【独偏ベストテン 46-1】 相本久美子のシングル作品 (1~10位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 年度末ということで公私ともに慌ただしい日々が過ぎ、ブログの更新がなかなかままなりませんが、皆さまいかがお過ごしでしょうか

 前回、トシちゃん(田原俊彦)の「独偏ベストテン」をやってから、またちょっと間が空いてしまって、そろそろ“独偏”が恋しくなる季節になりました(←そんなん私だけか)。そうですねぇ…。陽気もだんだん春めいてきて、女性アイドルを取り上げるのにピッタリの季節ということで、今回は時計を‘70年代に巻き戻して、相本久美子の独偏ベストテンということでいってみたいと思います。発表は、“1~10位”と“資料編”の2回に分けてお送りする予定です。

 

 

 

 

 

 


 …はいはい。ここでさっそくパソコンモニターの向こうから、「えっ 相本久美子って、ベストテンが成立するほど歌出してたっけ…という失礼な質問が聞こえてきましたよん。でも、その点についてはご心配なく。彼女は歌手デビュー後間もなく、改名して再デビューを果たしています。全部合わせると14枚のシングルをリリースしているんですよね

 元々の本名が相本久美子だった彼女は、中学生だった頃に、トノバン(加藤和彦センセ)作曲の「冒険」やザ・ベンチャーズ作曲の「回転木馬」などのヒットで知られる牧葉ユミのサイン会に参加した際に、牧葉ユミ本人からスカウトされたのをきっかけに芸能界入り。16歳だった1974年9月に「小さな抵抗」で、近藤久美子という芸名で歌手デビューを果たします。“近藤”名義では3枚のシングルをリリースしましたがヒットには結びつかず、その後、西城秀樹の推薦により事務所を芸映に移籍。この移籍が彼女にとって最大の転機となりました

 1976年3月に、芸名を本名に戻してリリースした再デビューシングル「初夏景色」がドラマの挿入歌となり、オリコン100位以内にランクインしたのは、事務所の力によるところ大ではないでしょうか。その後1981年まで、年2枚の緩やかなペースでシングルをリリースし続けますが、どちらかと言えば歌手というよりも、レギュラー出演していたTVバラエティ番組「TVジョッキー」で見せた可愛らしいミニスカート姿や、グラビアアイドルとしての印象の方が強いタレントさんと言えましょう。あとは、持ち前の出しゃばらない性格(←芸能界で大成するためには不向き)と、機転の利く受け答えを生かして、テレビ・ラジオの若者向け番組の司会・アシスタントを多く担当していた印象も強いですよね

 それではさっそく、wishy-washyが独断と偏見により選んだ「相本(近藤)久美子 シングルA面ベストテン」の結果を発表したいと思います。まずは、10位から6位をさらっとご紹介~。


第10位 EASY 【オススメ度★
作詞:康珍化、作曲:小田裕一郎、編曲:松井忠重
[1980.11.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

第9位 夏☆なのに I LOVE YOU 【オススメ度★★】
作詞:小林和子、作曲:穂口雄右、編曲:上田薫、穂口雄右
[1981.7.5発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

第8位 初夏景色 【オススメ度★★】
作詞:阿久悠、作曲:森田公一、編曲:馬飼野俊一
[1976.3.21発売; オリコン最高位59位; 売り上げ枚数1.9万枚]

第7位 チャイナ・タウンでよろめいて 【オススメ度★★】
作詞:松本隆、作曲:穂口雄右、編曲:矢野誠
[1979.2.25発売; オリコン最高位98位; 売り上げ枚数0.2万枚]

第6位 涙のドライブ 【オススメ度★★】
作詞:橋本淳、作曲:平尾昌晃、編曲:萩田光雄
[1978.5.21発売; オリコン最高位60位; 売り上げ枚数2.7万枚]



