【独偏ベストテン 43-2】 ピンク・レディーのシングル作品 (1~5位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 

 前回の記事に引き続いて、今回もピンク・レディーのシングル(A面)を対象とした「独断と偏見によるベストテン」をお送りします。

 

 

 

 


 それではさっそく、上位5曲を一気にどうぞ~

第5位 UFO 【オススメ度★★★★】
作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一、編曲:都倉俊一
[1977.12.5発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数155.4万枚]


 独偏ベストテンの第5位に入ったのは、6作目シングルにして3作目のオリコン1位獲得曲となった「UFO」でした~。この曲は、ピンク・レディーの全シングル中最高売り上げ枚数を誇る記念すべき作品でもあります。いやはやもうこの頃には、日本中がピンク・レディー一色に染め上げられたんじゃないかとガキの私が思ってしまうほど、彼女達はとてつもなく大きな存在に化けていました。シングルの初回プレス枚数が70(~80)万枚というケタ外れの数字だったことも、当時のピンク・レディーブームがいかに凄まじいものだったかを如実に物語っていますよね。

 この作品でまず特筆すべきは、やはり阿久悠センセによる歌詞の題材の選び方が冴えまくっている点でしょう
。 “言葉を交わさなくても意思の疎通ができる”というのは恋人(ひいては夫婦)関係の理想型でもあるワケですが、その相手を宇宙人に設定するなんて、私みたいな凡人にはちょっと思いつかない発想です。♪ 近頃少し 地球の男に 飽きたところよ アー という決めゼリフも、バチっと決まってますし。 さらにさらに、“宇宙人”というフレーズを一度も使わずに、「私の心を揺さぶるあなた」の正体を状況の描写のみで伝達するところも、さすがの“プロ仕事”と言えましょう(ちなみに前回記事で第9位に入った「サウスポー」でも、“王選手”というフレーズは一度も出てきません)。

 都倉センセの手によるサウンドの方も、いかにもなSFチックの効果音といい、ドッドッドッと地響きのように不穏に響くサウンドといい、まさにノリにノッている感じが作品に現れています
。もちろん、サビのBメロ(♪ 信じられない ことばかりあるの~)に、甘く“聴かせる”ハモり部分を仕込むのも忘れていません。これはもう、売れて当然の作品だと思います。



第4位 ペッパー警部 【オススメ度★★★★】
作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一、編曲:都倉俊一
[1976.8.25発売; オリコン最高位4位; 売り上げ枚数60.5万枚]


 第4位に入ったのは、記念すべきデビューシングル「ペッパー警部」でした~ 初めてテレビでナマ歌を見た私は、当時まだ小学校5年生。いい曲だったなぁという記憶はそれなりにあるのですが、それより何より、健康的なミニスカートのおネエちゃん2人が繰り広げるキワどい振付け(両手でマタをパカパカさせるように見えるアレですね)にほとんど目がクギ付け状態であったのでした。“思春期1年生”くらいの小5の男のコにとっては、さすがに目の毒でしたね・・・。「子供がこんなの見ちゃっていいのかなぁ」な~んて、親の目がミョーに気になったことをハッキリ覚えてますから。でも、いつの時代も、子供達はこういう“おゲフィン”なネタが大好きですから、私の周囲でもピンク・レディーのフリを真似する子供がじわじわと増えていったのでした。土居甫センセによるこの画期的な振付けには、さすがにビクターレコードの社内でも「あまりにハレンチだ」という声が上がったそうですが、センセは「信念を持って決めた振付けだから」と、毅然たる態度で突っぱねたそうです。結果は“大吉”と出たわけですから、まさに“土居先生、天晴れ!”ですよね

 阿久センセによる歌詞では、カッコいいというよりもちょっとドジっぽい、ピンク・パンサーのクルーゾー警部を思わせるお巡りさんをキーパーソンに据えるという発想が斬新
ですし、頭サビのAメロ(♪ ペッパー警部 邪魔をしないで~)から、インパクト抜群のメロディと抜群のコーラスワークで先制パンチをお見舞いするという、都倉センセの手練手管のワザも実に巧みです。

 8月25日という遅いデビュー日設定、そして、オリコン初登場99位から次の週で100位以下に転げ落ちながらも、その後じわじわと4位まで這い上がったというエピソードからも、彼女達が“有力新人”として期待されていなかったことは明白ですが
一流どころの作家が知恵とワザを駆使して“攻めの姿勢”でハイレベルの作品を作り上げれば、おのずと良い結果に結びつくという典型的な事例と言えるのではないかと思います。



第3位 渚のシンドバッド 【オススメ度★★★★】
作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一、編曲:都倉俊一
[1977.6.10発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数100.0万枚]


