【お薦めシングルレビュー 48】 彗星のごとく現れて消えたあの女性歌手の癒し系ムード歌謡がイイッ | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 皆さん、ゴールデンウィークはいかがでしたか… 東京はちょっと暑いくらいの気候でしたが、雨とは無縁のいい行楽日和になりましたね~。かくいう私も、5連休の後半4日はブログそっちのけで家族サービスに徹しておりました

 さて、今回は久しぶりに“おすすめシングルレビュー”で行ってみたいと思います。ご紹介する作品はこちらであります()。



「愛してはいけない」(英亜里)
作詞:石郷岡豪、作曲:三保敬太郎、編曲:馬飼野康二
[1973.9.25発売; オリコン最高位100位; 売り上げ枚数0.6万枚]
[歌手メジャー度★★; 作品メジャー度★★; オススメ度★★★★]


 曲を歌っているのは、1968年、当時新進レコード会社だったCBSソニーの記念すべき第一号新人歌手英亜里です。民謡から歌の世界に飛び込んで、着物姿でビート歌謡から演歌までを歌いこなす逸材だったんですよね~…と書いてもきっとご存じの方は少ないでしょうし、そもそもどんな風に名前を読んだらいいのかすら分からない()かも…(正解は“はなぶさ あり”です)。

 彼女がデビューした1968年といえば、いわゆるGS(グループサウンズ)が全盛の頃に当たります。その一方で、伊東ゆかり奥村チヨ黛ジュン小川知子などの有力女性歌手が活躍する時代だったこともあって、“英(はなぶさ)”という凝った名字は、“黛ジュン”の芸名にあやかってつけられた
とのこと(ちなみに命名したのは、作詞家である川内“憂国の士”康範センセの奥さん)。「“ひで あさと”さんですかと訊かれるのはまだマシな方で、「日本の方ですかなーんていう質問もあったらしいです。彼女、確かに目鼻立ちがはっきりしてますもんね~。個人的にかなり好みのタイプだったりします(←実にどーでもいい情報でスイマセン)。

 英亜里のリリースしたシングルは、私の知る限りでも23枚(非売品除く。もう少しあるかも…ってなことで現在調査中です
)。このうち、オリコン100位以内にランクインした曲が7作品あって、一番売れたのはハマクラ(浜口庫之助)先生作詞作曲の2作目「花の手拍子」(1968.12.10発売、オリコン最高位30位、売り上げ枚数12.4万枚)ということになってます。 シングルの作風はなかなかバラエティに富んでいて平尾昌晃センセによるビート歌謡のデビュー曲「花を咲かせて」(1968.9.5発売、47位、6.3万枚)、いしだあゆみの世界を髣髴させるグルーヴ感が嬉しい筒美京平センセによる「娘の季節」(1970.6.21発売、-位、-万枚)、オトナの女性の世界をさらりと巧みに歌い上げたすぎやまこういち作品「札幌のあの人」(1972.1.21発売、-位、-万枚)などなど、佳曲が目白押し。もっとも個人的には、なかにし礼&ハマクラコンビによる分かりやすい“エ□歌謡”の「花は知りたい」(1970.2.21発売、66位、3.1万枚)あたりも捨てがたいなぁ…なーんて思ったりするワケですが作品ごとにかなり意識的に歌い方を変えている点も目を引きますね

 …さて、彼女の全般的な紹介はこの辺でおしまいにして、さっそく「愛してはいけない」の話に移りましょう。この曲、実は英亜里のオリジナル作品ではなく、1964年11月に和田弘とマヒナ・スターズがリリースしたシングルA面のカバーです
。マヒナの方は、放送当時の昼メロ最高視聴率を叩き出したTBS系ドラマ「女の斜塔」の主題歌で、“不倫”を思わせる歌詞内容が“いかにも昼メロ向きだよなぁ”といった印象です(ちなみに歌詞はこんな感じ)。


 ♪ 愛しては 愛してはいけない人なんだ
   私を泣かせないで 心を悲しませないで
   誰にも言えずに グラスに語る
   嘘じゃないの 本当なのよ
   死ぬほど 死ぬほど好きな あなたなの

 ♪ 愛しては 愛してはいけない人なのか
   私を苦しめないで 心をそそのかさないで
   涙で見つめた 憂いの丘を
   いついつまでも 忘られないの
   死ぬほど 死ぬほど好きな あなたなの

 ♪ 愛しては 愛してはいけない人じゃない
   私をじらさないで 心を惑わせないで
   すべてを賭けた 切ない胸なの
   嘘じゃないの 本当なのよ
   死ぬほど 死ぬほど好きな あなたなの



 曲の主人公が女性だということを考えると、マヒナよりも女性歌手が歌った方が似つかわしいことは間違いないのですが、これを英亜里がカバーすることになった事が、私にはちょっとした“奇跡”に思えるんですよね…
。とにかく“癒(いや)し度数”が抜群とでも言えばいいのか…切ない女の恋ごころを、彼女が実にいい雰囲気で歌っているのです

 “愛してはいけない人なんだ”“愛してはいけない人なのか”“愛してはいけない人じゃない”…と、歌詞が進むにつれて“好き”な気持ちがどんどん高じて、倫(みち)ならぬ恋に女性がずぶずぶと填ってゆく展開は、男性にとってはたまらない
ものがあります。このとき、曲を聴いてる男性の脳内では「そうだろ?やっぱ俺って魅力的だろぉ?」という妄想(というか勘違い)と征服欲が満たされた満足感とで、ドーパミンが出まくっているワケですね~

 ちなみにコンポーザーの三保敬太郎は、(元祖)ジャニーズフォーリーブスのシングルやアニメ関係(おんぶおばけ)でクレジットを見かけるジャズピアニストですが、やはり世間的には、あの「11PM」のテーマ音楽♪シャバダバ シャバダバ~ っていうアレ
)が一番有名でしょう

 最後になりますが、彼女はCBSソニーから東宝、ビクター、テイチク、トリオ、コロムビアと、レコード会社を転々としながらシングルをリリースした関係で、
数年前にオーダーメイドファクトリーがソニー時代のシングルベストを作ったのみで、アーティストとして”一気通貫”のベストアルバムが未だに発売されていません。従って、ビクター時代にリリースされた「愛してはいけない」も未CD化のまま…。何とか私が生きているうちにCD化してもらえないもんですかねぇ

 それでは、今回はこの辺でおしまいとします。またお逢いしましょう~

「愛してはいけない」(英亜里)

「11PMのテーマ」(作曲:三保敬太郎)