 さて、皆さんがご存知の曲があったでしょうか… ざっと眺めてみると、少しは知名度がありそうなのは、TBS系ドラマ「花吹雪はしご一家」の挿入歌になった「初夏景色」、♪ チャウチャウ というファニーなかけ声が印象的だった「チャイナ・タウンでよろめいて」、鎌倉~江ノ島あたりをドライブする時に必ず誰かが口ずさむ「涙のドライブ」あたりでしょうか

 …と、ここで何と重大発表をしなくてはなりません(重大というのはウソ
)。 今回の独偏ベストテンでは、上位5曲を発表する前にオリコン100位以内にランクインした曲がすべて登場してしまいました…。そう、彼女のシングルA面14作品のうち、オリコン100位以内に入った作品はたった3曲しかないんですよね…。つまり、これから発表する上位5曲はことごとく、“まったく売れなかった作品”ということになります。うーむ、素晴らしい作品ばかりなのに、世間の皆さんって案外“見る眼”がないのねぇ…(ひとりごと)。それでは上位5曲を一気にどうぞ~。


第5位 聞きたいことがあるの (近藤久美子 名義) 【オススメ度★★★】
作詞:千家和也、作曲:穂口雄右、編曲:穂口雄右
[1975.1.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 第5位にランクインしたのは、近藤久美子名義としてリリースされた3枚のシングルでは唯一のマイナー調作品にして、2作目シングル「聞きたいことがあるの」でした~。ちなみに、作詞作曲を手掛けた千家和也-穂口雄右コンビは、キャンディーズの「年下の男の子」と同じ作家陣でありまして、この1ヶ月後に「年下…」が大ヒットすることになります

 で、この曲はとにかく詞が重いです。1番だけ書き下してみましょう。

 ♪ 例えば愛について 深く考えてみたことが
   今まで二人に あったでしょうか
   突然こんなことを 私みたいな女の子に
   訊かれてあなたは 戸惑うでしょう
   好きよ好きよ だからよけい強く強く
   あなたの心を 知っておきたい
   他の人とまるで違う あなただけの私になりたい
   同じ空を同じ気持ちで 見つめていたいの


 初めての恋に揺れる自分と真剣に向き合うあまり、“彼女”の“あなた(♂)”に対する気持ちは“超”がつくくらい重量級に…
。平成の世にはさすがにこんな高校生カップルはいないと思いますが、昭和世代にとっては意外と、「若い頃はこんな感じになって失敗したっけ…(遠い目)」と、共感してもらえるのではないでしょうか。

 そんな、♂とっては重~い心情を、近藤久美子がちょっとたどたどしく、切々と歌い上げているのもポイント高いですね
。本人曰く、“素の自分は男まさりでさっぱりとした性格”だそうなので、この曲の歌詞に登場する女の子とはだいぶ性格が違いそう。でも、そこをさらりとこなしてしまう辺りに、彼女の当意即妙なキャラクターがよく表れているなぁ…と思わず感心してしまうのです



第4位 1と5 (近藤久美子 名義) 【オススメ度★★★】
作詞:千家和也、作曲:森田公一、編曲:高田弘
[1975.6.1発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 独偏ベストテン第4位は、3作目シングル「1と5」でした う~む、いかにも彼女のイメージに相応しい明るくお茶目なアイドル歌謡で、頭サビもキャッチーだし歌詞も分かりやすいなかなかの“売れ線”だと思うんですがねぇ…どういうわけか売れませんでした。なかなか難しいものです

 詞の方は、男のコのことを冒頭で“ろくでなし”呼ばわりしておいて、ラストで“似たもの同士で大好き
”とオチを付ける“おのろけ路線”。「1と5」を聴いてすぐにキャンディーズの「年下の男の子」を連想した方はさすがです。どちらも千家和也センセの“お家芸”とする定番パターンなんですよね。

