【お薦めシングルレビュー 46】 清純派女優が爽やかに歌うベンチャーズ歌謡の名作デュエット作品! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 今回は久々に時計の針をグググッと巻き戻して、’60年代の日本にタイムスリップしてみましょう

 ‘50年代半ばから’60年代にかけては、老舗の映画会社として知られる日活の黄金時代と言われ、歌謡曲と映画をコラボした“歌謡映画”が大流行しました
。その先鞭を付けたのが、『太陽の季節』(1956年)で華々しいデビューを飾った石原裕次郎であることは、皆さんもすでにご存知のことと思います。

 “歌謡映画”の最大の特徴は、「まずは歌ありき」であること
誤解を恐れずに書いてしまうと、「歌=主、映画=従」ってことですね。従って、歌のタイトルが映画にも冠されて、映画のシナリオも後から作られる、ということになります。もちろん、大抵の映画には、“主題歌”や“挿入歌”をはじめとして沢山の歌が登場するのであって、そうした主題歌等がヒットするケースも多い(今年で言えば、『アナと雪の女王』の主題歌「Let It Go ~ありのままで~」(松たか子、May J.)あたりになりましょうか)ですが、通常の映画では、両者はあくまでも「映画=主、歌=従」の関係になっているのです

 裕次郎をはじめ小林旭赤木圭一郎などによる‘50年代の“アクション路線”が一段落すると、’60年代に入ってからの日活は“青春路線”にギアチェンジ
。これがまんまと当たったんですね~。女優では、吉永小百合松原智恵子和泉雅子など、男優では、浜田光夫高橋英樹(言わずと知れたマーサのお父様)、舟木一夫西郷輝彦三田明…あたりが人気を博しました。’60年代も中盤に差しかかると、エレキ・ブームに湧いた世相を反映して、グループ・サウンズ(GS)をフィーチャーした歌謡映画が量産され、活況を呈することに。中でもザ・タイガースザ・スパイダーズヴィレッジ・シンガーズあたりは、グループ名を冠した歌謡映画(もちろん主演ですよ、主演)が何作も作られていることからも、実質的に人気があったことが伺えます

 …と、長い前置きはこの辺にして、今回ご紹介するのはこの曲で~す(
)。マニアック好みな私らしくもない超メジャー級の作品ですが、実にいいんですよ、これが


「二人の銀座」(和泉雅子、山内賢)
作詞:永六輔、作曲:ザ・ベンチャーズ、編曲:川口真
[1966.9.5発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚(オリコンチャート開始以前のため、最高位・売り上げ枚数の記録なし)]
[歌手メジャー度★★★★★; 作品メジャー度★★★★★; オススメ度★★★★]

  


 この作品がリリースされた年、私はまだ1歳。当然のことながらリアルタイムでの記憶はありません。オリコンチャートが始まる前のため明確な数字は残っていませんが、60万枚を超える大ヒットになったそうです。…で、上にも書いたように、この作品のヒットを受けて同タイトルの映画が製作されています(封切りは1967年2月、主役はもちろん和泉雅子山内賢)。ちなみにこの映画は、“歌謡曲”の観点からもポイントの高い作品でして、当時まだデビューしたばかりの“ジャッキー吉川とブルー・コメッツ”と“ヴィレッジ・シンガーズ”が出演して、ブルコメは「青い瞳」や「ブルー・シャトウ」を、ヴィレッジ・シンガーズは「君を求めて」を歌ったりなんかしています

 和泉雅子と言えば、私くらいのアラフィフ世代にとっては、“日本人女性初の北極点到達という偉業を成し遂げた冒険家”、あとは“人気クイズ番組「ほんものは誰だ?!」の解答者”といった印象がどうしても強いんですよね~
(私にとって“雅子”といえば、大林、もとい、夏目雅子様が“美人女優ピラミッド(←そんなんあるのか)”の頂点なので…)。だから、若い頃に吉永小百合と同じ路線でアイドル女優かつ流行歌手として一花も二花も咲かせたお方というイメージは微塵もなかった(失礼)、というのが正直なところ。でも、レコードジャケットのスリムなお姿や可愛らしい歌声を拝見・拝聴すると、「なるほど、こりゃ清純派女優として人気があったというのも納得だなぁ…」と思いますねぇ(目から大量のウロコがぼろぼろと落ちました いやほんとに)。

