【シングルよもやま話 54】 あのベテラン男優による爽やかな青春エ●歌謡はいかが…? | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 前回の記事で、「すっかり温かくなって…」と書いたら、東京はその直後から寒いこと寒いこと… 気温変化の激しいおり、皆さん風邪など引かれていませんでしょうか

 さて今回は、少し目先の変わったところで、あのベテラン男優さんによる”埋もれた佳曲”をご紹介したいと思います。これですね(
)。


「初めての日」(市村正親)
作詞:なかにし礼、作曲:筒美京平、編曲:川村栄二

[1982.3.25発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★★; 作品メジャー度★; オススメ度★★]



 「初めての日」は、現役俳優である市村正親さんが、劇団四季の看板俳優として活躍していた若かりし頃(とは言っても、当時すでに33歳)にリリースした作品です。市村さんといえば、いまや実力派中堅女優の篠原涼子と親子ほどの年齢差を越えて結婚(市村さんにとっては再婚)したニュースがかなり衝撃的だったせいか、いまだに私の中では“いつも若々しい”イメージなんですが、この曲で聞かせてくれる彼の歌声が、作品の世界観とよくマッチして若々しくすがすがしいのが実にイイんですよねぇ(このお方は、昔から実年齢より若々しい印象だったんだなぁ…としみじみ)。それではさっそく、なかにし礼センセの手による歌詞を書き下してみましょう。


♪ 突然 身体をはなし 仰向けになると
   壁のしみ跡が グルグル回る
  あまりに美しい君の 裸が悪い
  あまりに柔らかな 君のくちびるがいけない
  ゴメンよ抱けなくて 俺今日が初めてなんだ
  微笑みながら 俺を抱き寄せる
  君の髪に 顔をうずめていると
  遠くで祭りの笛の音や 太鼓の音が 音が聞こえる

♪ 突然 乳房をつかみ 果物のように
  噛んで歯の跡を くっきりつける
  分かっているだろう俺は 死ぬほどに好きだ
  誰にも渡さない 君は俺のものだよ
  ゴメンよ抱けなくて 俺今日が初めてなんだ
  愛するあまり 俺が傷つけた
  君の胸で 涙拭っていると
  俺たち二人を探している 仲間の声が 声が聞こえる


 いかがでしょうか。詞に出てくる“俺”は、“君”のことが死ぬほど好きなのに、初めてのことでうまく抱けない。でも、そんな“俺”を、微笑みながら抱き寄せる“君”…。何となく、女性の方が年上という雰囲気ですかねー。いやぁ、題材はHだけど実に微笑ましくて爽やかじゃないですか。これはやはり、“あまりに美しい”、“あまりに柔らかな”、“果物のように”などのポジティブなフレーズを随所に散りばめたことが“勝因”ではないかと思います。

 詞を担当したなかにし礼センセは、「時には娼婦のように」(黒沢年男)(1978.2.10発売、オリコン最高位2位、売り上げ枚数60.8万枚)でも見られるように、男女の艶事(つやごと)を際どく描写した作品を意識的に多く書いた作詞家として有名ですが、同じエ□でも聴き手の印象がまったく異なる書き分けを巧みにやってのける所なんか、さすが職業作家のワザですよねぇ…。さらに、歌詞の状況から、“俺”と“君”がコトに及んでいるのは実はアウトドア)という笑える事実に気付くことができれば、なかにし礼センセも作家冥利に尽きるというものでしょう(←ほんまかいな)。

 個人的には、相手を軽く責めているようで実は絶賛する内容になっているA’メロ ♪ あまりに美しい君の 裸が悪い あまりに柔らかな 君のくちびるがいけない~ あたりの含蓄のあるフレーズが大好き
だったりなんかします。

 曲の構成は、A-A‘-B-C(サビ)-A-A‘-B-C(サビ)Aメロの一部が、イギリスのロックバンド“マンフレッド・マン”が1968年にリリースした「MY NAME IS JACK」を下敷きにしているのはほぼ100%間違いのないところ。こんな風に、“洋楽から得たヒントに新たなアイデアを吹き込んで実験的な作品を作る”というのが、筒美京平センセはお得意なんですよね~

 筒美センセの場合、サービス精神が旺盛なせいか、シングル作品では特に、“ヒットを狙って、盛り沢山の材料を入れて凝った味付けをする”パターンが多い
のですが、この「初めての日」は、サビ(Cメロ)を含めてどのパートも随分とあっさりした印象です。でもまぁ、爽やかな歌詞のイメージを生かすには、メロディが淡々と流れるこのくらいがちょうどいいのかも知れませんね

 それでは今回はこんなところで
 またお逢いしましょう~