 森田公一センセによる曲の方は、構成が A(サビ)-B-C-B’-A(サビ)-B-C-B’-C-B’-A(サビ)。森田作品に特徴的な、口ずさみやすくて流れるようなメロディラインが、この「1と5」でも健在
です。森田センセといえば、千家和也センセ同様、キャンディーズのシングル作家陣として活躍した作家でもあるので、キャンディーズの曲が好きな方には、近藤久美子のデビュー3部作(「小さな抵抗」-「聞きたいことがあるの」-「1と5」)もきっと気に入って戴けること請け合いなのです



第3位 ヒロイン 【オススメ度★★★】
作詞:橋本淳、作曲:平尾昌晃、編曲:萩田光雄
[1978.10.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]

 ベスト3の一角に食いこんだのは、7作目シングル「ヒロイン」でした~。例によってこの作品もヒットしなかったのですが、印象的な頭サビ(♪ Good-bye Good-bye I say Good-bye Good-bye)のせいで、意外と記憶にある方も多いのでは…

 デビュー6年目のこの頃にはすでに“相本久美子”だった彼女もすっかり“あどけなさ”が抜けていい感じにオトナになってきて、この「ヒロイン」をはじめ、提供されるシングルも等身大の彼女に良く合っていたように思います。売れませんでしたが…(←しつこい)。

 曲の構成は、A(サビ)-B-C-D-A‘(サビ)-B-C-D-A‘(サビ)-A(サビ)となっていて、メロディ自体は割とオーソドックスな歌謡曲なのですが、曲の展開がバラエティに富んでいる分、聴き手を飽きさせません。特に、BメロからCメロ(♪ 残り香を シャツに滲ませて~)への展開や、CメロからDメロ(♪ Ah このやるせない Ah 物語を~)への展開はなかなか気が利いていて、「平尾昌晃センセ、やるじゃん」ってな感じです。また、ラス前のトリッキーなリズム変化も“嬉しい不意打ち”と言えますね。

 

 




第2位 お熱いのはお好き? 【オススメ度★★★★】
作詞:松本隆、作曲:穂口雄右、編曲:大村雅朗
[1979.6.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 堂々第2位に輝いたのは、9作目シングル「お熱いのはお好き?」でした~。一般的に、売れない女性アイドルがセクシー路線に足を踏み込むと、大抵の場合(やりすぎ)なことが多くて困ってしまうのですが、相本久美子のセクシー路線の楽曲は、この「お熱いのはお好き」といい、独偏第7位に入った「チャイナ・タウンでよろめいて」といい、下品な感じにならなくって実に良かったなぁ~と思うのです


 まず、アメリカのコメディ映画のタイトルから取った決めゼリフ「お熱いのはお好き?」に至るまでの“セニョール”と“セニョリータ”の掛け合いが面白いですし、“セニョリータ”の心象風景が鮮やかに浮かび上がってくるのも素晴らしい。そして何と言っても、松本隆センセが、適度に抑制のきいたフレーズ選びをもってして、相本久美子の上品な魅力(健康的なセクシー)を絶妙なさじ加減で引き出している点が“ワザあり”なんですよね いくら“お色気”がテーマの作品だからって、単にエ□ければいいってものではないのです。


 穂口雄右センセによる曲の構成は、A-B-C(サビ)-A-B-C(サビ)-B-C(サビ)-C(サビ)。Aメロ~Cメロのどれも素晴らしいのですが、特にBメロ(♪ 誰なのそこで 見てるのは~)は怪しげな雰囲気がよく出ていて歌詞の内容ともピッタリなのがいい この手のラテンサウンドには欠かせないボンゴが大活躍なのも嬉しいですし、時々聞こえるむせび泣くようなクイーカ(要するに、ゴン太くんの声に使われていたサウンド)も効果的に使われている秀作だと思います。




第1位 小さな抵抗 (近藤久美子 名義) 【オススメ度★★★★★】
作詞:千家和也、作曲:森田公一、編曲:高田弘
[1974.9.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 「wishy-washyによる独偏ベストテン 相本久美子のシングルA面」の栄えある()頂点に立ったのは、彼女のデビュー曲「小さな抵抗」でした~ わ~、パチパチパチ んもう、私に言わせればこの作品は、詞・曲・アレンジ・歌唱・レコードジャケット…とベクトルの向きがぴったり揃って、実に高い完成度に達していると思うんですよね まずは、ジャケットと歌詞からどうぞ~。

