【独偏ベストテン 14-1】 井上ヨシマサ 作曲シングル (6~10位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

歌謡曲(J-POP)のススメ

音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 今回は久々に、コンポーザー別のシングルベスト10ということでいってみましょう。俎上に乗ってくれるのは、私と同年代の井上ヨシマサくんです。若い世代の人達にとっては、「AKB48のシングルを沢山手掛けている人」と言った方が通りがいいかも知れませんね。また、最近は、幼児向け番組の音楽も手掛けてたりします(ウチの息子たちがファンだったんすよ)。けれど、コンポーザーとしての彼を紹介する場合には、80年代中盤から90年代にかけて、メジャーからマイナーまで幅広いアイドル歌手(主に女性)に大量のシングル曲を提供した職業作曲家というのがまずは妥当かと思います。

 時を遡ること1980年。
 コスミック・インベンション」という中学生のテクノバンドが、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)の武道館コンサートで前座をやったことが話題になりました。当時中学3年生だった私にとっても、「自分たちと同じ中学生が、大人の世界でものすごいことをやっている!」ってことで、この話は非常に刺激的でしたね。何しろYMOと言えば、時代の最先端を行っていて、誰もが憧れたカリスマ的存在でしたから・・・。ただ、その当時は、このバンドに所属していた井上ヨシマサが後に職業作曲家として超売れっ子になるなんてことは、おそらく誰も想像していなかったんじゃないでしょうか

 さて、井上ヨシマサの作風に関して少し触れておきましょう。以前の記事にも書きましたが、歌謡ポップスのコンポーザーには大きく2種類あって、歌い手の特性やイメージに合わせて柔軟自在にメロディを紡ぐタイプ(例:筒美京平三木たかしなど。職業作曲家に多い)と、いわゆる「俺節」で歌い手を染め上げるタイプ(例:吉田拓郎小森田実小林武史など。ミュージシャンに多い)に分かれます。井上ヨシマサは前者のタイプで、基本的にメロディアスで洗練された作風。中でも、「ノスタルジック」な曲調や「メルヘンチック」な曲調を得意としていて、私が気に入る作品もその路線上にあるものが多いです。

 ・・・と、いつもの悪いクセでまた長くなってきたので、とっとと独断と偏見のベストテンの発表いってみましょう。で、今回は、今までとちょっとやり方を変えて、これまで
1位から10位まで昇順に並べて淡々と発表してたのを降順にしようと思います(他の皆さんのブログを拝見してたら、読む立場からは10位から発表した方が楽しめるみたいなので)。あと、(小室哲哉の時もそうしたのですが、)今回も1歌手1作品のみのランキングという条件付きにしてあります。この点もご了解の程を・・・。

 それでは発表です。まずは「惜しくもベスト10入りならず」の次点から6位まで一気に行きましょう。


次点 淋しさならひとつ (松本伊代)【オススメ度★★★】
作詞:売野雅勇、作曲:井上ヨシマサ、編曲:武部聡志
[1988.9.7発売; オリコン最高位23位; 売り上げ枚数1.7万枚]


 松本伊代の23枚目のシングル。1981年のビュー以来、キャピキャピ路線の作品が主だった彼女ですが、新たな魅力を模索すべくチャレンジしたバラード「時に愛は」(1983年、9枚目のシングル)が、世間に受け入れられたのはやはり大きかったです。86~87年にかけて発売した「さよなら」をテーマとしたシングル三部作も、大ヒットにこそなりませんでしたが、バラードをしっとりと聞かせる路線で高い評価を得ました

 「淋しさならひとつ」は、
上記の「シングル3部作」の延長線上にあるバラード好きな男の子と(女の)親友との間で、愛情と友情のジレンマに揺れる女性の心情を描いた詞が、ノスタルジックなメロディと綺麗に調和して聴かせる佳曲です。



第10位 Mellow (中山美穂)【オススメ度★★★】

作詞:一咲、作曲:井上ヨシマサ、編曲:ATOM
[1992.4.1発売; オリコン最高位3位; 売り上げ枚数16.9万枚]


 中山美穂の24枚目のシングル。
作詞の「一咲」というのは、中山美穂のペンネームです。バラード「遠い街のどこかで・・・」、「幸せになるために」、「ただ泣きたくなるの」などの大ヒットした名作群に挟まれて、今ひとつ地味なイメージの「Mellow」ですが、オリジナリティに溢れていて、ちょっとした「気取り」がとっても心憎い作品なので、私はけっこう高く評価しています。井上ヨシマサの都会的なサウンドが、いま聴いてもまったく古さを感じさせないのは驚きですね・・・。



第9位 愛しあおうよ(辺見えみり)【オススメ度★★★】
作詞:浅田有理、作曲:井上ヨシマサ、編曲:井上ヨシマサ
[1995.12.21発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]


