【お薦めシングルレビュー 40】 あの中堅タレントが短いアイドル時代に放った超ポップな逸品! | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 唐突でナンなのですが、いまや中堅タレントとなった松本明子のパブリックイメージを端的に表すフレーズと言えば、やはり「バラドル」、そして、「進め!電波少年」ということになるんでしょうか。そんな彼女にも、短い短い“アイドル時代”がありました


 新人のデビューという観点からすると「不作」とされている1983年に、歌手としてのスタートを切った彼女は、その翌年、「放送禁止4文字語絶叫事件を起こしてしまい、4~5年ほど芸能界から“干された”状態に・・・。その後、ほとんど奇跡的に“地獄”から這い上がり、「バラドル」として人気者になったことは、皆さんご存知の通りです

 んで、1983年から84年にかけて、彼女がリリースした3枚のシングルが、どれもポップスとして非常に秀逸な出来なんですよね(残念ながら、全く売れませんでしたが・・・
)。今回は、そのうち最もポップで彼女のイメージにピッタリな佳曲をご紹介したいと思います。この作品で~す()。 


「キャラメル・ラブ」(松本明子)
作詞:森雪之丞、作曲:後藤次利、編曲:後藤次利
[1983.9.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★★★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★★]



 ちなみに、松本明子がアイドル時代にリリースした3枚のシングルとは、次の通りです
「♂×♀×Kiss(オス・メス・キス)」(1983.5.21発売)(作詞:森雪之丞、作曲:後藤次利、編曲:後藤次利)
「キャラメル・ラブ」(1983.9.21発売)(作詞:森雪之丞、作曲:後藤次利、編曲:後藤次利)
「夏色のギャルソン」(1984.6.10発売)(作詞:竜真知子、作曲:国安わたる、編曲:山田直毅)

 デビュー曲のタイトルは、彼女のハジけたキャラクターを生かして新しいコンセプトのアイドルを生み出そう
と、レコード会社側が、作詞の森雪之丞センセと結託して“インパクト狙い”のタイトルを付けた感がアリアリですが、リアルタイムではほとんど話題になることもなく、オリコン最高位も131位と大惨敗の結果に終わっています。パンチの効いたマイナー調のスルメソングだったんですが、さすがに「オス・メス・キス」なんつーぶっ飛んだ世界に付いていける輩はほとんどいなかったようで・・・

 シングル第2弾となる「キャラメル・ラブ」は、デビューと同じく、森-後藤コンビによる作品で、彼女のファニーな面はそのままに、よりポップで親しみやすい味付けに仕上がっています
(こちらはオリコン200位に入らず)。まずは歌詞から見てみましょう


  ♪ 恋愛経験豊かだけれど ハニャ
    それがみんな片想いじゃ ハートもゆがむわ
    ところがなっなんと 夢見る彼に ハニャ
    なぜかデート誘われたの 土曜の原宿
    二人落葉のカフェで 微笑んだとき
    突然彼が 「大好きだ」と私に言った

  ♪ ちょっとだけ待って 待って 悪い夢だわ
    覚めればきっと パジャマの私よ
    ちょっとだけキュッキュッ キュッキュッ 彼のほっぺた
    つねれば彼が 本気で怒るの
    夢じゃないのね 機嫌直して
    キャラメルキャラメル カラフルFallin’Love

  ♪ 鏡に向かってセクシーポーズ ハニャ
    彼が見たら悪魔になり 抱きしめられそう
    映画を見ながら ワクワクしてた ハニャ
    愛に染まる嵐の夜 それは今夜かも
    月の光にせまる 彼のくちびる
    瞳開けたら真面目な顔 吹き出しちゃった

  ♪ ちょっとだけ内緒 内緒 教えてあげる
    なめれば私 とろけるキャラメル
    ちょっとだけしょっぱい しょっぱい 味がするのは
    昨日流した 涙のせいなの
    夢じゃないのね よそ見しないで
    キャラメルキャラメル カラフルFallin’Love


 一番に目に付くのは、やはりAメロに登場する♪ ハニャ ですかねぇ
。我が国のこれまでの歌謡シーンにおいては、何百人、いや、何千人もの女性アイドルがおそらく歌手デビューしているはずですが、これほど意味不明&脱力度120%のフレーズをカマしたコは後にも先にもいないでしょう。この ♪ ハニャ は、彼女が当時アシスタントを務めていた深夜ラジオ番組「鶴光のオールナイト・ニッポン」でも、かなりしつこく突っ込まれて完全に「色モノ」扱いされてましたが、当の彼女は意外と嬉しそうだったことを考えると、後に「バラドル」として開花する素養がすでに十分に備わっていたってことなんでしょうね(足りなかったのは「アイドル性」だけ・・・)。

 それ以外の歌詞でも、♪ ところがなっなんと といういかにも彼女の口から出てきそうなフレーズ
ほっぺたをつねるのに何で自分のじゃなくて彼のなんだよ~というツッコミどころ(←これは森雪之丞センセ、ワザとですね…)、さらには2番の歌詞でエッチな妄想に突入する展開など、ほとんど森雪之丞センセのやりたい放題といった感じですが、彼女ががっぷり四つに組んで可愛らしく歌いこなしているのが何とも素敵です森雪之丞センセも、頑張った甲斐があったというものでしょう。素直で伸びのある彼女のヴォイスも上々で、さすがに「スター誕生」の決戦大会で本田美奈子徳永英明との直接対決に勝って一人だけ合格しただけのことはありますよね

 後藤次利センセによる曲の方も、A-A’-B-C(サビ)の構成による正統派アイドル・ポップスに仕上がってます
ずっとメジャーコードで突っ走って、サビのラス前に一瞬マイナーコードを挟んでホロッとさせたと思ったら、サッとメジャーコードに戻って幕を引くところなんかは、なかなか心憎い仕掛けと言えましょう。同センセによるアレンジの方も、おちゃらけた効果音が満載&お囃し隊も賑やかで、聴き手をまったく飽きさせない秀逸の出来映えではないでしょうか・・・

 それでは、今回はこんなところで またお逢いしましょう~