 ベスト3の一角に食いこんだのは、デビュー4作目にして記念すべき初のミリオンセラーとなった「渚のシンドバッド」でした~。わ~、パチパチパチ デビューから「ペッパー警部」、「S・O・S」、「カルメン ‘77」の3作で着実にファン層を固めながらも、レコード売り上げでは連続して60万枚台に足踏み状態だった彼女達が遂に大ブレイク 当時、私は小学校6年生でしたが、それまで歌謡曲の話なんかしたことのない男子生徒の多くが彼女達に夢中になり、女子生徒の間では振付けの真似が大流行するなど、ピンク・レディー黄金時代の幕開けをリアルに肌で感じた作品でした。

 この作品で想い出深いのは、小6の私にとっては歌詞があまりにもセクシーで、聴くたびにドキドキした
ことですねぇ。特に ♪ くちびる盗む早わざは 噂通りだわ~ あたりに来ると、「女の子にそんなとんでもないコトする男が本当にいるのかな・・・? だけど女の子側は嫌がってないみたいだぞ・・・」 なーんて、一人悩んでいたのでした(←わはは、我ながらウブだったのねぇ)。それまでの3作品でも、“お色気”モードのスイッチはONでしたが“まだ暖機運転中”という感じの抑制されたものでした(「カルメン‘77」なんか、♪ お色気ありそで なさそうでっす~ ですから)。それが、この「渚のシンドバッド」で、お色気路線に一気に拍車がかかった感じでしたねぇ。

 曲の方は、構成が(コーラス)-A-B-C(サビ)-A-B-Cでシンプルな8ビートとオーソドックスなもの。もともとクラシックから音楽の世界に入った都倉センセだけあって、この曲もメロディが非常にキレイ&キャッチー、しかも変化に富んでいて、聴き手をまったく飽きさせません
。中でも、Bメロ(♪ くちびる盗む早わざは 噂通りだわ~)で魅せてくれる2人のハモリは絶品です。普段は低音担当で目立たないケイのヴォーカルがグッと立ち上がってきて、これにミーが美しいファルセットで花を添えるところなんか、もうたまりませんよねぇ。



第2位 カメレオン・アーミー 【オススメ度★★★★】
作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一、編曲:都倉俊一
[1978.12.5発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数70.8万枚]


 惜しくも1位こそ逃したものの、堂々の第2位にランクインしたのは、10作目のシングル「カメレオン・アーミー」でした この「カメレオン~」に関しては、第6位に入った「モンスター」、そして「透明人間」と並んで、「ピンク・レディーの低年齢化路線」の一環としてリリースされた作品として扱われて低い評価が与えられる風潮があるのを、実に残念に思います

 上記3作のタイトルを見れば、確かにどれも子供にアピールしそうな題材ですし、せっかく軌道に乗っていた「セクシー路線」をあえて捨て去ったことで、青年層のファンがガッカリしたのは事実でしょう。しかし、丸1年間もセクシー路線でミリオンセラーを連発し続ければ、フツーならば守勢に回るところを、あえて低年齢層にもアピールすべく次の一手を打った阿久悠センセを、いったい誰が責められるでしょうか・・・
 肝心の作品のクオリティが落ちたというならまだしも、阿久-都倉コンビが相変わらず趣向を凝らして、大人の鑑賞にも耐える高レベルな曲をもって世に問うている点は、正当に評価されるべきだと思うんですよね。

 上に挙げた3作は、どれも“スピード感”が身上の作品ばかりですが、中でもこの「カメレオン・アーミー」は、ノリノリ(←死語
の8ビートで身体がもう自然に弾んでくるのが何と言っても最高っ ちなみに曲構成は、割とオーソドックスと言えるA-A’-B-C(サビ)-A-A’-B-Cです。作品全体に漂う“スパゲッティ・ウェスタン”っぽい雰囲気メジャー展開(C→Dm7→F→G7→C)の美味しいアンコが入っている嬉しいBメロ(♪ あなたもここじゃ ちょいと顔だけど~)、強烈なインパクトでこちらまでスカッとした気持ににさせてくれるサビのCメロ(♪ そろそろ来る カメレオン~)・・・と、セールスポイント満載の佳曲だと思うんですけどねぇ。



第1位 ウォンテッド(指名手配) 【オススメ度★★★★★】
作詞:阿久悠、作曲:都倉俊一、編曲:都倉俊一
[1977.9.5発売; オリコン最高位1位; 売り上げ枚数120.1万枚]


 並み居る強力シングルを抑えて、栄えある()第1位に輝いたのは、5作目のシングル「ウォンテッド(指名手配)」でした わー、パチパチパチ ピンク・レディーのシングル群は、阿久&都倉の両センセが絶好調だった時期がバッチリ重なった相乗効果で、奇跡的とも言えるハイレベルな作品が多いのですが、中でもこの「ウォンテッド(指名手配)」は、アイデアとサービス精神がてんこ盛りの素晴らしい作品だと思うのです。