 今回ご紹介する「二人の銀座」は、いわゆる“ベンチャーズ歌謡”の嚆矢として有名な作品ですザ・ベンチャーズは、言わずと知れた’60~’70年代に世界的なエレキ・ブームを巻き起こしたアメリカのインストグループで、メンバーを変えながら現在も活動中ってんだからすごい(今年の夏もコンサートのため来日。何と結成55周年記念のツアーだそうです)。それと、この曲はザ・ベンチャーズの書き下ろし作品ではなく、もともと銀座の夜景をイメージして書いた“Ginza Light”というインスト曲に永六輔が詞を付けて誕生した、という話にも驚かされます。歌謡曲として発表されるという前提ナシに作られた(要は自分たちのレパートリー用に作ったわけだ)にも関わらず、日本人の心の琴線に触れるようなマイナー基本3コード(Am-Dm-E7)というツボをきっちりと押さえた作り彼らの音楽性と我が国の歌謡曲との親和性の高さを象徴するようなエピソードではありませんか 歌謡曲としてのメロディの出来がこれだけいいと、曲の構成なんかシンプル(A-A-B-A-B-A)でも、物足りない感じが全然しないから不思議なものですねぇ

 この後間もなく、彼らの作曲による渚ゆう子「京都の恋」(1970.5.25発売、オリコン最高位1位、売り上げ枚数85.1万枚)、「京都慕情」(1970.12.1発売、オリコン最高位2位、売り上げ枚数39.4万枚)や、欧陽菲菲「雨の御堂筋」(1971.9.5発売、オリコン最高位1位、売り上げ枚数79.2万枚)などが大ヒットすることになるわけですが、これはもう私には予定調和的な出来事だったように思えてなりません。


(Aメロ) ♪ 待ち合わせて 歩き銀座
        灯ともし頃 恋の銀座
        僕と君が映る ウインドー
        肩を寄せて 指をからませ 二人の銀座
(Aメロ)  触れあう頬 夜の二人
       甘い香り 熱い二人
       みゆき通り すずらん通り
       何も言わず ときめく胸の 二人の銀座
(Bメロ) ♪ 銀座 二人だけの
        星もネオンも 僕と私のもの
(Aメロ)♪ 夜も更けて 消えたネオン
       星空だけ 恋人だけ
       ペーヴメントに 寄り添う影が
       重なるとき 初めてのキス
       二人の銀座 二人の銀座 …



 あと、この曲は私が敬愛してやまない作曲家・編曲家である川口真センセが“川口真”名義で初めてアレンジした記念すべき作品でもあるんですよね~(それ以前は、いずみたくセンセの名義でアシスタントとして編曲の仕事をしていた)。もともとインスト作品だったこの曲をデュエットソングに“化粧直し”するに当たって、ギターの追っかけメロディを男声・女声で分担させたり、楽器を置き換えて裏メロを追加したりと、オリジナルのアイデアがあちこちに盛り込まれていて、いかにも「仕事きっちり」の川口真センセらしい仕上がりになっていると思います

 歌に関しては、何と言っても和泉雅子さんの歌唱が心もとなくって、音程もかなり怪しいのがアレ
(アレってどれだよ)ですが、何となくトロそうで幼児的な発声法が、慣れると意外と心地良かったりなんかして(爆)。せっかくの名曲が、アレな歌唱のせいで私がズッコけたのは、「秘密のオルゴール」(川田あつ子)以来のこと…かも知れません。でもまぁ、和泉さんの場合は歌手よりも清純派女優というのがウリだったんでしょうし、楽曲の素晴らしさに免じて目をつぶることに致しませう…(←我ながら美人に甘いぞ)。

 “ベンチャーズ歌謡”については、他にもまだお気に入りの作品があるので、また別の機会に取り上げたいと思います
。それでは今回はこんなところで またお逢いしましょう~