【独偏ベストテン 13-1】 南野陽子のシングル作品 (1-10位) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 5/9に芳本美代子のレビューでも書いた通り、1985年というのは、「花の82年組」と並んで新人アイドルが豊作だった年です。85年頃というのは、日本のバブル景気が徐々に盛り上がってきた頃に当たっていて、ルックスや歌唱力の面から見て、ちょっと前だったらとても出てこられなかっただろうなぁ・・・と思われる面々が次々とデビュー。おニャン子クラブ」という”システム”が85年に出現したことはまさに象徴的な出来事で、言葉は悪いけれどやや「粗製濫造」気味の年だったと思います。 

 今回は、その85年デビュー組にして、「おまんら、ゆるさんぜよ!」のセリフで一世を風靡したナンノこと
南野陽子のシングルの「独断と偏見によるベストテン」をご紹介します

 ナンノの場合、ご存じの通り歌唱力はイマイチですが
シングルを眺めると楽曲的にはまずまず恵まれていたように思います。デビュー当初はB級アイドルだった彼女が2代目「麻宮サキ」としてモノになりそうだと分かった途端に、レコード会社(CBSソニー)が慌てて金と力を注ぎ始めたさまは、端から見ていてちょっと滑稽なものがありましたが・・・

 では、さっそく独偏ベスト10の発表いってみましょう! 実はですねぇ、今回はいつも以上に「世間的な売り上げ」とは異なる結果になってしまいました。ヒットしたはずのあの曲もこの曲もランキングに入ってません。だから、熱烈なナンノファンの中にはご不満の方も多いんじゃないかな~と思います
。ま、でも、あくまで私の独偏ベストテンってことなので、ご容赦下さいね~。その代わりと言ってはなんですが、全曲にコメントを付けてみましたよ

1.フィルムの向こう側 (1989.11.29発売)【オススメ度★★★★】
2.へんなの!! (1990.7.1発売)【オススメ度★★★★】
3.秋のIndication (1987.9.23発売)【オススメ度★★★★】
4.風のマドリガル (1986.7.21発売)【オススメ度★★★】
5.吐息でネット (1988.2.26発売)【オススメ度★★★】
6.恥ずかしすぎて (1985.6.23発売)【オススメ度★★】
7.Kissしてロンリネス (1991.11.21発売)【オススメ度★★】
8.秋からも、そばにいて (1988.10.8発売)【オススメ度★★】
9.トラブル・メイカー (1989.6.21発売)【オススメ度★】
10.夏のおバカさん (1991.6.8発売)【オススメ度★】

 1位の「フィルムの向こう側」は、ナンノ16作目の作品。
セールス的にはあまりパッとしなかった(12.3万枚)けれど、飛鳥涼の作詞作曲によるミディアムテンポの名曲です。何だかどこかで聴いた曲がベースになってるなーと思ったら、「パッヘルベルのカノン」だったりするのでした。クラシックのエッセンスを歌謡曲に上手に取り込んだこの手の作品、私の大好物なんですよねぇ


 2位の「へんなの!!」は、18作目のシングル。これは最初に聴いたときに誰が歌っているのか分からず、リアルタイムで驚かされた作品です。ま、要するに、地声(?)でわざと「露悪的」に歌っているんですが、この時期はまだ彼女の人気もそこそこあったので、出す側からすると「冒険」だったはず。事実、彼女のファンの間ではちょっとした物議を醸したようで、ブレイク後初めてオリコンベスト10入りを逃してしまうことになります。

 でも私はね、この作品から、デビュー時から彼女について回った「お嬢さん」然とした固定イメージから彼女自身が脱却したいという強烈なメッセージを感じました。「私はお人形さんじゃないし、自己主張だってちゃんとするのよ!」・・・みたいな(笑)。だから、私の彼女に対する好感度はこの作品でかなりアップ。人によっては「ふざけた作品」「失敗作」と見る向きもありますけど、サビのメロディは変化に富んでいて美しいですし、歌詞のコンセプトもなかなか個性があって面白くて、いろいろと計算された末に出来上がった意欲作だったと私は今でも思っています。



 3位の「秋の Indication」は、
1位と同じくクラシック(バロック)を下敷きに、パイプオルガン、ハープシコード、オーボエを効果的に使った名曲です。作品の奥行きと完成度の点から言うと、オススメ度は1、2位よりもちょっぴり上かなぁ。曲の流れに変化の多い作品で、最後まで飽きさせない作りになっていますね。 



 4位の「風のマドリガル」は、
要するに「さらばシベリア鉄道」のパクリですが、長短のコード変化が私好みなので上位にランクイン(爆)。

 5位の「吐息でネット」は、ナンノ最大のヒット曲(30.4万枚)ですが、同時に、
元ジューシィ・フルーツのギタリストだった柴矢俊彦の、作曲家としての(事実上の)出世作と言ってもいい作品。キャッチーなサビが心憎い、正統派アイドルポップスの王道を行く曲です。 

 6位の「恥ずかしすぎて」は、都倉俊一の手による南野陽子のデビュー作。これは売れなかったですねー(オリコン最高位57位、売り上げ枚数2.3万枚)。 さすがに都倉センセだけのことはあって、聴けば聴くほど味がある作品だとは思うんですが、85年に出すにはいかんせん曲調が古臭すぎました彼女の2曲目以降とこの曲とでは、イメージから世界観からすべて別物と考えた方がいいですね。 

 7位の「Kissしてロンリネス」は、織田哲郎作曲による、後に大黒摩季が展開する音を彷彿させるポップス。もっともこの曲では、織田センセの魅力的かつ独特なメロディーラインは結局最後まで炸裂しないので、織田センセファンとしてはやや物足りない感じが拭えませんが。 

 8位の「秋からも、そばにいて」は、名曲「秋のIndication」から一年後に、グリコのチョコレートCMソングとして出された作品。どうしても「秋の・・・」の”二番煎じ”の印象は拭えず、実際に曲自体も劣化しているんですが、「秋」という季節はナンノのイメージにピタっとはまっていて良かったですね。

 9位の「トラブル・メイカー」を出した時期は、
人気のピークをやや過ぎたあたりで、マスコミから「わがまま」とかいろいろ言われた頃に当たります。そこで、自ら作詞して付けたタイトルが「トラブル・メイカー」。これは恐らく「自虐的に」付けたタイトルじゃないですかねー。もしそうだとしたら彼女、やっぱりタダモンじゃありません

 10位の「夏のおバカさん」は、南野陽子自身が作曲したラストシングル。軽快なポップスでサビも軽めで、いわゆる「職業作曲家」の手による作品と比べると物足りない感はありますが、まあ自分でこれだけやれれば御の字でしょう。作詞をやるアイドルは沢山いますが、作曲をやるアイドルなんてほとんど皆無ですから

 ・・・ってなわけで、いつも以上に長い記事になってしまいました ここまでお付き合い下さった皆さんお疲れさま。それではまた~!