 辺見えみりの6曲目のシングル。彼女は1990年代に10枚ほどシングルを出しています。しかし売り上げ的には、オリコンの100位以内に入ったのがスピッツのカバー曲「流れ星」1曲のみ!という寂しい状況でした。・・・でもね、彼女、歌に味があってなかなか上手でしたよだから個人的に彼女には、この「愛しあおうよ」みたいな出来のいいオリジナル作品をもっと歌って欲しかったなぁ・・・(ま、要するに、「彼女に提供されたオリジナル曲の多くがパッとしなかった」と暗に言っているわけですが)。

 この曲は、井上ヨシマサお得意のノスタルジックな香りがほんのりと漂うメロディももちろんイイのですが、特にのあたりの歌詞がなかなか説得力があって結構気に入ってるんです。

 ♪ もどかしくて 切なくなって キュンとくる感じは
   きっと永遠になくせないよね だから
   振り向かないで 逃げ出さないで うんと誇らしげに
   心強くして泣けるくらい 愛し合おうよ




第8位 UBU (伊藤美紀)【オススメ度★★★】
作詞:栃内淳、作曲:井上ヨシマサ、編曲:船山基紀
[1987.10.21発売; オリコン最高位16位; 売り上げ枚数2.5万枚]


 伊藤美紀は、1987年にデビューした「正統派アイドルど真ん中」といった表現が相応しい可愛らしい女の子でした デビュー曲「小娘ハートブレイク」から4曲目の「誘惑88」まで一貫してマイナー調の似たような作品(実はすべて作曲は井上ヨシマサ)が続きましたが、メロディラインとしては3曲目の「UBU」の出来が一番良いように私は思います。ただこれらの4作品とも、栃内淳によるあまりに扇情的な歌詞は「デビューしたてのアイドルに歌わせるにはいくら何でも度が過ぎる」感じが拭えませんでした。素材は良かっただけに、もう少し別の売り方はなかったんだろうか・・・と思わずにはいられない不幸なケースでしたねぇ




第7位 まぶしい瞳 (吉田朋代)【オススメ度★★★★】

作詞:及川眠子、作曲:井上ヨシマサ、編曲:ATOM
[1994.2.18発売; オリコン最高位69位; 売り上げ枚数1.3万枚]

 この作品は、4/8に書いた記事「
【独偏ベストテン Vol.4-1】 元気が出てくるJ-POP 女性ソロ・シングル編(1~5位)」でも、第4位にランクインということで取り上げました。(そこでも書きましたが、)♪ Maybe 心のドアをノックして 鮮やかな未来がほらやってくるよ というサビの部分がとてもキャッチーな作品です。シャンプーのCMでも頻繁に流れたので、耳にしたことがある人もきっと多いはずですね。

 吉田朋代といえばアイドルというよりもガールポップの世界の人ですが、曲が「ガールポップのお手本」のレベルに達していて、しかも「頭サビがCMソングにピッタリ」な出色の出来にきっちり仕上がっているのが、井上ヨシマサの非凡なところ。こんな風に小回りが利くところが、井上くんが「職業作曲家」として優れているなぁと私が感じる所以なのです。



第6位 プライベートはデンジャラス(我妻佳代)【オススメ度★★★★】
作詞:谷穂ちろる、作曲:井上ヨシマサ、編曲:武部聡志
[1987.11.21発売; オリコン最高位9位; 売り上げ枚数4.3万枚]


 言わずと知れた(?)おニャン子クラブ会員番号48番です。彼女、1985年の「第10回ホリプロタレントスカウトキャラバン」のときに、最終候補者4名の中に残ったんですが(残り3人は、山瀬まみ(真巳子)、中村由真、白石(鳥山)さおり)、このとき「学生審査員(←なんじゃそりゃ)」として会場にいた私は、彼女じゃなくて山瀬まみに一票投じたんですよね。で、結果はやばせばびの優勝!・・・その節はどうもすいませんでしたねぇ(←いまさら誰に謝ってるのか

 まぁ、そんなこたぁどうでもいい話ですね。・・・で、この曲なんですが、彼女のイメージピッタリの実に可愛らしい曲に仕上がっていて、アイドルのデビュー曲としてかなり秀逸な出来だと思います(彼女のファンが狂喜乱舞する様子が目に浮かぶようですね)。ただし、このあとどんな作品を持ってきても見劣りしてしまいそうという不安はありますけど・・・。でも、もともとおニャン子クラブという「システム」自体が「打ち上げ花火」のようなもんだったので、そんなこといちいち気にしちゃいなかったんじゃないかという説がもっぱらです(←いま私が決めました(爆))。



 さて、今回はここまでとします。次回は1~5位を発表しますので少々お待ち下さいね。どんな曲が上位に来るか、次回の記事upまでに予想してみるってのもまた一興かもしれませんよ。 それでは、また~!