 曲の構成は、ざっくり言ってしまうとA-B-C-D(サビ)-B-C-D。 もういきなり、グランドピアノの響きがドラマティックで印象的なバラード調の歌い出し(Aメロ; ♪ 私の胸の鍵を 壊して逃げていった~)が詞もメロディも最高
ですもんね。先制パンチとして、これ以上望めない出来ですよ、これは。ダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の一節を思わせるハードロック調のリフ(Bメロ)は、小説の構成“起承転結”でいうところの“承”ですかね。Bメロの歌詞(♪ あんちくしょうに逢ったら 今度はただで置かない 私の胸に抱えて くちづけ責めにあわせる~)は高度な逆説的表現で、当時小6だった私は結局理解できなかったなぁ・・・

 さらに、それまでのハードな曲調から一転して、Cメロでコミカルなラップを登場させるワザも、オリジナリティがありすぎて意表を突かれます。阿久センセによると、このラップ部分(♪ ある時謎の運転手 ある時アラブの大富豪~)は、片岡千恵蔵で有名な映画シリーズ「七つの顔」に出てくる名探偵 多羅尾伴内の決めゼリフのパロディなんだそうです。さすがに私の年齢だとピンと来ないのですが、当時、私も含めてクラスメートは大喜びで真似してましたから。元ネタを知らない子供でも、予想外の“ギャップ”で十分楽しめる仕掛けにしてあるのはさすがです。そして満を持して登場するサビは、スラッピングに乗った美しい旋律を2人の優しいハーモニーで悩殺する、感動モノの逸品 いやぁ~、何度聴いても惚れ惚れしちゃいますオオカミのうなり声のようにタメを作ってカマす ♪ Wantedも最高にインパクトがあって、これだけ“具だくさん”で贅沢な作品が、もう売れないはずがありませ~ん



 ・・・さて、独偏ベストテンランキングの結果発表は以上です。皆さんのお気に入り作品と比べていかがでしたか 前回の記事で、「今回の結果は、特定の時期にリリースされた作品ばかりに偏ることなく、いかにも私らしいテイストの順位に収まりました」と書いてしまったので、上位5曲の発表をご覧になった方の中には、「でも、大ヒットした曲ばかりじゃないか・・・」と思った方がおられるかも知れません。でも、これまでに書いた記事からお分かりの通り、私は“超”がつくくらいのヒネクレ人間なので、単にヒットしたからといって上位にあげるなんてことは絶対しません。ですから、今回特に5位以内に入っている作品に関しては、阿久(作詞)-都倉(作編曲)-土井甫(振付け)という“神”メンツのプロ仕事に、私が心から驚嘆し、白旗を挙げた・・・という意味に解釈して戴ければと思います。

 今回のベストテン(+1)では、「DO YOUR BEST」、「世界英雄史」、「Last Pretender」というピンク・レディー低迷期の作品を選んだせいで、それらより遙かに大ヒットした「カルメン ‘77」(66.3万枚)や「透明人間」(88.6万枚)、「ジパング」(26.9万枚)、「ピンク・タイフーン」(29.8万枚)、「波乗りパイレーツ」(24.2万枚)あたりがランクインできませんでした。こんな私のセレクトは一般的な日本人の嗜好を代表するものとはとても言えませんが、かといってピンク・レディーのコアなファンというわけでもない(コアファンの間ではアメリカ進出以降にリリースされた「KISS IN THE DARK」、「マンデー・モナリザ・クラブ」、「うたかた」あたりが上位人気にくるらしいです)。結局、私のように“歌謡曲を広く浅く(←ときどきドツボにハマってますが・・・)”聴きまくる人間にありがちな、“妙に中途半端なランキング
に落ち着いたってことかも知れません。いやはや実に私らしい。ま、でも私は楽しかったからいいか

 それでは、毎度のことながらここまで長い記事にお付き合い下さった皆さん、本当にどうもありがとうございましたm(_ _ )m。次回の記事は 【独偏ベストテン Vol.43-3】 ピンク・レディーのシングル作品 (資料編) と題して、基礎データ資料を紹介しますので、引き続きお付き合い下さいね~
。おしまいに、今回の結果を上位から順にまとめてご紹介しておきます。それでは、またお逢いしましょう~


 【wishy-washyの独偏ベストテン ピンク・レディーのシングル(A面)】
第1位 ウォンテッド(指名手配) 【オススメ度★★★★★】
第2位 カメレオン・アーミー 【オススメ度★★★★】
第3位 渚のシンドバッド 【オススメ度★★★★】

第4位 ペッパー警部 【オススメ度★★★★】
第5位 UFO 【オススメ度★★★★】
第6位 モンスター 【オススメ度★★★★】
第7位 S・O・S 【オススメ度★★★★】
第8位 世界英雄史 【オススメ度★★★】
第9位 サウスポー 【オススメ度★★★】
第10位 DO YOUR BEST 【オススメ度★★★】
次点 Last Pretender 【オススメ度★★】