【お薦めシングルレビュー 45】 あのフリークアイドルの陽の目を見なかった極上アイドルポップス! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 オリコンチャートを眺めていると、次に挙げるような後世に語り継がれる女性アイドルの名曲が、意外とベストテンに入ってなかったりします

●「乙女のワルツ」(伊藤咲子)(1975.7.5発売、オリコン最高位24位、売り上げ枚数13.3万枚)
●「夏のお嬢さん」(榊原郁恵)(1978.7.1発売、11位、20.2万枚)
●「狼なんか怖くない」(石野真子)(1978.3.25発売、17位、10.4万枚)

 これらは、「アイドルが’70年代にチャート上位に入ることがいかに難しかったか」を如実に示すデータ
と言えますが、それでも、売り上げ記録をオリコンに残すことのできた彼女たちはまだラッキーかも知れません鳴り物入りでアイドル歌手デビューを果たしたにも関わらず、チャートに数字を残せずに“アイドル”の看板を下ろすことを余儀なくされた女のコたちが、それこそ星の数ほどいたんですから…(←さすがに大げさだったか

 ってなわけで今回は、’70年代に事務所の期待を一身に背負って歌手デビューし、そして惜しくも敗れ去ったあの女性アイドルの名曲をご紹介したいと思います
。これですね()。


「シンデレラ」(高見知佳)
作詞:橋本淳、作曲:筒美京平、編曲:船山基紀
[1978.11.1発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-位]
[歌手メジャー度★★★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★★]


 高見知佳に対するパブリックイメージは、おそらく1979年から1985年まで放映されていたクイズ番組「アイ・アイ ゲーム」で人気だった “バラドル”的な女のコ…、あるいは、土曜昼の情報バラエティ番組「TVグラフィティ」で、オヒョイ(藤村俊二)と一緒にVTR前に「カッフーン」と叫んでいたコ…、といった感じだと思います。ちなみに「アイ・アイ ゲーム」とは、当時高校生くらいだった私の“お気に入り”で、今は亡き山城新伍が、『チョメチョメ』(←久米宏が「ぴったしカンカン」で流行らせた『ほにゃらら』みたいなもんです)という流行語をかっ飛ばした番組ですね

 …それはともかく、そもそも高見知佳を歌手として認知している人って、世間にそれほど多くないのではないでしょうか
 ところが実は、彼女が歌手デビューから約8年の間に出したシングルは、何と19作品っ バラエティ番組で世間に認知された後も、1981年頃まではアイドル路線の延長上にあるシングルをコンスタントにリリースしていたのです。でも、残念なことに、セールスにはことごとく結びつきませんでした。彼女が歌手として“陽の目”を見た(=オリコンチャートに登場した)のは、1984年に資生堂化粧品春のキャンペーンソングとなった「くちびるヌード」(1984.2.1発売、16位、10.4万枚)だけ。初期シングル作家陣の顔ぶれ(筒美京平、馬飼野康二、加藤和彦、西島三重子など)を眺めてもスタッフサイドの力の入れようが伝わってくるのに、その辺はまったく評価されず、タイアップをつけた作品だけが売れるというしょっぱい事実に、私はちょっとムカツキ気味だったりなんかして

 1978年に、今回ご紹介する「シンデレラ」でデビューした高見知佳は、ボーイッシュなのに実に可愛らしい女のコでした
。私の第一印象はズバリ、’70年代に大流行したモンチッチ。そう、“正統派アイドル”というよりも“愛玩動物(要するにペット)”的な魅力を持った、ちょっとマニア好みのフリーク・アイドルだったんですねー。彼女と同期(1978.11.1デビューなので1979年組)の女性アイドルを挙げてみると、倉田まり子井上望BIBI能瀬慶子フィーバーザ・チェリーズ菅沢恵子(ちょっと別枠的なところで竹内まりや杏里石川優子桑江知子大滝裕子越美晴川島なお美など。おお、別枠の方がよほど豊作じゃ~)…あたりってことで、ハッキリ言って“女性アイドル不作の年”の中で、個人的には「高見知佳ってかなりいい線いってるよなぁ」と感じたのですが…(←さすがマニア)。

 彼女が「シンデレラ」を歌うときの“おとぎ話から飛び出してきたような衣装(赤で揃えたベレー帽とベルベットのミニスカートの組み合わせ)もとっても可愛らしかった
し、子供の頃に「ちびっこのど自慢」でならしたという歌の方も安定感がありました。おまけに、所属事務所が大手の田辺エージェンシー、橋本淳-筒美京平という超売れっ子コンビの手掛けた佳曲でデビュー…とくればさぞかし売れるはず…と思っていたら、まさかのオリコン圏外(100位に入らず)  「スタア」(甲斐智枝美)のときも書いたのですが、あたしゃ何かの間違いじゃないかと思いましたよ。デビュー間もなく出演した「アイ・アイゲーム」では、頭の回転の良さをフル稼動して新たな一面を見せてくれた彼女も、際どいエッチネタにも奔放な回答ぶりだったのが「アイドルらしからぬ」と敬遠されてしまったのかなぁ…

 おっと、そろそろ作品の話に移らないといけませんね。まず、曲の構成は、A-B(サビ)-C-A-B
(サビ)-C-B(サビ)-C曲の方は、本人の脳天気な性格とはウラハラに、正統派アイドルポップスのお手本のような作品に仕上がっています。何てったって、タイトルが「シンデレラ」ですから …でも歌詞をよく見ると、主人公が可愛いシンデレラになりきれない我が身を憂える…という、彼女のイメージに近くてちょっぴり切ないストーリーなんですね。こんな歌詞になってます()。

(Aメロ) ♪ テレフォンブック ぱらぱら
       ダイヤル回すけど 心はうわの空
       ダーリン あなたの愛と誠を
       いくつも 傷つけてきた
(Bメロ・サビ) シンデレラのような レディになりたかった
      誰からも愛される ヒロイン
      Ah…約束は守れない いい娘(こ)にもなれない
      あなたが 優しすぎて…
(Cメロ) 12時の鐘は 鳴りわたるけれど
      Never come home Never come home
      おうちには帰れない

(Aメロ) ♪ ガラスの靴を はくけど
       心はセルロイド あなたに尽くせない
       ダーリン あなたが幸せになれば
       それで 夢が叶うのよ
(Bメロ・サビ) シンデレラのような レディになりたかった
      誰からも愛される ヒロイン
      Ah…サヨナラの口づけが 針のように痛くて
      声をあげて泣いたわ…


 いかがでしょう。メルヘンチックで可愛らしい世界観だけれど、歌詞内容は等身大の高見知佳にちゃんとしっくりくるなぁと思いませんか


 筒美センセによる曲は、新人アイドル歌手に提供された作品としてはメロディがなかなか複雑で難易度が高い
ものですが、彼女がよく歌いこなしてますアイドル度120%の ♪ ダーリン のところが、おそらく作家陣の注文通りの歌い回しになっているのも嬉しい限り。船山センセによるアレンジは、ブレイクのところに「シンデレラ」を象徴する「12時の鐘」を音をフィーチャーしてるのが聞きどころですね。この鐘があるお蔭で、正統派アイドルポップス指数がグッとアップして、理想的な仕上がりの作品になっているのです

 それでは、今回はこんなところで
 またお逢いしましょう~