 

 


  ♪ いじめてやろうかな とても気になる男の子
    顔が合うといつも ケンカしちゃうあいつと
    おマセでおてんばで どんな娘になるのかと
    いつも周りの人は私を心配しているわ
(※) 夕べもパパに言われたわ 「お前は誰に似たのかな」
    アアンアン 女の子 アアンアン 損するわ
    たまに私も思うの 男の子に生まれたかったわ


  ♪ 泣かせてやろうかな とても可愛い男の子
    ほほを赤く染めて こちらばかり見てるわ
    小さなこの街で 私知らない人はない
    いつもウワサされてる私は評判娘なの
    夕べもママは泣いてたわ 「年頃らしくしなさい」と
    アアンアン 女の子 アアンアン 損するわ
    たまに私も思うの 男の子に生まれたかったわ
    (※ くりかえし)



 この歌詞、あまりにお気に入り
なもんで、すべて書き下してしまいました。自然体でお茶目なレコードジャケットも文句なしです。“ボーイッシュだけどとびっきり可愛い”…これはもう、デビュー当時の近藤久美子そのまんまですし、おそらく彼女以外の誰が歌っても、きっと私はどこか物足りなく感じていただろうなぁ、と思わせるものがあるんですよね…。同じコンセプトのアイドル歌謡としては、酒井法子の「男のコになりたい」がありますが、正直言って「小さな抵抗」の方に数段出来がいいように思います(以前ブログに書いた通り、「男のコに…」に関しては私もちょこっと噛んでいたので、あまり偉そうなことは言えないのですが)。


 曲の構成は、A-A’-B-C(サビ)-A-A’-B-C(サビ)-B-C(サビ)となっていて、こちらも「森田公一センセはやっぱり『青春讃歌』を書かせたらピカイチだなぁ…としみじみ唸ってしまう出色の出来。新人アイドル歌手に相応しいウキウキ気分のイントロもいいですし、大きく展開して歌謡曲の楽しさを満喫させてくれるBメロ(♪ 夕べもパパに言われたわ~)あたりも絶妙です。そして特筆すべきは、Bメロのところでヴォーカルを追っかけるオブリガードが素晴らしいことですね~まったく、高田弘センセが憎らしいくらいいい仕事をやってくれちゃってます


 ヴォーカルの相本(近藤)久美子も、歌がもの凄く上手というワケではありませんが、キュートな声質はアイドルポップス向き。芸映の後輩に当たる芳本美代子あたりと同じく、“うまく作品をあてがってやると生きるタイプ”ではないでしょうか。そして良くも悪くも、この“ソツのないこなしぶり(=何をやらせてもそこそこに合格点をとってしまう)”が、彼女の芸能界での立ち位置(=特に代表作と呼べるものもないのに、どういうわけか“長持ち”した)を如実に示していると思っているのは、きっと私だけではないはずです。


 


 ・・・さて、独偏ベストテンランキングの結果発表は以上になります。今回は上位5曲が無名の作品ばかりだったので、果たして皆さんがちゃんとついてきてくれているか甚だ疑問なんですけどね…。ま、アイドルポップス好きな方にとっては、きっと“掘り出し物”的な作品が一つくらいあったはずと信じつつ、幕を閉じることにいたしましょう


 そして毎度のことながら、ここまで長い記事にお付き合い下さった皆さん、本当にどうもありがとうございましたm(_ _ )m。次回の記事は「【独偏ベストテン Vol.46-2】 相本久美子のシングル作品 (資料編)」と題して、基礎データ資料を紹介しますので、引き続きお付き合い下さいね


 それでは今回はこの辺で またお逢いしましょう~