声が稚拙(幼稚)、発声が不明瞭
    (c) 歌い方が丁寧さに欠ける
    (d)  声質が歌手向きでない

 吹石さんの場合、とりあえず(2)(c)、(2)(d)に該当するのは仕方がないとして
本人の(良い)イメージと激しくギャップのある歌唱を披露してしまったことが変にアクセント効果を呼び寄せてしまった不運なケースではないかと思います。同様に、本人のイメージとギャップのある歌唱を披露してしまったのが、沢口靖子[(2)(a)+アクセント効果]、木村佳乃[(2)(d)+アクセント効果]あたりと言えましょう

 上に挙げたパターンのうち、(1)は“聴き手の感じ方”にばらつきがあまりない要素ですが、(2)の(a)~(c)は個人的な好みが大きく影響する要素ですね
。ちなみに私の場合は、上から順により強い拒絶感(嫌悪感)を感じます。従って、あくまで私に言わせれば、吹石さん、沢口さん、木村さんよりも国生さゆり[(1)+(2)(a)]の方が遙かに歌が下手だと感じることになるワケ

 男性では、宮田恭男[(1)+(2)(b)]あたりが分かりやすいパターンでしょうか(いや、宮田恭男自体の知名度がなさすぎて分かりやすくない、か
)。有名どころでは、反町隆史[(1)+アクセント効果]のケースがありますね。彼の場合はなまじ氷室京介のカッコいい作品があてがわれてしまった分、彼の歌が始まる瞬間の衝撃度と、“やらかしちゃった度”はすさまじいものがありました…

 歌手本業でないタレントさんが歌手にチャレンジしようとする場合には、くれぐれも本人にとって“黒歴史”とならないよう、ぜひぜひご一考下さいませ


 それでは、今回はこんなところでおしまい
 またお逢いしましょう~